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久遠の神話

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第八話 二人の剣士その十五


「音楽家や芸術家として成功した人」
「他にもですね」
「王侯貴族になった人もいます」
「その望みを適えて」
「はい、そうなったのです」
 こう上城、そして樹里に話すのである。
「そうした人もその中にはです」
「いますか」
「いると考えるべきです」
 強い、深刻な声になりだ。聡美は二人に話す。
「御気をつけ下さい」
「そうですね。ですが」
 上城はそうした人間と剣士として対峙する可能性はわかった。しかしだった。
 ここでもだ。彼は決意する顔で言ったのだった。
「ですが僕は」
「それでもですね」
「戦いません」
 このことはだ。どうしてもだというのだ。
「人とはです」
「そうされますか」
「はい、そうします」
 彼はまた言ったのだった。
「何としてもです」
「そうされますか」
「はい、絶対に」
 自分に、そして家族への誓いを話してだった。彼は。
 聡美にもだ。また言ったのだった。
「それは何があっても」
「では。それを最後の最後まで」
「していきたいです」
「そうですね。ですが」
「ですが?」
「戦わないのも選択です」
 上城の考えを肯定する、そのうえでだ。 
 聡美は彼にだ。さらに話したのだった。
「ですがそれと共に」
「他にもですか」
「はい、戦いを止める為に戦う」
 聡美はその言葉をまた強くさせる。
「そうされることもです」
「一つのやり方ですか」
「はい、そうです」
 こうだ。上城に話すのである。
「そのことも頭に入れておいて下さい」
「一つのやり方」
 それを言われてだ。上城は。
 深刻な顔になりだ。そうしてだ。
 その聡美にだ。あらためて言った。
「あの」
「あのですか」
「はい、戦うんですよね」
 それを言ったのである。聡美に。
「それってつまりは」
「一つのやり方としてです」
「それもあるんですか」
「そうです」
 まさにそうだというのだ。
「決して。一つのやり方だけではありませんから」
「ですが」
 そのやり方についてだ。上城は。
 困った様な顔になりだ。こう言うのだった。
「それはどうも」
「戦うからですね」
「戦いを止めさせるんですから」
 そのことを理由にしてだ。彼は聡美に反論するのである。
「それで戦うっていうのは」
「相手を倒してしまえばですね」
「本末転倒じゃないんですか?」
「そう考えることもできますし別の考えになることもできます」
 聡美は言うのだった。
「本当にそれぞれですから」
「ううん、そうなんですか?」
「戦わなくていい剣士の人もいます」
 聡美は少し具体的な話を入れてきた。
「しかしそれとは別にです」
「戦いを止める為には戦うしかない剣士の人もですか」
「そうした人に対してはどうするか」
 聡美はそうした剣士に対するやり方をだ。上城に問うていた。
「そのこともよく御考え下さい」
「僕は。そうした考えは」
「結論は今出さなくてもいいです」
 聡美は悩んでいる顔になる上城にだ。即断はさせなかった。
 そのうえでだ。また彼に述べた。
「ですが。このことは頭の片隅に入れておいて下さい」
「そしてその時が来ればですね」
「どうされるか。決めて下さい」
「わかりましたとは言えないです」
 上城は項垂れた顔で述べた。
「ですが」
「それでもですね」
「考えさせて下さい」
 こう言ってだった。彼は。
 今は聡美と別れそのうえで樹里を連れて帰路についた。その中でもだ。聡美に言われたことをだ。ずっと頭の中で反芻していっていた。
 そうしながらだ。彼は帰るのだった。樹里と共に。


第八話   完


                  2011・9・14 
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