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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第8話 私の魔法は問題だ!!

 こんにちは。ギルバートです。敏腕(次期)領主のヴァレール・ド・クールーズが頑張ってくれているので、ドリュアス家は非常に助かっています。その理由は、高等法院にとって目障りな存在が、ドリュアス家とクールーズ家の二つに増えた事により予想外の利が生まれたからです。

 尻尾を掴ませられない高等法院の奴等は、下手に手を出せないので両家への嫌がらせで溜飲を下げようとしました。しかしヴァリエール公爵や陛下が、嫌がらせが出来ない様に睨みを効かせると、動きが制限された彼等のフラストレーションは溜まって行く一方です。こうなると高等法院の上層部は、馬鹿が暴走するのを抑えるのに必死になります。

 しかしここで問題になったのが、敵の立場の違いです。ドリュアス家を恨み妬んでいる者達は、軍部に属しているか軍部に太いパイプを持つ者達が中心で、軍部への関わりが薄い者達は精々“生意気だ”程度の認識しかありません。逆にクールーズ家を恨み妬んでいる者達は、軍部にかかわりの薄い文官達が中心です。

 そしてドリュアス家とクールーズ家が国から受けて居る支援は、“魔の森絶対9原則”の影響で物資と資金援助に限定されています。この状態で彼等が出来る嫌がらせは、物資の品質を故意と落としたり、何か理由を付けて援助額を減らす事くらいです。そしてそれが出来るのは文官達だけです。そうなると制限された状況で、文官達がクールーズ家の嫌がらせを優先するのは自然の流れだったのでしょう。

 こうなると「憎きドリュアス家を放置するとは何事か!!」と、どちらの家を優先するかが揉め事の原因となります。それが派閥となって、敵の結束が乱れる原因となりました。

 そうなると高等法院も下っ端を抑えておく事が出来なくなり、軽はずみな行動をとる者達が出て来る様になりました。

 ……それが父上達の調査に進展をもたらしたのは、皮肉としか言いようがありません。しかし現状で暴発してくれる様な馬鹿は、本当に下っ端ばかりで、残念ながら上につがなる様な証拠は出て来ていません。しかし高等法院の連中は、何時自分達につながる証拠を掴まれるか気が気でないでしょう。

 高等法院の事は置いておくとして、ディーネは相変わらず母上に鍛えられています。時々助けを求められますが、返事は全て「ごめんなさい」で返しました。その時は涙目で睨まれますが、私も死にたくないので全力でスルーさせてもらってます。良心の呵責を覚えますが、関係ありません。ええ、ありませんとも!! ……ゴメンナサイ。



 ヴァレールが敏腕(次期)領主になってから、何事もなく時間が経過して行きます。平和な時間は歓迎ですが、裏で何が起きているか分からないので、こう言った時間は高等法院(屑貴族)の奴らを片づけてから過ごしたいです。

 ああっ、忘れていました。ミーアが寿退職したのです。相手はマギ商会の中心メンバーの1人で、カロン(23歳)と言います。確りした人で職場の信頼も厚いそうなので、抜けているミーアには丁度良い人なのかもしれません。

 最後の日に送別会が行われましたが、調子に乗って私が如何に変な子供か力説しメイド長(アンナ)に怒られていました。最後まで締まらない人でしたが、幸せになってほしいです。

 そして後少しで、私も魔法の訓練が許される歳になります。属性系統は土が良いです。やはり《錬金》は、男のロマンだと思いますから。

 ……本当はお金を稼ぐのに、一番有利そうだからです。あと、母上の(地獄の)特訓を受けなくて済む!!(ここ重要)ディーネからは「風系統になれ」と言われていますが、ノーサンキューです。と言うか、自分の意思では決められません。

 本音?は置いておくとして、マギは小さい頃から近所の鍛冶場に出入りしていたり、治工具設計の仕事に就いたりと、金属に何かと縁が有る一生を送っていました。その経験を生かせるのは、如何考えても土メイジです。これは間違いなく、今後の資金繰りに大きな影響を与えるでしょう。

 そして父上と母上の属性から、私の属性は土か風である可能性が高いです。悲しい事に土と風は、相反する属性なのです。属性が風になれば土属性の《錬金》は、殆ど使えないと言って良いでしょう。それでは今後、非常に困るのです。

 私は今後の為に、系統が土属性である事を祈らずにはいられませんでした。



 5歳の誕生日に、子供にも使える小さな杖(ワンド)を送ってもらいました。早速翌日から部屋に籠り、杖との契約に挑みます。何をすれば良いか分からなかったのですが、取りあえず肌身離さず杖を携帯してみました。それだけでは足りないと判断し、杖を持って瞑想してみたり杖に語りかけてみたり(危ない人みたい)してみました。

 終いにはマギの知識から契約らしき物を引っ張り出し、杖にキスしてみたり血を付けてみたり色々と試してみました。ですが、一向に契約出来る気配も感覚もありません。結局即席で契約出来る訳が無いと悟り、杖を握り同調するように意識しながら瞑想をする事にしました。

 結局契約の完了(杖との繋がりが意識できる)まで、4日も時間がかかりました。ディーネの時は3日で完了したのに……。

 さて、運命の日がやって来ました。ギャラリーはディーネと母上に、最近一人で歩き回れるようになったアナスタシアです。そして上手く休みが取れた父上が、講師役を務めてくれます。

 まずはディーネの時と同じように、《念力》から始めます。

 父上は小石で見本を見せてくれましたが、正直に言って訳が分かりません。力の流れと言うのが、全く実感出来ないからです。

 取りあえず杖の先から力?を伸ばし、小石を掴み動かすイメージでやってみます。しかし小石は、ピクリとも動きません。

 父上は私の隣に来ると自分の杖(軍杖・レイピア)を握らせ、母上と同じように私の手の上から杖を握り手本を見せてくれます。私はこの時初めて、力(魔力か?)の存在と流れを感じる事が出来ました。

 次は力(魔力)の流れを意識し、先程と同じイメージで《念力》を使ってみます。小石はゆっくりと浮かび上がり、宙を移動すると元の位置に着陸しました。成功です。イメージ通りに動かす事が出来ました。

「ほう。イメージが良いのか? なかなか上手いではないか」

「ありがとうございます」

「では、次は属性の確認だな。自分の属性を把握するのは、メイジにとって大切な事だ。これをしっかり把握する事で、コモン・マジックや系統魔法に必要な力加減を知る事が出来る」

「はい」

「では、まず土系統から確認しよう。手本を見せるぞ……《錬金》」

 父上の目の前で土が一カ所に集まり、泥人形が形作られます。大きさは私と同じくらいです。

「よし。ではやってみよ」

「はい」

 先ほど父上が作り出した人形を意識し、土が集まり頭の中にイメージした形を形作る姿を思い浮かべます。大きさは私の頭くらいが良いでしょうか? イメージが完全に固まった所で、祈るような気持ちで《錬金》を発動します。

 結果は《錬金》を使った瞬間に分かりました。乖離していた魔力(ちから)肉体(からだ)(じぶん)に同化する感覚……。まるで、水が高きから低きに流れる様に自然な力の流れ。

 そして集中を解くと、目の前にイメージと寸分違わぬ土人形が在りました。

「ほう。見事なものだ。初めてにしては良く出来ている。ディティールも決して甘くは無い。良くやった。ギルバート。見事だ」

 父上が感嘆の声を上ると共に、喜び褒めてくれました。父上は私が自分と同じ系統属性だった事を、純粋に喜んでくれて居る様です。

 しかしここまで土と相性が良いと、相対する風の属性は絶望的です。

 ちらっと横目で確認しましたが、案の定と言うか母上とディーネは表情が、完全にフラットになっています。アナスタシアが「すご~い!!」と、言って無邪気に喜んでるのが対照となり怖さ倍増です。ふと気付くと、ディーネの唇が先程から同じ動きを繰り返しています。……怖いけど口の動きを読んでみます。

「う・ら・ぎ・り・も・の」

 待て!! 生来の属性に関しては、如何しようも無いでしょう。父上もこの危機を感知したのか、目で“如何する?”と聞いて来ます。私は同様に目で、“スルーしましょう”と返すしかありませんでした。アイコンタクト完了すると、父上は風系統を検証する勇気が無かった様で……。

「次は、火の系統だ。手本を見せるぞ。……《発火》」

 父上の杖先に、火が灯りました。

「よし。ではやってみよ」

「はい。父上」

 力を可燃ガスの一種とイメージし、杖先に供給そこで空気と混ぜ合わせ火を点ける。このイメージで《発火》を発動します。

 土属性と比べると、あまりにも力の流れが悪いです。なんとか火が灯るものの、維持するのは恐ろしく大変で、数秒維持しただけで精神力がかなり持って行かれてしまいました。

「一応成功したな」

「はい。でも、きつ過ぎます。先程の火でも数十秒も維持したら、精神力が空になりそうです」

「属性相性は、それほど良く無さそうだな」

「はい」

「では次は、水の系統だ。……コンデンセイション《凝縮》」

 えっ……。風の系統を最後にするんですか? そう思っていると、父上の杖先にバケツ一杯分の水が現れます。現れた水を杖を振って飛ばし、バシャッと派手な音をたてました。

「では、やってみよ」

「はい」

 空気中の水分を、杖先に掻き集めるイメージをします。そしてそのまま《凝縮》を発動しました。

 すると杖先に、コップ1~2杯分の水が集まって来ました。土と比べると流石に劣りますが、火より明らかに力の流れが良いです。集まった水を、杖を振り投げ捨てました。

「また成功か」

「はい。火より力の流れがかなり良いです」

 父上は満足そうに頷きましたが、そこで動きを止めてしまいました。目で“如何しよう?”と聞いてきたので、私は“続けるしかありません”と返します。残念ながら、ここで止める事は許されないのです。父上が諦めた様に溜息を吐きました。

「最後に風の系統だ。……ウインド《風》」

 父上の方から、風が流れて来ました。

「では、やってみよ」

 父上から諦めの感情が伝わって来ます。しかしここで成功させれば、今後の扱いが多少マシになる……かもしれません。

 空気を一つの塊とし、その中で移動・循環させることで風を起こすイメージ。じっくり良くイメージし《風》を、発動しました。

(あれっ……!?)

 私が驚いてしまったのも仕方が無いと思います。土系統を使った時と全く同じ感覚がありました。魔法の方も正常に発動し、私がイメージした通りに空気が循環し風を起こし続けています。私が魔法を解除すると、風もピタリと止みました。

 父上もかなり驚き、固まって居る様です。本来ならば土と風は相反し、両方得意なメイジなど存在しないハズなのです。

 母上とディーネの方を見ると、こちらも目を大きく見開き固まっています。アナスタシアだけが「ぜんぶできたすご~い」と、無邪気に喜んでいました。

 兎に角。私の属性基準は 土=風>水>火 です。

 そして硬直から回復した父上が、夕食後にドリュアス家緊急家族会議を開くと宣言しました。



 夕食を済ませた後、アナスタシアを除く全員が執務室(会議会場)に集まりました。原因が自分だと思うと、少し申し訳なく思ってしまいます。

 議題は何故こうなったかと、今後この事実を如何に隠していくかです。

「ギルバート。自分の属性について、何か思い当たる事はあるか?」

 先ずは“本人に聞くのが一番”と言わんばかりに、父上が聞いて来ました。実は自身を分析してみて、原因にあたりは付けてあります。

「私が一度死んで、二つの魂が融合して舞い戻って来た話は覚えてますか?」

 この場に居る全員が頷きました。

「恐らくですが、その魂の融合が原因だと思います」

 父上と母上は、難しい顔をしディーネは首を傾げでいます。

「あくまで、仮説ですが……」

 ここで私は、自分が立てた仮説を話し始めます。

 魔法を使う為の能力は、親から子へ遺伝する。しかし、系統属性はどうなのだろう? 両親と違う系統属性の子供は、絶対に存在しないのだろうか?

 答えは否である。そうなのだ。両親と違う属性を持つ子供は存在する。

 ならばメイジの系統属性は、何によって決定されるのだろうか? 肉体的特徴か?

 そもそも人間を含む生物の体は、バランスによって成り立っている。

 火属性が少なすぎれば、衰弱してしまう。

 水属性が少なすぎれば、カラカラになり干からびてしまう。

 土属性が少なすぎれば、痩せ細り折れてしまう。

 風属性が少なすぎれば、すぐに息切れして動けなくなってしまう。

 逆に多すぎれば、相反する属性に悪影響を与える。

 よって肉体だけ見れば、全ての属性が等しく使えなければ不自然なのである。更に言わせてもらえば、体内の属性バランスを崩すリスクも存在する。しかし現実には、相性の良い属性は有るだろうが、そのような事は決して無い。

 肉体が関係無ければ、系統属性は何によって決定されるのだろうか? そこで次の候補として挙がって来るのは、魂の存在だ。

 以前私は、母体が魂召喚の魔法陣の代わりをしていると仮説を立てたが、ここで召喚される魂は両親に影響されるのではなかろうか? それならば、親と相性の良い魂が召喚される。

 だがそれならば、もっと両親と違う属性の子供が生まれてきて然るべきなのだ。(しかもこれだと、虚無属性の説明がつかない)肉体でも魂でも無いなら、何が属性を決定しているのだろうか?

 出た答えは精神である。事実ハルケギニアでは魔力の事を、精神力と表現しているではないか。そして精神とは、肉体と魂の影響をもろに受ける。これならば親子間の属性差異と、遺伝的魔法継承が説明出来る。

 ここで私の話に戻るが、1年と2カ月の時間をかけてギルバート()マギ()は完全に融合を果たしギルバート()となった。ならば融合前は、精神が二人分存在したのではないか?

「……だから魂と共に精神も融合する事になり、融合前の精神は片方が土もう片方が風の系統属性だった。融合後の精神にも、融合前の属性系統が残った。よって私は、世にも珍しい土と風の複合属性メイジになった」

 私が「以上です」と言葉を切ると、父上と母上は相変わらず難しい顔をしていました。話に着いて来れないようだったディーネは、最後の説明だけ何となく分かったのか頷いていました。決定的な証拠こそありませんが、今話した仮説は“スジは通っている”と思いますし自信もあります。

「話は解った。それで、どう対策をとる?」

「隠していても、実力者には魔法を使えばバレてしまいます。得意な属性である土と風を絶対に使わないようにする為、属性自体を水と偽るのが最良と思います。また、ブレイドの様な属性が色となって出てしまう魔法は一切使えません。何色になるか解りませんが……少なくとも青や黄色では無いでしょう」

「なにも、そこまで徹底しなくとも良いのではないか? 土か風のどちらかを封印するだけでは?」

「中途半端は命取りになります。ドリュアス家の長男は、無能で通した方が都合が良いです」

「そうか……確かに、そうだが……」

 父上がそう言いながら、溜息を吐きました。

 父上と母上からすれば、面白くない? いえ、辛いのでしょう。自らの息子は安全の為とは言え、無能の汚名を背負わなければならないのですから。






 ちなみに、ブレイドの色は黒でした。とても人には見せられません。 
 

 
後書き
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