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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第21話

 
前書き
毎日と言っておきながら、全然できない作者を許してやってください。 

 
美琴は思わぬ人物がこの研究所にいる事に驚きを隠せない。
麻生はそんな美琴を気にせず会話を続ける。

「お前の趣味はこんな施設を破壊する事なのか?」

いつもの美琴ならすぐにツッコミを返しているのだが今はそんな事をする余裕がない。

「あ、あんた、どうして此処に・・・」

「この近くを散歩していてお前を見かけたから後をつけただけだ。」

適当に嘘をつきながら答える。
美琴は視界の端でモニターがある戦闘を映していた。
いや、映っているのは戦闘ではなく一方的な虐殺だった。
それは一方通行(アクセラレータ)と「妹達(シスターズ)」の一人が映っていた。
右肩を押えながら必死に逃げてゆく「妹達(シスターズ)」の一人。
反撃かそれとも目眩ましなのか「妹達(シスターズ)」の一人は電撃の槍を一方通行(アクセラレータ)に向けて放つが、それも反射され放った電撃は自分の胸を貫いた。
一方通行(アクセラレータ)は「妹達(シスターズ)」の一人の血を流している右肩に指を入れる。
美琴はその光景を見て、ゆっくりとモニターに近づいて左手をモニターに伸ばす。

「やだ・・・や・・・やめ・・・」

次の瞬間、「妹達(シスターズ)」の一人の身体中から血液が噴き出した。
おそらく、血液のベクトルを逆向きにしたのだろうと麻生は考える。

「驚いたでしょ?あの子ね、私のクローンなの。」

美琴は独り言のように呟く。
まるで自分の過去の過ちを懺悔するかのように。

「私が幼い頃自分のDNAマップを提供したの。
 その時は筋ジストロフィーの病気とか治す為に必要とか言われてね。
 私はこの力が誰かを救えると思ったけど本当はそうじゃなかったの。
 本当の目的は超電磁砲(レールガン)という超能力者(レベル5)を大量生産するつもりだったの。
 でも、生まれた私のクローン・・通称「妹達(シスターズ)」は私の実力の1%も満たない。
 だから計画は永久凍結したはずなの。
 でも・・・・」

絶対能力進化(レベル6シフト)という計画ができ、それであの「妹達(シスターズ)」が利用された。」

麻生の口から実験の名称が出てきたことに美琴は言葉を失う。

「なんで知ってんのよ。」

「実は俺もその実験が行われている所を見てな。
 気になって調べてみたんだ。」

それを聞いて美琴は驚いていたが、すぐに笑みを浮かべる。

「はは、知ってたんだ。
 それなら分かるでしょ?
 私がどれだけ酷い事を事をしたのか。」

あの「妹達(シスターズ)」は誰一人として美琴を攻めなかった。
自分がDNAマップを提供しなければ生まれる事もなく、殺される予定で生み出される事もなかった。
美琴と一人ではどうする事も出来ない。

「ふぅ~ん、それで?」

「え・・・・」

「それでお前は俺に何を求めているんだ?
 俺に責められてほしいのか?
 それとも助けてやる、とでも言えばいいのか?
 お前は俺を正義の味方か何かと間違っていないか?」

そう言って麻生は振り返り歩いていく。
美琴は心のどこかで麻生なら助けてくれると思っていた。
なんだかんだ言いつつも虚空爆破(グラビトン)事件、幻想御手(レベルアッパー)の事件の時は助けてくれた。
だから一方通行(アクセラレータ)に勝てなくても、一緒に実験を止めるのを手伝ってくれると思っていた。
だが、麻生の答えは美琴が思っていたのと全くの別だった。

「まって・・・・」

美琴は麻生を引き留める。
だが、麻生の足は止まらない。

「待ってよ・・・・お願いだから、私を・・・・あの子達を助けてあげて・・・・」

美琴の願いに麻生は答えない。
美琴はそのまま膝が崩れ落ちてしまい、麻生は一度も振り返る事なく施設から出て行った。







麻生がどこかへ行ってから美琴はとある鉄橋の上に立っていた。

「どうしてこんな事になっちゃったのかな。」

美琴はあの研究者の言葉を信じていた。
自分のDNAマップがあれば様々な病気を抱えている病人を助ける事が出来ると。
だがその願いが結果として二万人もの「妹達(シスターズ)」もの人間を殺す事になった。

「私にできる、これ以上一人も犠牲者を出さない手段。
 でも、それでも止まらなかったらもう・・・」

あの時、幻想御手(レベルアッパー)の事件の犯人である木山は別れ際に言った言葉を思い出す。

「君も私と同じ限りなく絶望に近い運命を背負っているという事だ。」

その言葉の意味がようやく分かった。
美琴はうつむきながら呟いた。

「たすけてよ・・・・」

誰にも届かない叫びが美琴の口からこぼれていく
その時、ミャーという鳴き声を聞いて足元に優しいぬくもりを感じさせる黒い毛皮の子猫が座っていた。
一体どこから来たネコなのだろう?と思った時だった。
カツという足音が聞こえた、美琴は顔を上げる

「何やってんだよ、おまえ。」

美琴の叫びを聞いて駆け付けた主人公(ヒーロー)のように上条当麻がやってきた。









麻生は宇宙開発エリアから自分の寮に戻ってきていた。
そしてベットに寝転がり睡眠をとろうとした。
だが・・・・

(私を・・・・あの子達を助けてあげて・・・・)

その言葉が麻生の頭から離れなかった。
美琴は助けてと麻生に言った。
だが麻生はその救いに手を差し伸べなかった。
これが本当の自分なのだから、と自分に言い聞かせた。
なのに、麻生は自分でも驚くほどにいらついていた。

(その生き方でいいのか?)

今度はあの猫の声が麻生の頭に響く。

(俺はあいつの様になりたかった。)

目を閉じて思い出す。
過去の自分と上条当麻を。

(俺はあいつになれない。
 当たり前だ。
 俺は俺だ。
 上条当麻のようになれる訳がない。)

麻生は立ち上がり携帯電話を電話帳を開けて電話をする。
数コールの後その人物が電話に出る。

「麻生さん、こんばんわ。」

その相手は初春飾利だ。

「麻生さんから電話を掛けてくるなんて珍しいですね。」

「夜分にすまないな。
 実は調べてほしい事があるんだ。」

絶対能力進化(レベル6シフト)のコードを初春に教えそのデータを送ってもらう。

「わざわざすまないな。」

「いえ・・・・」

「どうした?」

突然初春が黙ったので麻生は気になった。

「その麻生さん、少し変わったな~と思いまして。」

初春の予想外の返事に、麻生は唖然とする。

「前はこう、孤独感と言うかなんかそんな感じの声だったんですけど、今の麻生さんなんかすっきりしているって言うかなんていうか・・・・・」

「俺は俺だ、どこも変わってないよ。」

麻生はそう言って電話を切った。
初春から送られてきたデータを確認する。
次の実験の開始時刻は八時三〇分。
場所はとある列車の操車場だ。
今の時刻はちょうど八時三〇分。
場所をGPSで確認すると麻生はいつもの服でその場所に向かう。

(もし死んでても俺は知らないからな。)

そう思いつつも麻生の足は歩きではなく走っていた。







上条は実験を止める為に一方通行(アクセラレータ)と戦っていた。
この実験は一方通行(アクセラレータ)は最強である事を想定して計画された。
だがもし一方通行(アクセラレータ)がものすごく弱かったら?
学園都市で最弱と呼ばれている無能力者(レベル0)に負けてしまったら計画は中止になるだろう。
そして今、上条は一方通行(アクセラレータ)相手に押していた。
最初は一方通行(アクセラレータ)のベクトル操作に苦戦していた。
上条は気づいたのだ。
一方通行(アクセラレータ)は本当に弱いことを。
一方通行(アクセラレータ)は全ての相手に負けた事がなかった。
それもどんな攻撃も反射して全ての敵を一撃で倒してきた、一方通行(アクセラレータ)はケンカの方法なぞ知っている訳がなかった。
普通の相手なら一方通行(アクセラレータ)の敵ではない。
だが、上条の右手、幻想殺し(イマジンブレイカー)は超能力・魔術問わず、あらゆる異能の力を打ち消す。
一方通行(アクセラレータ)のベクトル操作も例外ではない。

「面白ェ、何なンだよその右手は!」

小刻みな右の拳を何度も顔面に浴びた一方通行(アクセラレータ)は、がむしゃらに手を伸ばしながら叫ぶ。
それもたやすくかわされ、上条は右の拳を作り一方通行(アクセラレータ)の顔面へと突き刺さる。
今まであらゆる攻撃を反射してきた一方通行(アクセラレータ)には、目の前の攻撃が「危ない」と分かっていてもそれを「避けよう」という動きに結びつかない。
ただがむしゃらに両手を振って追いかけるその姿は、大人に軽くあしらわれている小さな子供にしか見えない。
その事実は一方通行(アクセラレータ)が一番分かっているからこそ耐えられない。
学園都市最強のプライドがギシギシと音をたて崩れていく。

「クソ、クソォ!クソォオオオオオオ!!!」

一方通行(アクセラレータ)は足元の運動エネルギーを最適化させ一気に接近する。
だが・・・・

「何だ、ちくしょう。
 何だってオマエにはただの一発も当たンねェンだよ、ちくしょう!!」

速度を得た所で狙いが先読みできれば簡単に避ける事が出来る。
勝負は決していた。
上条が小刻みに与えたダメージは今まさに蓄積していた、うたれ弱い学園都市最強の能力者の足を殺しつつある。
かくん、と一方通行(アクセラレータ)のヒザから力が抜けた瞬間、ゴッ!!それまでにない上条の「本気」の拳が顔面に突き刺さる。

「「妹達(シスターズ)」だってさ、精一杯生きてきたんだぞ。
 全力を振り絞って必死に生きて、精一杯努力してきた人間が・・・何だって、テメェみてぇな人間の食い物にされなくっちゃなんねぇんだよ!!!」

上条の言葉を聞いて一方通行(アクセラレータ)は思う。

(生きてる?何言ってだンだ?)

この時、無風状態だったこの列車の操車場に風が吹いた。

(アイツラは人形だろ?
 そう言ってたじゃねェか。
 力がいる・・・コイツを黙らせる力。)

一方通行(アクセラレータ)はその風を感じ取るとかのように左手を上げる。

(いや、理もルールも全てを支配する・・・・絶対的な力がッ!!!)

その瞬間、轟!!と音を立てて巨大な大気の渦が一方通行(アクセラレータ)の中心に、直径数十メートルに及ぶ巨大な破壊の渦が歓喜の産声を上げた。

「くかきけこかかきくけききこかきくここくけけけこきくかくきくこくくけくかきくここけくきくきこきかかッ!!!!!!!」

その暴風に上条は糸も簡単に飛ばされ折れた風力発電のプロペラの支柱に勢いよく、ゴン!!!と音を立てぶつかりそのまま地面にうつ伏せに倒れ動かない。
その様子を見ていた、美琴は信じられないような表情をしていた。

「空気、風、大気、あンじゃねェか目の前のクソをブチ殺すタマがここに。
 この手で大気に流れる風の「向き」を掴み取れば、世界中に流れる風の動き全てを手中に収める事ができれば世界を滅ぼす事だって可能。
 学園都市最強?絶対能力(レベル6)?そンなモンはもォいらねェ!
 一方通行(アクセラレータ)を止められるものなンざこの世のどこにも存在しねェ!!」

自分の開いている左手を月を掴むかのように力強く握りしめる。

「世界はこの手の中にある!!」

ゆっくりと立ち上がると良い事を思いついたのか悪魔のような笑みを浮かべる。

「空気の圧縮、圧縮ねェ、イイぜェ愉快な事を思いついた。
 なンだよそのザマはァ!!立てよ、最弱ッ!!
 オマエにゃまだまだ付き合ってもらわなきゃ割に合わねンだっつの!!」

学園都市の風が一方通行(アクセラレータ)の頭上に集まる。
その時だった。

一方通行(アクセラレータ)!!!」

その後ろで美琴が超電磁砲(レールガン)の構えをとっていた。

「やめろ・・・御坂・・・」

声が聞こえた。
死んでしまったと思った上条の声だった。
美琴はそれを聞いて一安心する。
上条はあの鉄橋で言った。

「何一つ失う事なくみんなで笑って帰るってのが「俺」の夢だ。」

結局、自分のせいで上条の夢は叶いそうにない。
誰もが笑って誰もが望む、最高に幸福な終わり方はないのか?
誰一人欠ける事もなく、何一つ失うものもなく、みんなで笑ってみんなで帰るような、そんな結末はないのか?
そうぼんやりと美琴は考えた。
その考えを振り払うように超電磁砲(レールガン)を構え直そうとした時だった。
一方通行(アクセラレータ)の頭上にある事が起きていた。
高電離気体(プラズマ)が出来ていた。
周囲の空気中の「原子」を「陽イオン」と「電子」へ強引に分解し、高電離気体(プラズマ)へと変貌させてしまう。
美琴が電撃を用いて高電離気体(プラズマ)を元に戻したところで、一方通行(アクセラレータ)はすぐに新しい高電離気体(プラズマ)を作るだろう。
高電離気体(プラズマ)を防ぐには風を操る必要がある。
美琴は電撃を操る事ができても風は操れない。
どうすればいい?と美琴は考えそして思いついた。
だが、これは美琴が実行する事ができない。
なぜならこの戦いに超能力者(レベル5)である美琴が関われば、実験を中止させる事が出来ないかもしれないからだ。
超能力者(レベル5)の美琴が関わっている事が分かれば、研究者達は超能力者(レベル5)のおかげで倒せたのだと判断する。
つまり、一方通行が最弱である事を証明していないのだ。
御坂美琴が関わってならないのなら、これは御坂妹にしかできない仕事だ。
美琴は振り返る。
そこにはうつ伏せに倒れている御坂妹がいた。
美琴は駆けより御坂妹に言った。

「お願い、起きて。
 無理を言っているのは分かっている。
 自分がどれだけひどい事を言っているのかも分かっている。
 だけど、一度でいいから起きて!!
 アンタにやって欲しい事があるの。
 ううん、アンタにしかできない事があるの!」

誰一人欠ける事なく、何も失うものなく、みんな笑って、みんなで帰るためには。

「たった一つでいい、私の願いを聞いて!
 私にはきっと、みんなを守れない。
 どれだけもがいてもどれだけあがいても、絶対に守れない!
 だから、お願いだから!!
 アンタの力でアイツの夢を守ってあげて!」

御坂妹は断続的に途切れる意識の中で確かにお姉様(オリジナル)の叫びを聞いた。
御坂妹は嫌だな、と思ってしまった。
こんなちっぽけな命が失われたくらいで哀しむ人が出てくる事を知ってしまったら、もう死ぬ事などできなかった。
守るべきものを見つけ、そして守る為に御坂妹は四肢に力を込める。

「その言葉の意味は分かりかねますが、何故だか、その言葉はとても響きました、とミサカは率直な感想を述べます。」

御坂妹は美琴の右手を握りしめる。
そしての握りしめた手にもう一つ手が重ねられる。

「俺もその言葉、結構響いたぞ。」

もう一人の主人公(ヒーロー)、麻生恭介がその言葉に応えるかのように駆け付けた。 
 

 
後書き
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