| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十二話 一人ではないその三


 当の中田がだ。玄関に笑顔で出て来てだ。こう二人に言ってきた。
「よく来てくれたな」
「あっ、はい」
「御邪魔します」
「まああがれよ」
 中田はその笑顔で彼等に応える。そうしてだ。 
 家の中に招き入れてリビングに案内してだ。また二人に言った。
「二人がはじめてだからな」
「じゃあ銀月さんや工藤さん達はですか」
「まだなんですね」
「もうすぐ来ると思うけれどな」
 しかし今はなのだった。
「まあそれまではな」
「ええと。それじゃあ」
「何をすればいいんでしょうか」
「テレビでも観るか?」
 言いながらだ。中田は早速テレビのリモコンのスイッチを入れた。画面には有名なバラエティータレントが出て来て何か言っていた。
 そのタレントを見てだ。樹里はこんなことを言った。
「何かこの人って」
「どうしたの?」
「何か頭が不自然じゃない?」
「頭が?」
「前からそう思っていたけれど」
 そのタレントの頭を見ながらの言葉だった。
「そんな気がするけれど」
「頭って」
「ああ、鬘だな」
 上城は首を捻っていたが中田はだ。笑ってこう言ってきたのだった。
「それだよな」
「はい、何か」
「そのタレント前から噂があるんだよ」
「頭がですか」
「鬘被ってるんじゃないかってな」
 そうした噂があるタレントは多いが彼もまただというのだ。
「噂あるんだよ」
「じゃあやっぱり」
「クロだろうな」
 つまりだ。鬘だというのだ。
「現に髪型昔から変わらないよな」
「はい、全然」
「しかも髪の毛が全く動かないしな」
「ううん、今ふと思ったんだすけれど」
「鬘は慣れた奴にはすぐにわかるさ」
 中田はキッチンで鍋に火を入れながら述べた。
「俺も親戚にそういう人がいるからな」
「鬘の人がですか」
「それでわかるんだよ」
 こう話すのだった。
「そういうのがな」
「僕全然わかりませんけれど」
 首を捻ってだ。上城はこう言うだけだった。
「コツがあるんですか」
「あるさ。ちょっとしたな」
「髪の毛があるかないかがわかる」
「禿は気にする人間はするからな。実際にな」
「実際に?」
「鬘は禿を隠す為に発明されたからな」
 フランスブルボン朝の王であるルイ十三世が発明させたものだ。言うまでもなく彼の髪の毛は気の毒なことになっていた。それでだというのだ。
「まあフランスはその頃から禿が多かったんだろうな」
「えっ、フランスってそんなに」
「髪の毛が薄い人が多いんですか」
「フランスは禿の国なんだよ」
 中田は笑って話す。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧