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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第93話 決着

「がはっ!?」

バルトマンの拳が溝に入り、悶える優理。
バルトマンは既に追撃するための斧を振り上げている。

「優理!!」

桐谷が慌てて助けにいこうとするが間に合わない。

「優理!!」

アギトもボロボロながら声を張り上げる。

「レイ………ごめんね………」

優理がそう呟いたその時、

「ぐっ!?」

バルトマンに6つの魔力弾が直撃した。

「………誰?」

少しずつ楽になり、顔を上げてそっちの方を見る。

「あっ………」

言葉が漏れ、そこから目が涙で一杯になった。

「大丈夫か優理?」

「レイ………」

ふらふらになりながら零治に向かって歩き、

「おわっ!?」

そして思いっきり抱きついた。

「………ったく優理は相変わらず甘えん坊だな………」

「だって、だって………」

「ごめんな、俺はもう大丈夫だから………」

「うん………」

「零治ー!!!」

そんな零治にタックルをかますアギト。

「痛いぞアギト………」

「零治!零治!!」

「………心配かけたな本当に」

優しくアギトを撫でる零治。

「優理!?」

アギトと話しているうちに、優理の体から力が抜けたのを感じた。
慌てて抱き寄せたので問題無かったが、気を失ったみたいだった。
高い魔力と高い攻撃力を持つ優理だが、そもそも人になって間もないのにこんなに長く戦闘していればこうなるか………

「ありがとうな優理………桐谷!」

「何だ?」
「優理とアギトを頼む」

そう言って優理を渡す零治。

「零治!?アタシも!!」

「アギトも結構傷を負ってる、無理をしないでくれ」

「でも!!」

「………零治、お前はどうする気だ?」

「バルトマンを止める」

「零治!!」

「お前!!前にどんなに目にあったのか分かってるのか!?それに初めて使う武器で………」

「桐谷、大丈夫だ。双銃には慣れてるよ」

「でも1人じゃ絶対駄目だ!!私とユニゾンを………」

「だったら先ずはアギトも傷を直してくれ。ユニゾンはそれからだ」

そう言って零治はバルトマンの前に向かう。

「くっ、先ずは優理を加奈の所に預けないとな………アギト!」

「分かってる!!零治、直ぐ行くから!!」

そう言ってアギトと桐谷は地上に降りていった………










「ウォーレン………?」
「違うぜバルトマン。俺は黒の亡霊だ」
「ウォーーーーーレーーーーン!!!!」

斧を構え向かってくるバルトマン。

「負けた執念なのか、はたまた再戦を楽しみにしていたのか………まあ取り敢えず………」

双銃をバルトマンに向け、構える零治。

「頭を冷やせ」

そう言って魔力弾を発射した………













「シュテルちゃん!」

「くっ!?」

一瞬の隙だった。
気を抜いた瞬間をマリアージュに狙われた。

なのはが気がつき声を掛けたが既にシュテルをマリアージュが剣で突き刺そうとしていた。

「くっ!?」

シュテルが覚悟を決めて身構えたが………

「あれ………?」

マリアージュは突き刺す寸前で固まっており、シュテルは傷一つ負っていない。
シュテルは周りを確認するが、他のマリアージュ達も止まっている。

「レイ達が上手くやってくれたみたいですね………」

シュテルの呟き通り、徐々に消えていくマリアージュ達。

「シュテルちゃん、大丈夫!?」

「はい、危ない所でしたけど………」

なのはがシュテルの近くまでやって来てペタペタと確認するように色んな場所を触った。

「大丈夫ですからやめてくださいナノハ、くすぐったいです」

「あっ、ごめんね」

取り敢えず何ともない事が分かり安心するなのは。
一方のシュテルは少し恥ずかしいのか、顔が赤くなっていた。

「や〜い、シュテるん照れてんの!!」

レヴィにからかわれたのに腹が立ったのか、パイロシューターをレヴィ目掛けて飛ばしながらレヴィとおいかけっこを始めるシュテル。

「ふ、二人とも暴れちゃダメですよ〜!」

「そうだ、王と盟主の命令は絶対へぶっ!?」

「「あ………」」

流れ弾がディアーチェに当たり、その場で固まるシュテルとレヴィ。
対してディアーチェは黒いオーラを漂わせながらニヤリと笑っていた。
そんなディアーチェに紫天の盟主は隣でただ震える事しか出来なかった。

「貴様ら………覚悟は出来ておろうな………?」

「王、落ち着いて………」

「そうだよ王様!!」

「それに貴様らさっきはディアと呼ぶと生意気な事言っていなかったか………?今更王様と呼んで私が許すとでも………?」

エルシニアクロイツを構え、魔力をためるディア。

「行くぞ、覚悟は………」

そう言った瞬間、3人の目の前をピンク色の砲撃魔法が通り過ぎた。

「いい加減、騒ぐのやめようか………オハナシ……する?」

「「「いいえ、済みませんでした!!」」」

流石のチビッ子達も魔王には敵わなかったのだった。

「全く、あの子達は………」

「協力ありがとうございました」

「いいわよフェイトちゃん、そんなにかしこまらなくて」

「いえ、でも………」

「そう言ってくれてるんやし、いいんやない?」

そんなはやての言葉に「そうだね」と頷いた。

「じゃあ………だけどどうしてこの騒動に?」

「それは………」
「うん………」

フェイトの質問に口篭るキリエとアミタ。
そして二人で何やら話した後キリエが口を開いた。

「それは零治に話を聞いて。私達の口から話す事じゃ無いわ」

「零治………?」

キリエの言葉を聞いて少し不機嫌になるフェイト。

「何か………?」

「いいえ、何だか仲が良さそうだなって………」

「フェイトちゃんには関係ないでしょ?」

キリエとフェイトの間で不穏な空気が流れる。

「あらあら………」
「お若いですね………」

なんておばさん臭いことを言いながらはやてとアミタは2人の様子を仲良く見ていた………









「止まった………?」

ナイフを再び投げようとして、フェリアは構えていたが、マリアージュが止まったことにより、投げるのを止めた。

「レイ兄たちがやったんっスかね?」

大声で姉達に聞いたウェンディの声は最前線でトーレと共に戦っていたティーダにも聞こえていた。

「レイ兄………?もしかして零治君か!?」

「知ってるのか?」

「今日の午前中に会ったからね。そうか、やるべき事って言うのは無事にシャイデ・ミナートを救ったって事かな………?だけどこの騒動も彼女が………?………まあそれは本人から直接聞けば良いか」

「何をぶつぶつと一人で話している?」

途中から1人でぶつぶつと呟くティーダに不機嫌そうにトーレが言った。

「いや、今度トーレさんを食事に誘うのに何処の店にしようかなって」

そう言った直後、聞き耳を立てていた、セイン、ディエチ、ノーヴェ、フェリアが食いついた。

「これってデートのお誘いだよね!?」
「ティーダさん大人だね!」
「ディエチはああいうナンパみたいなのが良いのか?」
「ナンパとは違うと思うよノーヴェ」

「どうでも良いが、デートはああいう風に誘うべきなのか?」

「「「う〜ん………」」」

フェリアの疑問にセイン、ディエチ、ノーヴェが一斉に頭をかしげた。

「良かったじゃないっスか、ウーノ姉に禁酒されたばかりなんスからたかれば」

そんな中思考がずれてるウェンディ。
トーレに拳骨を落とされたのは言うまでも無い………

「で、どうですか?」

「………うまい酒がある店なら構わない」

「そうか」

トーレにそう言われ自然と笑みが溢れるティーダ。
そんな時だった………

「えぐっ………えぐっ………」

1人の男の子が泣きながら歩いていた。

「何だ?まだ逃げ切れてない子供がいたのか………」

そう呟きながら男の子に近づいくティーダ。
何も警戒しなかったティーダは上で不安定に揺れているビルに気がつかなかった。

「ランスター、上だ!!」

トーレに言われ、慌てて上を見るティーダ。
上空ではビルが男の子に向かって落ちてきていた。

「危ない!!」

すかさず子供を突き飛ばすティーダ。
しかし………

「ランスター!!」

ティーダはビルの瓦礫にのまれていった………










「まあそう言ったものの………」

自身の幻影を終始作り、隙を見て魔力弾を放つ戦い方。
始めこそじわじわとダメージを与えていったが、次第にバルトマンも慣れ始め回避し始めた。

「しかし良いのかバルトマン、避けるだけで?」
「!!」

言われて気がついたみたいだがもう遅い!

「クイックバレット、エクスキューションシフト!!」

周りに散らばった魔力弾が一斉にバルトマンを襲う。
斧を振るうが、数の多い魔力弾を消しきる事は出来ず、約6割が直撃した。

「まだまだ!!」

今度はスフィアを10個展開。
バルトマンの方に飛ばした。

「行くぞ!!」

再び魔力弾を撒き散らす零治。
しかし今度はバルトマンに向けてではなく、スフィアの方に飛ばした。

「リフレクターバレット!」

スフィアに直撃した魔力弾は壁に当たったかのように反射し、不規則に飛び跳ねる。

「ウォーレン………!!」

既に鎧が無い状態なのでダメージが蓄積していくバルトマン。避けるにも量が多く、不規則に飛ぶ魔力弾の雨に対応が出来ないでいた。
コアの暴走で起きている自己修復能力も徐々に落ちてきている。

「こんなものか?先輩ならもっと容赦無い攻撃をしてるぜ?」

休みなく魔力弾を増やしていく零治。
そんな様子を見て、バルトマンの顔にもハッキリと怒りが見えた。

「調子に………乗るな!!!」

体に電気を溜め、一気に放出し、スフィアを全て落とすバルトマン。

「まあ、そう簡単にいかないよな………」
「なめるな!!」

バルトマンが斧を構え、突撃し、零治が双銃で受け止める。

「あれは本当に零治か………?」

「えっ!?」

下で回復している加奈の所に優理を連れてきた桐谷。
2人の戦いを見てそう呟いた。

「何であんなに余裕そうなの………?」
「まあそれも引っかかるが、それ以上に、零治があんなに相手を挑発するような戦い方をするのを初めて見た。アイツはどちらかと言うと、戦いの先を予測して戦う筈なのに………」

「確かにちょっと兄さんっぽく無いかも………」


「ツインブレイド!!」

受け止めていたのを横に受け流し、魔力で銃筒をコーティングしてバルトマンに斬りかかる零治。

「ぬああああ!!」

その攻撃に直ぐに反応して斧を振り対抗するバルトマン。
2人のクロスレンジの攻防は続く。

「くはははは楽しいなウォーレン!」
「だから先輩じゃ無いっての!!」

そんな事を言いながらも2人共攻撃の手を緩めない。

「これで………!!」
「終わりだ!!」

2人共同じタイミングで離れたと思うと両方共デバイスに魔力を込め始める。

「スパイラルブラスター!!」
「ボルティックブラスター!!」

2人の砲撃魔法がぶつかりあった………










「ううっ………」

「星、気がついた!?」

「私は………」

目を開けた私が最初に目にしたのは優理でした。
確かあなたはシャイデの方の手伝いをしている筈では………

「ううっ………」
「くっ………」

「ライ、夜美!!」

ライも夜美も起きたみたいです。
私達が吹き飛ばされた事は覚えているのですが、その後の記憶が………
そもそも何故吹き飛ばされたのでしょうか………?

「星、レイは………?」

「レイ………?」

ライにそう言われ、完全に思い出しました。

「レイは………」
「レイは戦ってるよ」
「えっ!?」

私だけじゃなくライや夜美も驚いています。
それはそうですよね、だって私達はレイが死んだ所を見たのですから。

「優理、嘘では無いのか!?」
「本当だよ、私を助けてくれたもん!」

嬉しそうに、3人に自慢するように言う優理。
そんな中少し遠くの場所で、加奈とアギトが言い争いしてました。

「加奈、アタシ行くぞ!!」

「駄目だって!!ユニゾンデバイスなんて治した事無いのよ私!!確かに傷は消えてるけど、本当に回復してるなんかなんて………」

「アタシが大丈夫って言ってんだから大丈夫だ!!」

そう言ってアギトは行ってしまいました。

「星、我等も………」

「そうですね………うっ!?」

立ち上がろうとした星だが体の痛みに座り込んでしまう。

「星!?うっ………」

ライも星と同様に立ち上がれなかった。

「くそっ、回復したと思っていたが………」

夜美も立ち上がれず悔しそうに上を見る。

「「「レイ………」」」

3人は空を見上げる事しか出来なかった………








「くは、くははは!!やっぱ楽しいよ、お前らと戦うってな」
「俺はちっとも楽しかねえよ………」

肩で息をしながら零治が答えた。

最後の砲撃魔法の撃ち合いは相打ちだった。
お互いを打ち消し、完全に消し去った。しかしその次の一手で差が出てしまった。

零治はとバルトマンの放った次の一手。バルトマンのボルティックブレイカーに対してスパイラルバレット。
零治は連続でスパイラルブラスターを放つ事が出来なかった。

「しかし助かったぜ、あの野郎………操られる位なら力なんて要らねえのによ………」
「そう思うんだったら何で頼ったんだよ………」 
「ウォーレンと直ぐにでも戦いたかったのさ。あの時の一騎打ちは今までで感じたことの無い程気持ち良かった………それを味わう為に今まで待っていたんだ」
「先輩が死んだのも知らなかったのか?」
「俺は最深部で拘束されてたからな。かなり暇だったぜ」

そう言って笑顔で笑うバルトマン。

「このバトルジャンキーが………」
「最高の褒め言葉だぜ、黒の亡霊!!ウォーレンの亡霊と戦っているみたいで、マジで楽しかったよ!!」

そう言いながら魔力を溜めるバルトマン。

「………だが、もういい。奴のスタイルをマネした所で奴にはなれん。これで終わりにする」

斧に電気が帯び、更に膨れ上がっていく。

「そりゃそうだ。結局の所、お前を正気に戻すためになった様なものだしな………俺は先輩じゃない。………けど」
『ラグナルフォーム』

双銃が消え、刀が現れる。

『マスターはやっぱり私じゃないと』

「だな、俺の相棒|(デバイス)はラグナルだけだ」
「アタシも忘れんな!!」

そう言って現れたのは赤い小さな少女アギトだ。

「そうだったな、頼むぞ、ラグナル、アギト」

『はい!』
「任せろ!」

「「ユニゾン、イン!!」」

アギトとユニゾンした事により、俺の髪が赤くなった。

「今度はユニゾンデバイスか!?いいねいいね!!最終決戦はこうでなくちゃ!!」

「今までの因縁もこれで全て終わらせる!!」
「さあ、殺りあおうぜ黒の亡霊!!」

そして再び2人が激突する………









「また始まったね………」

「そうみたいだな」

そんな2人の戦いをスカリエッティとゼストが並んで見ている。

『全く、私の支配を断ち切られるとはね………いくらコアに損傷があるからといってありえないのだが………流石、常識じゃ測れない男だね』

そんな2人にディスプレイ越しに話しかけるクレイン。
零治とバルトマンが互いの砲撃魔法をぶつけた辺りでクアットロのISを解除し、現れたクレイン。

その時には既にマリアージュは止まり、クレインの送り出したブラックサレナもクレインの指示で残り全て撤退した。

『今回の計画も失敗に終わり、これは私も大目玉かな?』

「にしては余裕だね。………まあそれも杞憂に終わるだろうけどね」
「どういう事だ?」

そんなスカリエッティの言葉をゼストが問いかけた。

「私も過去を清算すると言う事さ。今、あの老人の所へドゥーエが向かっている。君が起こした事件を利用させてもらったよ」
『ほぅ………』

そんなスカリエッティの言葉を聞いても特に感情を表に出さないクレイン。

「………余裕そうだね」

『それはそうさ。既に老人達などこの世には居ないのだからね』

「「何………!?」」

そんな時、スカリエッティに連絡は入った。

『ドクター!!』

「ウーノかい?」

『ただいまドゥーエから連絡がありました、老人達は既に何者かの手で………』

その連絡に驚くスカリエッティ。そして睨みながらディスプレイを見た。

「………君は一体何者だい?目的は何だい?」

『無限の欲望、昔の君と同じさ。全ての事を知りたい、試したい。そのために私は研究している』

「君は………もしや………」

『さて、これ以上は無意味かな。私も忙しい身でね、これで失礼するよ』

そう言って通信を切るクレイン。

『ドクター………』

「彼は昔の私に似すぎている………まさか………」

「スカリエッティ………」

『ドクター、今は………』

「そうだね、考えるのは後だ。戦闘は彼等に任せて、私達はイクスヴェリア君の方を」

『はい、ドクター』

そう言ってスカリエッティはシャイデの所へ向かった………












「はああああ!!」
「あああああ!!」

斧と刀が交差する。

「魔王炎撃波!!」
「業魔雷撃斬!!」

炎と雷がぶつかり合う。

「翔凰烈火!!」
「ボルティックブレード!!」

今度は炎の鳥と雷の斬撃がぶつかる。

「いいぞ、もっとだもっと!!」

そんな戦いにバルトマンは満足そうに大声で笑う。
対して零治は冷静に次の技を繰り出した。

「魔神連牙斬!」

魔神剣を連続で繰り出す零治。

「ボルティックランサー!!」

それをスフィアで相殺するバルトマン。
相変わらず戦闘は平行線で進む。

「今度はこっちから行くぞ、亡霊!!」

そう言って斧に魔力を溜めるバルトマン。
バルトマンの方が先にカードを切ってきた。

「雷獄瞬殺、ジェノサイドブレイカー!!」

神崎を襲った巨大な斬撃を作り出すバルトマン。

「くっ、ラグナル、アギト!!」

『『はい!(おう!)』』

「フルドライブ!」

『『オーバーリミッツ!!』』

すかさず、フルドライブする零治。
そして刀が光輝いた。

「斬空天翔剣!!」

零治も負けじと光輝く刀を作り出した。

「はあああああ!!」
「であああああ!!」

光輝く刀と巨大な雷撃の斬撃がぶつかり合う。
暫くぶつかり合っていたが………

「負けて………たまるか!!」

零治が見事に斬り裂いた。

「ハハハハハハ!!!まさか斬り裂かれるとは思ってなかったぞ!!」

『本当に強い………』
『ウォーレンって奴は本当に強い魔導師だったんだな………』

「俺の今出せる最高の技なんだがな………」
「お前、名前は何て言うんだっけか?いつまでも亡霊と呼ぶのは失礼だと思ってな………」

「有栖零治だ」

「零治か………いいぜ、お前の強さに敬意を表して俺も最高の技でお前を殺そう。今までこれを使ったのはウォーレンだけだ」

そう言って体全体に魔力を集中させる。

「俺の全ての魔力を集束させる一撃………」

完全に集中し終わるとフルドライブ状態の様に体全体が光始めるバルトマン。

「ワールド・オブ・ゼロ。破壊では無く、全てを無にする一撃………零治、お前にこれを止められるか?」

斧を構えるバルトマン。
その構えから今まで感じた事が無い威圧感が俺を襲う。

『れ、零治………』
『あの魔力量、普通じゃ無いです………』

「………だったら今自分に出来る最高の攻撃を………斬空刃無塵衝………やるぞ」

『マスター!!今まで一度たりとも成功したことが無いんですよ!!』

「だが、やるしかない」

『それに、あの状態で構えているとなると、打撃から繋げる事は不可能です』

「それでいい、抜刀だけで何とかする」

そう言って刀を鞘に戻す。

『マスター!!』

『やろう零治』
『アギト!?』

『どんな技かよく分からないけど出来るよ私達なら!!』

「ああ、やれるさ、俺達なら!!」

『………分かりました、私も覚悟を決めます!!』

ラグナルとアギトと共に覚悟を決め、体勢を低くする。

「いいぜ、お互い最高の一撃だ………これで!!」

「終わりにする!!」

そう言って互いに空を蹴った………












5年前………

「何だその無茶苦茶な技は!?そんな技使える奴いんのかよ!?」

いつも訓練の場所。
先輩の驚く声が響き渡った。

「まあそうなんですけど………」

確かに凄い技だと思ってたけど、そんなに驚く程なのか………?

「その説明からすると、無数の斬撃を空間全体に出すって事で間違い無いよな?」

「ええ、大体そんな感じです」

「そんな無数の斬撃を一気に出す事もそれをコントロールするのも相当の腕が無いと不可能だぜ。しかも空間全体になんて………」

マジかよ………
アスベルって実はテイルズキャラで一番強いんじゃね?

「使うとしたらどうすればいいと思います?」

「う〜ん、お前のレアスキルと高速移動の魔法を同時に使って、複数の場所から斬撃を繰り出せば或いは………まあ別物の技になりそうだけどな………まあ0では無いと思うから日々精進すれば良いんじゃね?」












「あの時から俺はどれだけ強くなったか………先輩、行きます!!」

『ソニックムーブ!!』

スピードに乗り、更に速くなる零治。
しかし、バルトマンの方が速く、先にバルトマンの斧が零治に向けて振り下ろされた。

「終わりだ!!」

振り下ろされるのと同時に凄まじい魔力が放出されるバルトマン。
しかし、その一撃は当たる事無く、空の雲を全て消し去った。

「消えた……だと!?」

「無数の場所からの一斉抜刀………」

先ず、一回目の抜刀で、大量の斬撃をくり出す。

「ぐっ!?」

『二回目!!』

ラグナルの声と共にすかさず、バルトマンの左上から抜刀。

『三回目!!』

今度はその右下からアギトの声と共に抜刀。

『四回目!!』

再びラグナルと共に、今度は右上から抜刀。

「そして五回目!!」

今度は零治自身の声と共に、反対側の左下から抜刀。

「『『そしてラスト!!』』」

三人の声が重なり、最後にバルトマンの目の前に立ち、抜刀で斬り抜けた。
そして………

「斬空刃無塵衝!!」

高速移動、ジャンプによる5連続の大量の斬撃は時間差がありながら全てバルトマンを斬り裂き………

「ぐあああああああああ!!!」

バルトマンは叫び声と共に、地面に落ちていった………













「はあ………はあ………はあ………」

地面に下りた零治だったが、無理な高速移動とジャンプにより、体中がボロボロだった。

「アギト………大丈夫か?」
『体中が痛いよ………』
「取り敢えず解くぞ、ユニゾンアウト」

ユニゾンを解くとアギトが真っ直ぐ俺の右肩に向かいへたり込んだ。

「お疲れ」

「零治こそ………」

『マスター、私は!?』

「当然、ありがとうラグナル」

『わ、分かれば良いんです………』

「さて、後はバルトマンだけだな………」

そう思い、バルトマンに近づく。
バルトマンは斧を手放しており、大の字で寝ていた。

「くははは、俺の負けだ。もう体が動かねえや。殺せよ」

相変わらず笑ったまま言うバルトマン。

「嫌だね、俺は元々お前を殺すために戦った訳じゃない。お前が危険な奴だから止めただけだ」

「………全く、ウォーレンと同じ事を言いやがって………」

ははっ、と笑った後、少し寂しそうな顔をするバルトマン。

「本当に惜しい男を無くしたぜ………お前より低ランクの魔力量しか無い奴だったが戦い方が面白かった………あんな奴は初めてだった………」

その言い方はまるで親友の事を話すかの様な感じだった。

「そしてその相棒にも負けちまうとはな………だがそんなに悪くない気分だ」

「バルトマン………」

「さあ好きにしな、俺を殺すも捕まえるも好きにしろ」

『悪いけどそれはさせないよ』

そんな声と共にブラックサレナが転移してきた。

「くっ、離しやがれ!!クレイン!!」

「!?待て!!」

ブラックサレナ達がバルトマンを担いだので零治は慌てて叫んだが、バルトマンは連れていかれてしまった。

「くそっ!?」

追いかけようと空を飛ぼうとした瞬間、一体のブラックサレナがこっちを向き、砲撃魔法を放ってきた。

「やばっ!?」

痛みにより体が思うように動かない。

「くそっ………!!」

なんちゃってプロテクションを張り、刀を前に構え、少しでもダメージを押さえようとしたが、あまり効果が無いだろう。
せめてアギトだけでも逃がしたかったが間に合いそうに無い。

(頼むぞ、俺の運!!)

そんな神頼みをした瞬間、零治の前に3人の人影が現れた。

「レイはやらせない!」
「もうあんな思いなんて嫌だ!」
「我等がレイを守る!」

星が、ライが、夜美が零治の前に立ちはだかった。

「だから………消えろ!!」

そしてブラックサレナに巨大な魔力の槍が突き刺さる。

「エンシェント………マトリクス!!」

上から凄いスピードで落ちてきた優理は蹴りの構えのまま、槍に落ちていき、更に奥に突き刺した。
それにより大きな爆発が起こり、ブラックサレナは完全に消え去った。

「星…ライ…夜美…優理…お前ら………」

そこまで言った瞬間、星、ライ、夜美が一斉に俺に抱きついてきた。
その勢いに負け、浮かんだまま倒れる。

「お前等、俺も結構ダメージを………」

バシーン!!!

そこまで言うと、星からビンタを食らった。

「バカ!!一体どれだけ悲しかったと思ったんですか!!私は本当に………」

バシーン!!

次にライにもビンタを食らった。

「僕、もうレイを信じないよ、この嘘つき!!」

バシーン!!

最後に夜美にビンタを食らった。

「このバカ者が………」
「………ごめん………心配かけた」

そう言って3人まとめて抱きしめると、小さな子供みたいに大泣きする3人。
後ろで不満そうに見ていた優理もこの3人が大泣きするとは思ってなかったのか、どうすれば分からず、キョロキョロしている………

「本当に………ごめんな………」

暫く3人はその場でずっと泣いていた………













『昨日の事件から翌日、半壊した街にやっと市民の皆がそれぞれ自分の家へと帰っていきます………』

リビングにあるテレビからニュースが流れる。
あの後俺達はこっちに向かってきたちびっ子とギアーズ姉妹になのは達が向かっていると言われ、直ぐ様全員スカさんのアジトに転移した。

まあ全員だった為、ここに………

「ん?何だ?」

せんべいをかじりついている神崎なんかもいたり………

「他の皆は?」
「女性人は風呂。桐谷は再び寝るって寝室にってさっきクアットロに聞いてたぞ。………にしても凄いなこのメンツは………」

神崎の言いたい事も分かる。
原作じゃありえない集まりだもんな………

「で、これをしたのが零治だって事か………」
「別にしたくてした訳じゃない。俺だってやれれば星達と平凡に過ごしたかったさ」
「まあ零治ならそうだろうな」

そう言ってお茶をすする神崎。

「シャイデ先生から聞いたよ。前の事件の事も、零治が先輩と言う人の事も。今回の事件は本質も」
「そうか………で、どうするんだ本局勤務の魔導師さん、ここには次元犯罪者のスカさんもいるぜ?」
「………別に俺は何もしないさ。俺の任務はバルトマンの再逮捕だからさ」

コイツ、かっこいいなぁ………

「それよりどうだった?女の子達の看病は?」
「………もう勘弁して欲しい………」

実は俺が目覚めたのはついさっき。静かに寝れたのは深夜の3時頃。
アーベントの過剰利用、その後、俺自身最大の大技二発。

また動けなくなったのは言うまでもない。
それによって星とライと夜美は看病と言ってずっと部屋から離れないし、優理とキャロは何故か俺の寝ているベットに潜り込んで寝てたし、チビッ子達は俺の部屋ではしゃぐし、キリエが手料理作ってきて地獄を見たり………アミタの話でなのは達の事をどうするか頭を使わされたりと休んだ気にならなかった。

全く、お前逹も戦っていたんだから休めばいいのによ………

「まあ一番驚いたのが、俺を避けていた加奈が色々手を焼いてくれた事かな………」
「そうか………」

笑顔で笑う神崎だったが、その笑顔が少し寂しそうに見えた。

「なあ神崎、お前は………」

「ただいまーっス!!って何で変態が居るっスか!?」

元気な声と共にゾロゾロとこの家の姉妹が帰ってきたが、神崎の声を聞いて身構えた。

「貴様、同じクラスメイトだとしても知られたからには………」
「待て、大丈夫だ。神崎は敵じゃない!!」

俺が慌てて事情を説明したおかげで戦闘にはならなかったが、彼女達の疑いの目は晴れない。

「まあそれは仕方がないよ。だけど今のスカリエッティを捕まえる気も無いし、暴れるつもりも無いよ」

「まあならいいけどよ………」

「それより風呂に入りたい………」

「私も!!」

ディエチを先頭にセインの賛同と共にゾロゾロと風呂場に向かう姉妹達。
………ってあれ?

「なあディエチ、トーレさんは?」

「トーレ姉なら………」












「いやぁ………ドジったドジった!」

椅子に座り、笑いながら左手で頭を掻く、ティーダ。

「いいから動かないで!!」

ティアナに頭を叩かれ、妹の言うことを素直に聞く。

「全く、あの時はどうなるかと思ったぞ………」

そんなティーダの反対側に椅子に座って苦笑いするトーレ。

ビルのガレキに埋もれそうになったティーダだったが、フェリアの咄嗟に展開したナイフの爆発により、ガレキに埋もれる事が無かったが、爆発に巻き込まれた為、体の至る所に包帯が巻かれ、右腕は爆発で残って降ってきたガレキにより、完全に折れてしまった。

「本当にトーレさん、ありがとうございました」

「いや、構わん。私もランスターには助けられたからな」

実はティーダの家にティーダを運んだのはトーレだった。
病院は市民の怪我人や他の管理局の魔導師で一杯であり、何処も空いていなかった。
なので取り敢えず直接家へ送ったのだった。

のだが………

(いい加減私もいつまでもいるわけには………)

「いやトーレさん、ランスターだと俺かティアナか分からないですよ」

「むぅ………」

「そうですね、是非名前で呼んでください!」

ティアナも嬉しそうにトーレに迫る。

「なら………ティアナにティーダ」

「「はい」」

兄妹揃って嬉しそうに答えた。

「さて、そろそろ………」

「あっ、せっかくなら泊まっていって下さい!!私もお兄ちゃんもそっちの方が嬉しいから」

「いや、だが………」

「まあいいじゃ無いですか、うまいワインありますよ」

「お世話になる」

酒には抗えないトーレだった………










「で、何かティアナちゃんにかなり気に入られたらしく、泊まっていくと連絡がありました」
「ああ………」

ティーダさん………

「?でも何で君達は遅れたんだ?」

「巡回をしている管理局員の目から逃げるのに苦労した………」

「ていうかこのアホのせいだけどな」

神崎の問いにフェリアが答え、ノーヴェが言葉を足すように隣にいたウェンディを殴った。

「いたっ!?だって疲れたんスから空飛んで帰りたいじゃないっスか………」

「いや、空の魔導師だっているだろ………」

「そこは私のエリアルボードに隠れれば………」

「ボードだけで浮いてるってどう考えても不自然だろ………」

そんなウェンディに呆れながら突っ込む神崎と零治。

「そういう事で一旦隠れて休んだ後、帰ってきたんだ………」

「お疲れ様………取り敢えず風呂にでも入ってゆっくり休めよ」

「ああ、そうさせてもらう………」

「痛いっス!!」

「うるせえ!!一番の問題はやっぱりお前が………」

「もう2人共お風呂行くよ!!」

ワイワイとダメっ子達が騒ぐ中、上の姉、フェリアとディエチはさっさと風呂に行ってしまった。

「お前らもうるさいからさっさと行け………」

未だに騒ぐ3人を無理やり部屋の外に追い出し、やっとリビングは静かになった………











「なあ零治、これからどうなる………?」

暫く静かにテレビを見ていた俺と神崎だが、ふと、神崎が話かけてきた。

「これから?」

「これから先の事だよ。あの脳みそ達の行動から冥王教団まで」

「そんなの知るか、なるようになるさ」

「楽天的だな」

「違うよ、元々の人生がそうだったろうが。未来なんて分からない、何が起こるか分からない。お前だってこの世界はアニメの世界とは違うと認識したんじゃないのか?」

「………そうだった………ごめん、バルトマンと戦って不安になったのかも………あれが初めての完璧な負けだったから………」

管理局最強のSSSランク魔導師だもんな………
確かに自分より強い相手なんて相手にしたこと無かったんだろう………

「負けるのは辛いね………」

「まあな………」

そう言って再びテレビを見る………
暫くして再び神崎の方から口を開いた。

「零治、お前は加奈の事をどう思ってるんだ………?」

そんな言葉が神崎の口から放たれた。 
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