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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第19話

「暑い。」

麻生恭介は炎天下の中一人で散歩をしながら呟く。
今は八月、一年の中で一番温度が上がる月であり、さらに麻生の服装は黒を主体にしているので熱の吸収量が半端なく多いのだ。
それが分かっているのに服装は変えず、なおかつ散歩も止めない。
どうせ部屋に居ても寝る以外する事がないので、暑くても散歩に出かけているという訳だ。
麻生の能力を使えば気温などを制御する事が出来るが、そんな事に能力を使うのも何だかもったいない気がするのでやめておく。
そして、裏路地に入っていく。
表通りだと日光に当たり暑く感じるが、裏路地なら影も多く少しだけ涼しく感じる。
裏路地に入ると不良達に絡まれる可能性が高くなるが暑さに比べればどうという事はない。
そのまま裏路地を歩いていると何人かとすれ違う。
普段、こんな裏路地にこれだけの人とすれ違う事なんて滅多にない事なのだが、それにしても今回は異常すれ違う人が多い。
麻生は知らぬ内に面倒事に巻き込まれたのか?と妙な不安を抱いていると目の前に見知った顔がこちらに歩いて来ていた。

「あら、麻生さんではないですか。」

「こんな裏路地で会うとはな。」

白井黒子とその後ろに御坂美琴がこちらに歩いて来ていたが、白井の足元に空き缶が転がっていて白井はそれに気づかず空き缶を踏んで後ろに転んでしまう。

「ちょ、ちょっと大丈夫!?」

ゴチン!!といい音が鳴ったので美琴は白井に声をかけ麻生は呆れた顔をしている。
すると、白井は何かを見つけたのか室外機と地面の隙間から封筒を拾う。
拾い上げると中からカードが落ちる。
麻生はそれを拾う。

「なにそれ?」

「マネーカードみたいだな。」

「どうしてこんな裏路地にマネーカードがありますの?」

「俺に聞くな。
 こう言った事は風紀委員(おまえたち)が一番知っているんじゃないのか?」

なぜ裏路地にマネーカードがあるか、それを調べる為に風紀委員(ジャッジメント)の支部に向かう。
麻生も興味があるのか一緒についてく。
部屋の中には初春も居て白井がマネーカードについて話すと、初春はパソコンの電源を入れてそれについて報告する。

「ここ数日、第七学区のあちこちでマネーカードを拾ったという報告がきてるんです。」

「そんな話、わたくし聞いていませんわよ?」

「貨幣を故意に遺棄・破損する事は禁止されていますがマネーカードは対象外なので特に通達していません。
 カードの金額は下は千円くらいから上は五万円を超えるものまで、決まって人通りの少ない道に置かれています。
 宝探し感覚で裏道をうろつく人も多いみたいです。
 ですが、今度はカードを奪い合ったり武装無能力集団(スキルアウト)のなわばりに入り込んだ、学生が絡まれたりしています。」

「放っておく訳にもいかなくなってきた・・と。
 お姉様、残念ですがデートはまた今度・・・・」

「ううん、私一人で行ってくるから気にしなくていいわよ。」

白井は寂しそうな顔をしていたが美琴は気にせずそのまま部屋を出ていく。
麻生も話を聞いて興味をなくしたのか何も言わず部屋から出て行き、散歩しながら持っているマネーカードを見つめる。

(何の為にこんな事を・・・・)

そう考えている自分に気づきすぐにその考えを振り払う。
麻生は最近人助けをするようになってきている。
それは自発的な物ではなく他人に頼まれたという事もあるがそれにしても最近は特に多くなった。
今でも自分とは全く関係なくさらに誰にでも頼まれたのでもない、自分から首を突っ込もうとしたのだ。

(これじゃあまるで・・・・)

あの時の自分に戻ってるみたいじゃないか、と誰に言う訳でもなく自分に言う訳でもない麻生はただ夕暮れの空を見上げて呟く。
けど、絶対にあの時の自分に戻る事は絶対にできない。
知ってしまったから世界の姿を、その上に住む人の闇と言う物を。
それを知っていてもそれでもあの時の自分に確実に近づいている。
原因は一つしかなかった。

「上条当麻。」

彼に出会ってしまった時が全ての始まりだったのかもしれない。
上条は昔の麻生とよく似ていた。
だからこそ上条を見ていて無性に腹が立つのだ。
腹が立つのにそれでも何故か上条を助けてしまう。
麻生は無駄な事を考えているな、と思考を中断して寮に帰っていく。
そして五日間麻生はずっとベットの上で寝転がっていた。
体調が悪くなったとかそう言った事ではなくただ気分が悪いのだ。
この五日間で何回か誰かがドアを叩く音がしたが麻生は全部無視した。
おそらく上条なのだろうと適当に考えていた。

(どうなっているんだよ。)

自分に問いかけても答えが返ってくるわけでもなく、ようやくベットから身を起こすと麻生は散歩に出かける。
いつもの通り生活していれば元の調子に戻ると思っていた。
だが夜になっても調子は戻らなかった、むしろ悪くなったかもしれない。
麻生は苛立ちながら舌打ちをした時だった、大きな爆発音が聞こえた。
麻生は音のする方を見る、どうやら場所はすぐ近くの様だ。
何かが起こっている、いつもならすぐに振り返り寮に戻るのだがなぜかその足は自然と音の方に向かっていた。
爆発した所から離れた所で目を千里眼に変えて何が起こっているか確認する。
麻生は見た、麻生と同じ白髪の男が御坂美琴の足を引きちぎる所を。
美琴はその男に足を引きちぎられてもひるむことなく電撃の槍を男に撃ちこむ、その威力は確実に人の意識を刈り取るほどの威力を秘めていた。
だが電撃の槍が男に当たると同時に美琴の元に反射される。
麻生はこの一部始終しか見ていないが分かった。
あの男相手に美琴は勝てないと。
今ならまだ間に合う、麻生の力を使えばあの現場に割って入って美琴を助ける事は出来るだろう。
それが分かっているのに麻生は動けない、動かないのだ(・・・・・・)
美琴は麻生に助けを求めたのか?
誰かが美琴を助けてやってくれと麻生に助けを求めたのか?
麻生は動かない、誰かが助けを求めない限りは。
足を引きちぎられ電撃の槍を浴びた美琴は何かを探すかのように地面をはえずりまわっている。
その光景を見た男は飽きたのか、近くにある電車に近づきそれを軽く叩く。
何キロあるか分からない電車が軽々と浮かぶとそれは美琴の頭上に落ちていく。
美琴は何かを見つけたのかギュッと何かを抱きしめるとその瞬間、電車に押しつぶされた。
誰が見ても分かる、美琴は死んだと。

「・・・・・・・」

麻生は先ほどよりいらついていた。
誰かの頼みなければ動けない自分にいらついているのか、それとも別の理由なのかは分からなかった。
その直後だった。

「ああああああああああああ!!!!!!!」

そんな叫び声と共に先ほど電車に潰された御坂美琴が男に向かって走り出していた。
麻生は何がどうなっているのか全く分からなかった、だが二人の戦いが再び始まる。
美琴は電磁力を使い周りの砂鉄を利用して男を砂鉄で包み込む。
その攻撃に一切の躊躇いがなかったが突然砂鉄の檻が突如崩れていった。

(あいつの能力は一体・・・・)

美琴は先ほど引きちぎられた足を見つけ再び叫ぶと同時に周りにあった線路のレールを電磁力で操る。
その数はおよそ五〇を超えていた。
そしてレールの雨がその男に降り注ぐが男に触れた途端そのレールが美琴に襲いかかる。
何とか横に移動してかわすことが出来たがその表情は驚きと困惑が混ざっていた。
男は何かが分かったのか悪魔のような笑みを浮かべ美琴に近づこうとする。
だが、美琴の構えを見てその足を止める。
右手を突きだし親指にはコインが乗っていた。
超電磁砲(レールガン)
美琴の異名であり切り札でもある。
美琴と男が何か話をしているが麻生の位置からでは何を話しているか分からなかった。
だが、最後の言葉だけは聞こえた。

「そんなモノの為にあの子を殺したのか!!!!!」

叫びと共に一切の躊躇いのない全力の超電磁砲(レールガン)が放たれる。
しかし、男に触れた途端その超電磁砲ですら、はね返され美琴の顔の真横を通り過ぎていく。
そして、今度はこちらの番だと言わんばかりに両手を広げるが麻生は気づいた、そして男も美琴も気づく。
美琴の後ろに何人もの美琴達が立っている事に。
美琴と同じ制服を着て、髪の長さも色も全く一緒だった。
ただ一つ違う所があるとすれば暗視ゴーグルをつけている所だけだった。
美琴達と男が何かを話すと男は美琴に近づき何かを話してそのまま立ち去って行った。





絶対能力進化(レベル6シフト)か・・・・」

麻生はあの後、美琴達に話しかける事無く寮に戻った。
そして、少し躊躇ったが星に裏で何が起こっているかを教えて貰った。
麻生は星に聞くのは好きではない。
ある事柄について聞いたらその答えがちゃんと返ってくるのだが、それに伴い知りたくもない情報まで送られてくるのだ。
実際に絶対能力進化(レベル6シフト)について情報が教えられた時、あの美琴のクローン達が実験動物のように扱われたりと知りたくない情報まで知ってしまったのだ。
吸血殺し(ディープブラッド)の時も同様だった。
そもそも麻生は星が嫌いだ。
こんな能力を与え、見たくもないモノを見せた星が嫌いなのだ。

「こうやって星の知識を頼るのはこれで最後だ。」

そう心に決めた。
そしてもう一つ心に決める。
これ以上人に関わらない。
絶対能力進化(レベル6シフト)については大体の事は分かった。
それを知っても助けようと思わなかった。
麻生恭介は上条当麻ではない。
上条ならこれを知ったら真っ先に美琴の元へ行き事情を聞くだろう。
麻生恭介は違う。
本来の麻生は頼まれなかったら絶対にしないし頼まれてもほとんど断ってしまう。
ここ数か月で何回か人助けはしたのはあの上条という存在が頭の隅にあったからだ。
あの男なら必ず助ける、と。
それに気づいた麻生は思ったのだ。

(こんなの麻生恭介じゃない。
 俺はあいつのようにはなれない。)

麻生はベッドから立ち上がりいつもの様に散歩に出かける。
例え美琴が麻生に助けを求めても麻生は断るだろう。
それが麻生恭介なのだ。
いつもの街並み、いつもの人混み、その中で麻生は歩いていた。
目的もなくただふらふらと。
しかし、異変は突然起こった。
突然音が消え、人がいなくなったのだ。

(どうなっている。)

麻生は周りを見渡すが誰も居ない。
ルーンによる人払いだったらそれが発動した瞬間は麻生なら感じ取ることが出来る。
なのに、感じるどころか違和感すら感じなかったのだ。

「その生き方でいいのか?」

声は突然後ろから聞こえた。
麻生は後ろを振り返るが人影は見当たらなかった。
しかし、人ではなく猫がすぐ前に座っていた。

「もう一度聞く、その生き方でいいのか?」

声の主はこの猫で間違いないようだ。
麻生は警戒しながら猫に質問を返す。
この猫が普通の猫なら麻生も気には留めなかったのだが、この猫からはとてつもない存在感を感じるのだ。

「お前はどこかの魔術師の使い魔かなにかか?」

麻生が質問を質問で返したのが悪かったのか、少しだけ不機嫌そうな(猫なのでそこら辺は分からないが)顔をするが麻生の質問に答える。

「使い魔という概念はあっている。
 しかし、魔術師の使い魔ではない。」

「つまり、お前は誰かの使い魔って事か。」

「それが人とは限らないがな。
 そんな事よりこちらの質問に答えてもらう。
 お前はその生き方でいいのか?」

「どういう事だ。」

「そのままの意味だ。
 お前はさっきまで自分の生き方について迷っていただろう?」

その言葉を聞いて麻生は左手に剣を具現化させその剣先を猫に向ける。
麻生はさっきまで考えていた事は誰にも話していない、なのにこの猫は知っていたのだ。
猫は剣先を向けられていても全く動じなかった。

「そう警戒するな。
 俺は話をしに来ただけだ。
 その生き方でいいのか、とな。」

「当たり前だ、これは他ならぬ俺が決めた事だからだ。」

「なら、どうしてお前はまだ迷っているだ?」

麻生は言葉が出なかった。
自分でも気づかなかった事にこの猫は気付いているのだから。

「お前はあの幻想殺しの生き方に惹かれている。
 あの男のように生きてみたいと思っているのにそれが出来ないと分かっている。
 その矛盾がお前を迷わせている。
 お前は本当は気づいていた筈だ、本当は自分がまだ迷っている事を。
 だが、気づかない振りをして諦めた、違うか?」

「黙れッ!!!!」

麻生は剣を地面に叩きつけ衝撃波を生み出しそれが猫に向かっていく。
だが、猫に当たる直前衝撃波が二つに割れてしまう。

「ふむ、図星の様だな。」

それだけ言うと猫は振り返りどこかへ行く。
そして去り際に言った。

「それでもその道を選ぶと言うならそれはそれで構わない。
 だが、どちらを選ぶにしろ選んでしまったらもう変える事は出来ないぞ。」

忠告のような言葉を残して猫は歩いていく。
すると音が突然復活する。
人も現れ、その人混みの中に猫は消えていった。
麻生は猫が言った言葉が頭の中で響き渡る。

(その生き方でいいのか?)

「何だよそれ、それじゃあまるで俺がこの生き方に納得していないみたいじゃないか。」

麻生は空を見上げて一人呟いた。 
 

 
後書き
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