インフィニット・ストラトス～黒き守護者～

　祐人と篠ノ之束の戦いが地下で始まろうとしている頃、

『ここから先は通行止めよ、五人とも』

　地下から振動を感じた簪を除く一年の女専用機持ちの道をシヴァが阻んでいた。

「アンタ、この後に及んで何の用？　あたしたちは忙しいの」
『だったら今すぐ各生徒たちの避難を急ぐことね。もっとも、今回は―――向こうの相手でしょうけど』

　すると、まるで打ち合わせたかのように以前現れた無人機が第三アリーナに四機の無人機が降りてきた。

「!?　まさか、貴様が―――」
『勘違いにも甚だしいわよ、眼帯女。それに、どうやら上級生コンビはもう来たようね』

　全員がそっちを見ると、そこには『ヘル・ハウンドver2.5』を駆るダリル・ケイシーと『コールド・ブラッド』を駆るフォルテ・サファイアがいた。

「仕方ないわね。みんな、行くわよ！」

　凰の声にその場にいる全員が頷いてその場から移動する。

『いいなぁ。私も久々に戦いたい』
『馬鹿ッスね。そんなことしたらIS学園(ここ)が潰れるッスよ』
『……何であなたがここにいるの？』
『のほほん少女と遊びすぎて逃げられたッス。まぁ、ちょうどいい機会だと思ったんッスよ。あのションベン臭いガキに現実を教えるには』
『織斑一夏ね。織斑千冬にメッセージを届けたけど、篠ノ之箒共々そろそろ現実を教えておいたほうがいいでしょうに。最悪の場合、三つ巴―――それ以上の四つ巴になるかもしれないのにね』
『今は更識家というストッパーがあるッスけど、それを失った時、この世界は終焉を迎える可能性が大ですもんね』

　シヴァとリヴァイアはため息を吐く。

『案外、祐人が『第二の天災』と呼ばれる日が近いかもね』
『そんなことよりも、いつの間にマスターを名前で呼んでいるッスか？　もしかして、もうした仲とか？』

　リヴァイアがシヴァをからかうと、シヴァがリヴァイアの足を踏んだ。

『痛いッスよ』
『自業自得よ。まぁ、祐人なら私は構わないけど………』
『何惚気けているんッスか？』
『うるさいわよ。というかさっさと私たちも地下に行きましょう』
『そうッスね。マスターのことも心配ですし』

　二人はそのまま消えた。それを目撃した人間は―――いない。





　■■■





「キロプテル！」

　八基のビットが舞い、二十体の機兵を落とした。

「なるほど、それなりにはやるようですね」
「生憎だが、俺はこれでも実力は高いんでね」
「ですが、束様の命令ですのであなたは消えてもらいます。恨むなら束様の邪魔をした自分を恨んでください」
「というか、あの二人の弱さに嘆けよな」

　まぁ、無理だろうけど。
　そう思うと、再び熱線が俺に向かって飛んできた。

「馬鹿の一つ覚えだな」

　再びその熱線を吸収し、エネルギーを回復させた。

『三機のISがこちらに接近中です。『ミステリアス・レイディ』に『白式』、『打鉄弐式』です』
（楯無たちか）

　ビームサーベル《炎閃》を抜き機兵を切り払う。

　―――GAAAAAAAAAAAAAッ!!!

　雄叫びが聞こえ、そっちを感知した。

『四本足の獣型が現れました。こちらに接近しています』
「―――祐人!!」

　楯無を筆頭に一夏と簪が現れた。

「大丈夫かしら？」
「ハッ！　俺の強さはアンタと簪が知っているはずなんだがな」

　そう言いながらも一機、また一機と戦闘不能に陥れていく。

「お前ら！　気を引き締めろよ！　相手は容赦してくれねぇぞ!!」
「誰に言ってんだよ！　そっちこそ、抜かるなよ！」
「雑魚が意気軽な」

　一夏に釘を刺しておいた。

「ヒデェ!?」
「各自、自分の思考に従って行動しろ！」

　俺はそれだけ言って武器を《斬魂》に切り替えて上から奇襲してくる敵を斬り払う。

　―――GAAAAAAAAAAAAAッ!!!

　どうやら四本足がこっちに接近して来て―――って、あっちは!?

『簪様の方向です』
「だよなぁ!!」

　方向転換してよそ見している簪と四本足の間に割って入り、《ストライクバンカー》を展開し、相手に突き刺し、容赦なく全弾発射する。

「吹き飛べぇッ!!」

　―――ズガンッ!!、ズガンッ!!、ズガンッ!!、ズガンッ!!、ズガンッ!!、ズガンッ!!

　四本足が吹き飛ぶと同時に爆発した。

「す、スゲェ……」
「ボサっとするな！」

　荷電粒子砲《迅雷》を一門一夏の方に向け、飛んでいく雑魚を燃やしていく。
　だがまぁ、この状況にありがたいな。暴れられるから。

「邪魔!!」

　《キロプテル》で落とすと同時にビームライフル《迅光》の射撃で相手の指揮系統を混乱させる（とっているか不明だが）。さらに《迅雷》で新たに出てきた四本足の足止め（というより脚壊し）をするという荒業をして雑魚の掃討は一夏に任せる。
　あらかた片付け終わっただろうかと思った所だった。

「お姉ちゃん!?」「楯無さん!?」

　後ろにいた簪と一夏が慌てた様子で楯無を呼ぶが、肝心の楯無からは返事がなかった。

（なぁ、気のせいか？　感じたくないプレッシャーを感じてしまうんだが………）
『いえ、気のせいではありません。更識楯無は―――VTシステムに囚われています』

　振り向くと同時に、何かが振り降ろされた。