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久遠の神話

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第九話 戦いの意義その七


 それでだ。こう高橋に話した。
「しかしよく考えれば」
「あの娘もどうしてそこで文献を手に入れたんでしょうか」
「そこが気になる」
 高橋に考える顔で話す。
「非常にな」
「偶然、と考えればですね」
「ある程度は説明がつくな」
「ええ。彼女学生ですし」
「旅行やフィールドワーク中に見つけた」
「説明はつきますね」
「それだけでな」
 充分だというのだ。しかしだった。
 工藤はだ。そこに何かを感じ。そうしてまた言った。
「だが。それは表向きだ」
「実際のことはわからない」
「わからなくなる」
「事件と同じですね」
 高橋は警官としてだ。今の言葉を出した。
「それは」
「そうだ。戦いも事件もそうした面においては」
「本当に同じですね」
「その同じものとして話そう」
 工藤は高橋に言った。
「俺は彼女は他にも知っていると思う」
「剣士の戦いについて」
「それもかなり深くだ」
「けれどそれは話さないんですね」
「話せないのかもな」
 工藤はその可能性も否定しなかった。
「彼女の何らかの事情でだ」
「事情、ですね」
「少し見てみるか」
 工藤は迂闊に動くのを避け。慎重案を執るべきだと話した。
「あの娘を」
「そうしてあの娘自身の口からですね」
「戦いについて聞きたい」
「ええ、それじゃあ今は」
「様子を見るとしよう」
「俺達は俺達で調べて」
 聡美についてはそうするというのだ。
 この話の後でだ。工藤はまた高橋に言った。
「あと。上に頼むか」
「警察のですか?それとも防衛省のでしょうか」
「いや、外務省になるな」
「外務省ですか」
「外務省の欧州方面に頼んでだ」
 そうしてだというのだ。
「この戦いについて。ギリシアで色々と調べてもらいたい」
「ああ、戦いのはじまったそこで」
「あの国なら何かわかるだろう」
「ですよね。それじゃあ」
「調べるやり方は幾らでもある」
 工藤はまた言った。
「あの娘から聞くだけじゃない」
「本場からもですね」
「調べることもできるからな」
「その辺り外務省と上手く話がいきます?」
「そのことか」
「工藤さん自衛官ですから」
 外務省とはだ。特につてがないのではというのだ。
「ですからそれは」
「俺の上司がだ」
 工藤は今度は彼の直接の上司の話をはじめた。 
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