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戦国異伝

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第二十四話 国友その十三


 そうしてだ。元康にさらに話すのであった。
「だが。妻や子を迎えてさらに大きくなってきた者は多く見てきた」
「だからこそなのですね」
「うむ、妻を迎えよ」
 また元康に話した。
「わかったのう」
「わかりました。それでは」
「いい妻を探しておく」
 ここで雪斎の顔が微笑みになった。
「そなたに相応しいのをのう」
「それがしが妻をですか」
「信じられぬか」
「はい、どうも」
「今はそうでも変わる」
 また微笑みと共に語る雪斎だった。
「実際に迎えればな」
「ううむ、そうなのですか」
「まあ妻を入れて悪いことはない」
 それは間違いないという言葉だった。
「わかったな。それではだ」
「果たして誰がそれがしの妻に」
「うむ。実は一人考えておる」
「どなたですか、それは」
「あれじゃ。関口のじゃ」
 こう聞くとだった。元康はすぐにその名を出した。
「瀬名殿ですか」
「うむ、あれをと考えておる」
「それはまた」
 瀬名とわかってだ。元康はここでまた驚くのだった。そのうえでの言葉だった。
「それがしとはかなり」
「歳が開いておるというのだな」
「はい、左様で」
「御主にはその方がいいと思ってじゃ」
「それで、でございますか」
「そうじゃ。御主はしっかりしておって我慢強い」
 既に元康のそうした性格はわかっているのであった。
「しかし溜め込むからのう」
「それを何とかする為にですか」
「瀬名じゃ。あれは心優しいからのう」
「それも聞いておりますが」
「だからよ。そなたには瀬名じゃ」
 雪斎はまた述べた。
「一番よい」
「では」
「話が決まればまた話す」
 こう弟子に告げた。
「楽しみにしておれ」
「わかり申した」
「そしてじゃ」
 雪斎の言葉が続けられていく。
「そろそろ用意しておくとするか」
「尾張へ攻め入る準備ですね」
「それを今から進めておく」
「殿にもお話をしてですね」
「ここは。そうじゃな」
 ここでだ。雪斎は考える顔になって述べた。
「殿だけではなくじゃ」
「氏真様もですね」
「あの方にもご出陣願おう」
 主だけでなく跡継ぎもだというのだ。
「そしてそのうえで兵の士気をあげねばのう」
「織田はそこまで強いと」
「そうじゃ。何度も言うが決して侮れぬ」
 繰り返しているだけに。そこには雪斎の確信があった。そして元康もまたそれがわかった。師がどれだけ織田を恐れているのかもだ。
「だからこそじゃ」
「それがしもまた先陣で」
「そういうことじゃ。よいな」
「それでは」
 駿河では見る者は見ていた。そうしてであった。
 尾張とその近辺でも動きがあった。そしてそれはそれぞれの者達の運命を決めるものでもあった。だがそれを知る者はいないのだった。


第二十四話   完


                 2011・1・21 
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