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久遠の神話

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第三話 見てしまったものその十


「言っても誰も信じないけれど」
「そうでしょ。それよ」
「けれどなのね」
「そう。他言はしないことね」
「若し言えばその時は」
「容赦しないわ」
 決まりがあっても。それでもだった。
「その場合に限ってね」
「そうなんだ。じゃあ」
「早く帰りなさい。何もしないわ」
 スフィンクスは二人にこのことは確かに保障した。
「お家にね」
「何か知らないけれどね」
「助かったみたいね」
 上城と樹里はお互いの顔を見て話をした。
「結構話のわかる怪物みたいだし」
「運がよかったかしら」
「ええ、貴方達運はいいわ」
 それはその通りだとだ。スフィンクスは二人にこのことも話した。
「実際におかしな怪物達だとね」
「僕達ここで」
「剣を持っていなくても」
「食べられていたわよ」
 実際にだ。そうだというのだ。
「私達は人間も食べるから」
「スフィンクスってそうだったわね」
 樹里はまたギリシア神話から話をした。
「謎々に答えられなかった人を」
「食べていったわ」
「だから。それで」
「他の怪物も同じよ。やはりね」
 人をだ。餌食にするというのだ。
「剣を持つ者は特にね」
「剣を持つ人間はなんだ」
「まあ。そのうちわかるわ」
 スフィンクスは上城、その彼を見てまた話した。
「そうしたことがね」
「そのうちって」
「まあ。それじゃあ話は終わったから」
 魔物から話を打ち切ってだった。そのうえで。
 スフィンクスは姿を消した。煙の様に。そして後に残ったのは。
 上城と樹里だった。二人は顔を見合わせてだ。
 そのうえでだ。お互いに話すのだった。
「今のって」
「夢じゃないわよね」
「そうだよね。どう考えても」
「ちょっと確めてみる?」
 樹里は首を捻りながらこんなことも言った。
「一回ね」
「確めるっていうと」
「頬っぺた抓り合おう」
 実際にはそうしようというのだ。
「それでわかるわ」
「そうだね。これで夢でなかったら」
「痛いわ」
 それで目が醒めてだ。わかるというのだ。
「だからそうしましょう」
「じゃあ」
「それじゃあ」
 こうしてだった。お互いに頬を指で抓み合ってだ。
 そのうえで抓ってみた。すると。
「痛いよね」
「痛いわ」
 抓ってわかったことだった。お互いにだ。
「というとやっぱり」
「夢じゃないのね」
「ううん、他言は無用って言ってたけれど」
「こんな話誰も信じないわよ」
 まさにそうだった。あまりにも非現実過ぎてだ。
 二人がわかるのはそのことだった。それだけだった。 
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