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戦国異伝

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第二十四話 国友その三


「吉兵衛殿と助直殿ならば無事殿を助けてくれましょう」
「よし、ではそなた等じゃ」
 信長は意を決した顔で頷いた。
「では。それではじゃ」
「はい、参りましょう」
「今より」
 こうしてであった。信長は村井と武井を連れてそのうえで屋敷に向かった。他の家臣達は柴田がこう命じたのであった。
「さて、我等はじゃ」
「ここで気楽に茶でも飲みますか」
 慶次がわざとこう言うのだった。
「これから」
「馬鹿を申せ。そんなことをしている場合か」
 柴田は彼の冗談にすぐに返した。
「そんなに茶が飲みたければ勝手に店でも行け」
「そんなのはありませぬが」
 慶次はここでもわざとだった。目の上に手をかざして周囲を見回して言うのであった。
「この村には」
「では諦めよ」
「ううむ、では昼寝でも」
「本当にそうしたら馬で踏み潰すぞ」
 また慶次に合わせる柴田であった。
「全く。御主は」
「いやいや、ほんの冗談でござる」
「冗談でも度が過ぎるわ」
 柴田はまた慶次を叱った。
「してじゃ。半分はこの村々を見回るのじゃ」
「して鉄砲をですな」
「しかと見ると」
「そうじゃ。そして残り半分は屋敷の前に集まるのじゃ」
 残り半分についても話すのだった。
「して殿に何かあればじゃ」
「その時にはでござるな」
「何が起こってもいいように」
「そこに侍ると」
「そうするぞ。よいな」
「はっ、それでは」
「その様に」
 皆柴田の言葉に頷きだった。すぐに半分ずつに分かれてだ。半分が村を見て回り残り半分が村の長の屋敷の前に立った。そうしたのであった。
 それを屋敷の門から見てだ。信長も感心して言うのであった。
「ふむ、権六じゃな」
「あれはでござるな」
「あの仕切りは」
「あれでよい。わかっておるわ」
 こう村井と武井にも話すのだった。
「融通は利かぬが仕切りは見事じゃ」
「権六殿が言えば誰もが聞きます故」
「ああなりますな」
「慶次もあ奴の言うことは素直に聞く」
 信長はこうも言った。
「又左にはすぐにあれこれ言ってやんちゃをするがのう」
「あの悪戯小僧も権六殿の前では」
「まさに子供ですな」
「そうじゃ。やはり権六は連れてきてよかった」
 柴田に対する賞賛の言葉であった。
「今回な」
「左様ですか」
「ここにですか」
「不器用な男だがそれもまたいい」
 柴田にだ。信長は明らかな愛情も見せていた。そうしてそのうえでだ。こうも言うのであった。
「かえってのう」
「確かに。実直ですから」
「それがああしたまとめることにも出ています」
「あれが権六のよいところよ」
 満足した言葉も出すのだった。
「誰にもそれぞれのよいところがある」
「だからですか」
「権六殿もこの度の上洛に」
「本音を言えば爺達も連れて行きたかった」
 平手達もだというのだ。
「しかしのう。留守番は置かなければならんからのう」
「そうです。斉藤がいますし」
「それに今川も」
「今川もそろそろ動くだろうな」
 信長はここでこうも言った。 
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