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久遠の神話

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第八話 二人の剣士その十二


「戦いの話になってな」
「そうして刀を持つことになりました」
「望みは何かって話になった」
 工藤もだ。そうだったというのだ。
「それからだった」
「それで工藤さんの望みは何なんだい?」
 中田はこのことをだ。工藤に具体的に尋ねた。
「それはな。何なんだ?」
「平和だ」
「平和か」
「そうだ。俺は自衛官だ」
 それを話に出す。彼はそうした。
「自衛官の仕事は平和を守ることだ」
「それが自衛隊ですね」
「そうだ。俺達は戦うことが仕事じゃない」
 樹里にもだ。彼は答えた。
「平和を、国民を守ることが仕事だ」
「だから災害救助にも出られるんですね」
「それも国民を守ることだ」
 それに他ならないというのだ。それもだ。
「だからだ。俺はそれを望みに選んだ」
「立派ですね」
 上城は工藤の確かな顔でのはっきりとした言葉を聞いて言った。上城は今尊敬する顔になっている。その尊敬の対象は言うまでもない。
「工藤さんは」
「立派か」
「はい、立派です」
 まさにそうだとだ。彼は答える。
「そう言うしかないですけれど」
「これは立派なことじゃない」
 しかしだ。当の工藤はだ。中田のその言葉をだ。
 こう言ってだ。それで終わらせたのだった。
 だが上城はそれでもだ。工藤に対して問うた。
「何で立派じゃないんですか?国民を守ることを選ばれたのに」
「そうよね。私もそう思うわ」
 樹里もだ。上城の顔に自分の顔を向けてそのうえで頷いて言う。
「工藤さんみたいなことってそうそう言えることじゃないのに」
「それで立派じゃないって」
「謙遜ですよね」
「あくまで」
「謙遜じゃない」
 工藤はこのことも否定した。
「当然のことだ」
「当然ですか」
「そうなんですか」
「自衛官にとっては当然のことだ」
 だからだというのだ。
「立派でも何でもないんだ」
「ううん、それが自衛官ですか」
「国民を守ることが当然なんですか」
「それが仕事だからだ」
 工藤はまただ。当然そのものという口調だった。
「だから俺は望んだ」
「平和をですか」
「それを」
「それだけだ」
 ここまで言ったのだった。そしてだ。
 今度は高橋だった。彼はだ。
「俺も高校卒業して警官になったんだ」
「高校を卒業してすぐですか」
「警察に入られたんですか」
「ああ、そうなんだ」
 笑顔で上城と樹里に話す。
「神奈川県警だったんだ」
「あれっ、神奈川だったんですか」
「兵庫じゃなくて」
「ついでに言うと歳は工藤さんより一つ下だよ」
 高橋はこのことも話した。
「そのことも話しておくね」
「へえ、二人共俺よりも先輩なんだな」
 中田は高橋の話を聞いて納得した様にして言った。
「成程ね」
「そうだね。中田君だったね」
「ああ、そうだよ」
「君とも年齢的にはそうなるね」
「だよな。そこは」
「それでね」
 高橋はここで話を変えてきた。 
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