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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第9話 領地視察と金儲け!?力量不足だ……

 こんにちは。ギルバートです。まさか系統属性を確認しただけで、こんな大事になるとは思いませんでした。折角メイジになったのだから、魔法は思いっきり使ってみたかったです。残念でなりません。

 魔法の件は置いておくとして、高等法院の方に進展がありました。と言っても、私にとっては予想外の事態です。

 折角証拠が集まり始めたのに、ヴァレールがクールーズ家に嫌がらせをしていた馬鹿貴族を名指しで罵倒したのです。私がこの話を聞いた時に真っ先に考えたのは、敵を挑発して更なる暴発を誘導するのが目的と考えていました。

 当然馬鹿貴族達は、ヴァレールに対し無礼だ若造がと騒ぎたてます。しかしここで何を思ったのか、ヴァレールが馬鹿貴族達の嫌がらせや不正の証拠を、王宮に提出したのです。正直に言わせてもらえば、私は冗談抜きでヴァレールがとち狂ったのかと思いました。

 何故なら現状で集まっている証拠では、陛下に裁定をお願いしても敵の頭は取れないからです。何処を如何見ても、トカゲの尻尾切りをされて逃げられるのは明白です。

 しかしヴァレールは、とち狂った訳ではありませんでした。その真の狙いは、尻尾切り後にあったのです。

 何を今更と思うかもしれませんが、クールーズ領はドリュアス領と同じく魔の森拡大阻止の最前線になります。ヴァレールは「クールーズ家の足を引っ張る行為は、魔の森拡大を助長させる事に繋がる」と声高に訴えます。この発言には、さしもの高等法院も反論出来ません。そして嫌がらせをしてる者達を「国土を危険にさらす逆賊である」と、宣言したのです。

 ヴァレールは他の貴族達も巻き込み、徹底的に馬鹿貴族を非難します。そして馬鹿貴族達の上司を、監督不行届きだと断じました。これにより実際責任追及は出来ない物の、王宮での発言力を削ぐ事に成功したのです。更にこの状況は、これからの捜査妨害を封じ証拠を掴まれた者達を庇えない状況も作り出しました。

 このまま行けば、私も芋蔓式に馬鹿貴族を捕まえられると思いました。しかし敵も、この政治と言う土俵で長年戦って来たつわもの達です。形勢不利と見るや否や、なんと尻尾だけでなく頭まで切って来たのです。先手を打って高等法院長が責任を取る形で辞任を発表し、更に上に繋がらない証拠のみ(不味い証拠は全て処分済み)を提出し数人の貴族を切り捨てました。しかし実際には、高等法院長の名前が変わっただけです。

 ヴァレールの目論見は、見事に外されてしまいました。そしてこの騒動により、クールーズ家と高等法院の対立が表面化する事になります。普通に考えれば、クールーズ家が一方的に潰されますが、ヴァリエール公爵を始めとする多くの有力貴族がクールーズ側に付く事により、戦力(発言力)が拮抗し互いの尻尾を掴み合う争いへと移行します。

 やがてこの静かな対立は、クールーズ家と高等法院の対立から、ヴァリエール公爵家を筆頭に魔の森拡大を危惧する者達と、利権と嫉妬にまみれた狡賢い馬鹿貴族達の対立へと変化して行きました。

 前者は相手の尻尾を掴めない。後者は下手に動いて尻尾を出せない。そんな睨み合いが、長々と続く事になったのです。



 今の所ドリュアス家では、何事も無く静かな時が流れています。私とディーネは木刀・木剣から、刃の潰してあるだけの摸擬刀・摸擬剣(ギル製作)を使って、訓練する様になりました。最初は重さの変化に身体が慣れず、かなり不格好で危なっかしかったのですが、今ではちゃんと剣を振れる様になりました。

 アナスタシアも木剣(レイピア型)を母上に持たされ、剣の稽古を始めています。私が木刀を持たせようとしたら、母上に威嚇されました。(怖かったです。避けなきゃ死ぬ威嚇って……)

 魔法の訓練ですが、私が原因で人に見せられなくなってしまったので、屋敷裏にある森の中で行う事になりました。ディーネは母上の魔法訓練ターゲットが、自分から私に移り喜んでいました。

 母上。人間は飛べないのです。そしてメイジは、杖が無ければ浮けないのです。

 だから……だから……杖を叩き落とした上に、そんな高い所まで吹き飛ばさないでぇぇーーーーーー!!

 ……っは、失礼しました。

 取りあえず訓練は順調です。



 それから暫くして母上が「領地の視察に行く」と言うので、私も連れて行ってくれる様にお願いしました。すると母上は、快く了承してくれたのです。以前領地の視察に出たのは、領地環境改善のネタ出しをする為に見て回った赤ん坊の頃です。前回は母上と馬車で移動しましたが、今回は母上のグリフォンに便乗して領内を見て回ります。

 ……始めて乗った騎獣に、めがっさテンションが上がったのは秘密です。

 実際に領地を視察して見て、前回と比べ生活水準が劇的に向上していました。私の提案でここまで変化したなら、やった甲斐があったという物です。

 ただ、気になる事が有りました。女の人が井戸に落ちそうになりながら、水を汲んでいたのです。正直言って、見ていて冷や冷やしました。家に戻ったら、手押しポンプを作ろうと思います。家の財政力なら、全ての井戸に設置しても余裕でしょう。元値は私の《錬金》でタダの為、設置費用のみです。しかも《固定化》を使えば、ずっと使えるのです。かなり美味しいです。

 そして最後に、タルブ村により食事をとりました。タルブ名物ヨシェナヴェを母上と二人で食べたのですが、驚いた事に醤油が使われていたのです。多少違和感が有りますが、間違いありません。私は(どうせ塩や他の調味料で、誤魔化しているんだろう)と思っていたので、これは嬉しい誤算です。

 村の人に声をかけ、調味料について聞きます。そして、醤油を作っている家に案内してもらいました。

 訪ねてみると、かなり慌てられました。まあ、いきなり領主夫人が子供連れて訪ねてくればそりゃ驚きます。取りあえず急いでいないので、相手が落ち着くのをゆっくり待ちます。ほどなくして落ち着いたのか、真っ先に謝られました。母上はそれを、とても良い笑顔で許します。

(母上。相手が慌てふためく姿を見て、喜んでたな……)

 早速開発者に、醤油について聞きます。……ここまで来ればその開発者が誰か予想できた人は居るのではないでしょうか。そう、シエスタの祖父である佐々木 武雄氏です。歳は見た目70歳前後と言ったところでしょうか? 黒髪よりも白髪の方が多くなっていました。

 私は日本の事を話したい衝動に駆られましたが、ここは自重する事にしました。日本に帰る手立てが無い私が、そんな話してもぬか喜びさせてしまうだけでしょうから。それに私が持っている知識の漏洩(ろうえい)につがなりかねません。それは許されない事です。

 彼に製造現場を案内してもらうと、良くも悪くも個人で造っていると言った感じです。小さな掘立小屋に、大人の腰より少し高いくらいの樽が幾つか並んでいるだけでした。しかし意外な事に、ちゃんとした麹があり醤油だけでなく味噌も作っていたのです。

(すばらしい。これは有益です!! 特産になります!!)

 私は手放しで喜んでしまいましたが、世の中そう甘くは無いようです。武雄氏の話によると、問題は塩(特に海水塩)の値段が高く手に入らない事です。その所為で、比較的安価(それでも平民には高い)に手に入る岩塩で代用するしかないと口にしました。岩塩だと塩自体の品質も問題で、どうしても苦味(違和感の正体)が出てしまいます。武雄氏は「以前、偶然海水塩を手に入れる機会に恵まれ、その時作成した醤油と味噌は美味しかった」と懐かしそうに語りました。私達が食べたヨシェナヴェに使われていたのは、岩塩で造った中では一番品質が良い醤油だったそうです。

 正直に言わせてもらえば、かなりショックです。

 塩の事を母上に聞きましたが、トリステイン王国内に塩の鉱脈は希少で、ゲルマニアからの輸入に頼っているのが現状だそうです。万が一塩の鉱脈が見つかれば、王家に召し上げられるのはほぼ確定。海水から作る塩は、コストが高過ぎて目玉が飛び出るほど高いとの事です。

 海さえあれば、マギの知識で安く塩を作れるのですが、残念ながらドリュアス領は海がありません。また、技術提供で余所に作らせるにもリスクが高いです。今は諦めるしかないか……。悔しいです。

 取りあえずマギ商会に、海水塩を手に入れたらタルブ村に持っていくよう命令しておきました。それを受け取った武雄氏は、海水塩で出来た醤油と味噌を送ってくれるようになりました。何気に嬉しいです。

(あっ!! ……零戦とシエスタ見るの忘れてました)



 さて、いよいよ手押しポンプの作成です。材料ですが、アルミニウムを使用したいと思います。

 何故にアルミニウム? と思うかもしれません。

 《錬金》で作れる金属は、術者の価値観とイメージに大きく左右される様です。私の場合は、元素周期表に大きく影響されました。元素周期表の№が若いほど、楽に《錬金》出来るのです。ドットクラスなら、クロムやマンガンまでで鉄は無理でした。後複数元素を含む物(合金等)は、難易度が上がります。また元になる材料に、目標の物質が含有されているほど楽に《錬金》出来ます。アルミニウムなら、ボーキサイトから作るのが一番楽でしょう。まあ、マギの知識にも穴が多いので、他の有益な物を見落とす可能性も高いですが。

 ドットクラスの《錬金》で作れる金属の中で、有力なのが№13・アルミニウムと№22・チタンでした。性能面ではチタンなのですが、同じ泥から作るならアルミニウムの方が楽に《錬金》出来るからです。《固定化》や《硬化》かければ、性能面はあまり関係ありませんし。

 さて、作成上問題なのが二つの弁とシリンダー部分です。問題の弁部のパッキンは、(にかわ)に魔法を使って誤魔化します。量を用意するのが面倒そうなので、部品のつなぎ目部分に使うパッキンは、《錬金》で現地溶接で対応すれば問題ないでしょう。

 高い精度が必要なシリンダーと弁は、鋳型を作成し《錬金》で対応。シリンダー内の玉は、木を使いました。精度のいらない他の部分は、適当に《錬金》で対応しました。



 そして、いよいよ試作品の完成です。シリンダーと弁の精度を出すのに、非常に苦労しました。

 早速、ドリュアス家の井戸に設置してみます。立会人は、母上、ディーネ、アナスタシア、オーギュストの4人です。あれ? 母上とディーネにしか告知していないハズなのですが、何故アナスタシアとオーギュストが居るのですか?

 話を聞くとアナスタシアはディーネのおまけで、オーギュストは母上に声をかけられたからだそうです。どうやらオーギュストはかなり早い段階で、父上から私の事を聞いていた様です。それはアンナも同様らしく、二人で私のフォローをしてくれていたそうです。

(つい先日、アナスタシアに私の事を秘密にする約束をしたばかりなのに……)

 気を取り直して、早速設置を開始したいと思います。先ずはライトで、井戸底と深さを大まかに確認し、パイプを錬金で隙間なくつなぎ合わせます。レビテーションで、パイプを井戸に差し込み足りなければパイプを付けたし、多ければカットします。丁度良い長さになったら、パイプを井戸の縁に《錬金》で固定。次は井戸の口に、パイプを固定した側から3分の1ほど《錬金》で石蓋をし、石蓋の上を水平にします。パイプの上に手押しポンプを乗せ、空気が漏れないように《錬金》で溶接・固定します。

 ……よし設置完了です。試しにポンプに少し水を入れ、ハンドルを動かしてみます。

「あっ!! 水が出た!!」

 アナスタシアが、嬉しそうな声を上げます。よし成功です。最後にポンプとパイプに《固定化》と《硬化》をかけ、井戸に木で完全に蓋をしたら作業終了です。

 念の為に数日様子を見てみましたが、問題は出ませんでした。使用人達にも大好評です。

 ドリュアス領内の、井戸全てに手押しポンプを取り付ける事になりましたが、意外に数が少なくすぐに終わってしまいました。外に売り出すにしても、お金を出せるのは貴族だけでしょうし、貴族が平民の為にお金を使うとは思えません。当然、大商人も同様でしょう。よって販売は見送りました。

 残念ながら手押しポンプは、私の自己満足で終わってしまった様です。まあ領民が喜んでくれたので、良しとしておきましょう。



 続いて《錬金》について、現状をまとめておこうと思います。

 “希少金属を《錬金》して手っ取り早く儲けよう作戦”

 これは以前から《錬金》で、どう儲けようか画策していた青写真です。しかし残念ながら《錬金》した金属は、不純物が多くとても売り物になりませんでした。そして不純物を分離精製するのは、ドットメイジでは無理でした。

 ですが希望があります。それは、原子配列変換による《錬金》が可能な物質です。今の私の場合は、元素周期表№2・水素~№25・マンガンまでです。

 この範囲の物質は、ディテクト・マジック《探知》で不純物を知覚し再度《錬金》を発動。これを繰り返す事により、純度を高められるのです。(他のメイジが何故これをやらないのかは不明です。私に現代知識があるからでしょうか?)

 これを利用し、アルミニウムの純度をほぼ100%に上げた物をインゴットにし、軽銀としてマギ商会で5リーブルほど売りに出してもらいました。(入荷先は、東方から来た商人と偽装してもらいました)

 最初は見向きもされませんでしたが、見る目が有る人はいるものです。最後には、かなりの高値が付きました。

 チタンについてですが、合金にすれば強度も高く、何より非常に軽いので武器の素材としてはかなり優秀な金属です。この金属をばらまくのは、あまり良くないと感じ自重しておきました。あと、炭素は№6で今の私の実力でも《錬金》可能です。純粋な炭素から、ダイヤモンドを組上げるのが目標です。成功すれば、かなりの資金源になってくれるでしょう。アルミやケイ素で宝石が作れるでしょうが、こちらは合成と分離精製が出来なければ無理と判断しました。






 さぁ、早くランクアップして、もっと希少な金属作って儲けるぞ~~~~!! 
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