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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第85話 ハムさん冀州に現る

劉備が関羽と義勇軍を率いて幽州と冀州の国境に向けて出立しました。

桃香が赴任する安喜県は私が本拠地にしている常山郡の隣の郡の中山郡内の県です。

私の目がある程度届く範囲なので、桃香が問題を起こせば直ぐに対処できます。

北郷の労役場所は考えた末、私の勢力下である常山郡、清河国から遠ざけて、鉅鹿郡に決めました。

特に、常山郡は兵器の開発を行っている場所なので、彼を近づけるわけにはいきません。

鉅鹿郡は常山郡と清河国の間にあるので、彼が問題を起こしても直ぐに対処できます。

北郷の労役内容は女っ気の全く無い石切り場での肉体労働です。

私の所領内の賦役、労役はその人物にあった内容を担当させることになっていますし、衣食住も整備しているので、他領に比べれば随分、快適な環境だと考えています。

もちろん労務内容によって賃金の額は変わりますが、彼の場合は無給なので関係ないでしょう。

他領の賦役や労役を調査したのですが、それらは過酷かつ劣悪な環境での労働を強いられている状況でした。

いずれ私の息の掛かった者を大守に据えるつもりなので、そんな行為も長くは続かないでしょう。

桃香の必死の懇願で彼を殺すの取りやめましたが、殺すべきだったのではと悩むことがあります。

彼を生かしたことが後の災いにならないかと心配でなりません。

桃香と約束した以上、卑劣な真似で殺すつもりはありません。

ですが、彼が問題を起こせば話は別です。

揚羽に命じて司馬家の者を監視役として送り込んでいます。

真面目に労役を全うすれば、無事に桃香の元に帰しますが、問題を起こせば容赦なく息の根を止めます。

桃香と北郷の件に一先ず目処が立ったので、人事を一部変更することにしました。

趙雲を「鉅鹿郡丞」

太史慈を「司馬」

楽進を「常山郡都尉」

榮奈から近く帰参するという文を貰いました。

彼女が帰参したら、美羽のために骨を折ってくれた彼女に鉅鹿郡都尉の地位を与えようと思っています。

星、凪、榮奈の任官の上奏文は朝廷に送付済みなので、後日正式な内示が来るでしょう。

美里、慶里、真悠、紗綾は私の知識を元に領地改革を行うための補佐をして貰おうと思っています。

とはいえ、官位がないと彼女達もいろいろ不便だと思い、現在熟慮中です。

領地改革の財源は常山郡、鉅鹿郡、清河国の税収の中から捻出しようと思っています。





そうこうしている内に桃香と出会ったあの日から、1週間を過ぎました。

労役に就いている北郷の近況報告は逐次入ってきています。

北郷が目を覚ましたとき、彼には「天の御使い」を語った罪で労役につくように命じてあります。

半年の期間を向かえれば、桃香の元に帰してやると彼に伝えたら、彼は呆然自失の状態でした。

彼は石切り場に送られても数日間は労役をさぼっていたそうです。

そのためにかなり手ひどく現場監督に絞られたそうですが、今は真面目に労役に従事しているそうです。

執務室で仕事をしていると、揚羽が部屋に入ってきました。

「正宗様、幽州の郡大守が面会を願い出ておりますが、如何なさいますか?」

揚羽が来客を伝えてきました。

「郡大守が私に何の用なんだ?」

私は訝しむ表情を揚羽に向けました。

「白蓮殿ですよ」

揚羽は軽くと微笑んで言いました。

「白蓮? 通してくれ。白蓮に相談したいことがあったから調度良い。長話になると思うから中庭に通してくれ。茶の用意も頼む。揚羽と冥琳も同席してくれないか」

「畏まりました。それでは冥琳殿に伝えておきますね」

揚羽は礼をすると執務室から出て行きました。






私が中庭に移動して、しばらくすると揚羽、冥琳、白蓮がやってきました。

「正宗君、久しぶりだね。それに王の爵位に奉じられたそうじゃないか!」

白蓮は満面の笑みで私の出世を祝ってくれていました。

「白蓮、ありがとう。君も大守に出世していたんだね。おめでとう」

私は心の底から白蓮の出世を喜びました。

「アハハ、正宗君に比べたらまだまだだよ」

白蓮は照れて私から視線を反らしました。

「正宗様、立ち話もなんですから、席につきませんか」

揚羽が私と白蓮の話に割り込んできました。

「そうだな・・・・・・。白蓮、揚羽、冥琳、席に座ってくれ」

私は3人に席を勧めると自分も席に座りました。

「あのさ・・・・・・。正宗君、桃香の件、ありがとう」

白蓮は席に就くなり、彼女はバツが悪そうに言いました。

彼女の任地は郡なので、私の城に向かうには桃香の任地を通るはずです。

もしかしたら桃香に会ったでしょうか?

「桃香の県尉の件のことを言っているのかい。それなら、白蓮が礼を言うことじゃないだろ」

私は優しく言いました。

「ここに来る途中、桃香が正宗君に仕事を世話して貰ったと聞いたんだ。本当は私が世話して上げなくちゃいけなかったんじゃないかなと思っててさ・・・・・・」

白蓮は顔を俯いて小声で言いました。

「白蓮も桃香の件では苦労しただろう。だから、気にしなくていいよ」

「正宗君は優しいね・・・・・・」

白蓮は頬を染めて私を見ていました。

「桃香の話は止めないか。胃痛がしてくる」

「正宗君、もしかして桃香が迷惑かけたのかい」

白蓮は不安そうな表情で言いました。

「色々とね。北郷は半年の労役の刑を課したよ」

「北郷って! あいつ何かしたのかい?」

「天の御使いを語っていたので本来は死罪なんだが、桃香の懇願と最近は名乗っていないというので労役で見逃すことにした」

私は胃を擦りながら言いました。

「あいつ・・・・・・、な、なんてことを。ごめん。ごめん。正宗君、本当にごめん!」

白蓮は頭を何度も頭を下げました。

「白蓮、君があやまることじゃないだろ。ほら、頭を上げて。桃香の件より、今日、私のところにわざわざ尋ねてくれた件を教えてくれないかい」

私は白蓮を慰めながら、優しく言いました。

「そうだね・・・・・・。痛っ、桃香の件は忘れるよ」

白蓮は胃が痛いのか数分程、胃の辺りをさすっていました。

「正宗君のところを尋ねたのは黄巾賊討伐の戦勝祝いをしにきたんだ」

顔色の悪い白蓮は私に言いました。

「胃が痛いのかい。白蓮、私に少し診せてくれないか」

「正宗君は医術の心得があるのかい。できればお願いできるかな」

私は白蓮が可哀想になり、彼女の側にくると屈んで、彼女の胃の辺りに手を当て、治癒能力を使いました。

「えっ、あ、あの、正宗君、何を?」

私の行動に白蓮は顔を紅潮させ酸欠状態の魚のように口をパクパクさせていました。

「黙っていてくれ。直ぐに良くなるから」

私は白蓮を制止して、力を流し続けました。

「あれ、胃の痛みが取れた・・・・・・。正宗君、何をしたんだい?」

「特別な治療方法だから、白蓮にも教えれないな」

私は微笑みながら言いました。

「秘密の治療方法? 何にせよ。正宗君、ありがとう」

白蓮は笑顔で応えました。

「どういたしまして。それより幽州からわざわざ戦勝祝いに来てくれてありがとう。ゆっくりしていけるのかい」

「私が来たかったから来たから、正宗君は全然気にしないでいいよ。ゆっくりしたいのは山々なんだけど、仕事が溜まっているから直ぐに帰らなくちゃいけないんだ」

白蓮は凄く残念そうにいいました。

「良い人材はいないのかい?」

「幽州の田舎に来てくれる優秀な人物はそういないから」

私は白蓮の言葉を不憫に感じ、提案をしようと思いました。

「直ぐにとはいけないけど、私が人材を何人か紹介しようか?」

「そんな悪いよ」

白蓮は私の申し出を断りました。

「そう言わずに。私は白蓮のことを家族と同じに思っている。それに幽州の人々は異民族との戦闘で、土地は荒れているんじゃないのかい。私は少しでも幽州の人々の生活が楽になれば思っている」

私は真剣な表情で白蓮に言いました。

「正宗君・・・・・・。う、うう、ありがとう」

白蓮は私の言葉に感動したのか泣きじゃくっていました。

揚羽と冥琳は白蓮の反応に同情の目を送っていました。

「白蓮、私はその異民族と交渉をし交易を行いたいと思っている。彼らが漢の領土に侵入して略奪を行っている行為は私達が田畑を耕すのと同義だと考えている。だから、彼らは簡単に略奪を止めないだろう。それで、略奪より交易の方が旨味のある話だと思わせる必要がある。この話が上手くいけば、白蓮の治める郡にも交易による利益と、田畑の収穫を幾ばくか向上させることができると思う」

私は涙を流す白蓮に話を続けました。

「ぐす。正宗君、それは無理なんじゃないかな。烏桓族が大人しく略奪を止めるわけがない。あいつらは殺し尽くさないと無理に決まっているよ」

「何も私は彼らに融和策を説くつもりはない。彼らは力こそ正義と思っている連中だ。なら、彼らの流儀で話を進めるだけ。白蓮、この私と同盟して烏桓族を叩き潰さないか? 彼らも私達が力を示せば、交渉に乗ってくると思う」

私は白蓮に同盟の話を持ちかけました。

「それは本当なのかい。正宗君が烏桓族討伐に協力してくれたら心強いけど・・・・・・。本当にいいのかい。迷惑なんじゃないかな」

白蓮は人差し指を自分の胸の前でツンツンしながら言いました。

「さっきも言っただろう。私は最終的に烏桓族と交易を望んでいるんだ。それは私にとっても利益なる。だから、気にしなくていい」

私は白蓮に諭すように優しく言いました。

「正宗君がそんなに言うなら、お願いします」

白蓮は頭を下げました。

「白蓮、何を言っている。私と白蓮で協力するんだ。白蓮、私に力を貸してくれ」

私は白蓮に握手を求めました。

「うん! 正宗君、力を合わせて烏桓族を倒そう」

白蓮は涙を拭くと私の手を握り、握手をしました。

これが上手くいけば、私が欲しい物を烏桓族を介して入手できるかもしれません。

それに私と白蓮の関係が良好なら、彼女は私の側の人間になってくれる可能性が高まります。

恋姫のように、麗羽と争って落ち延びる羽目になったら、彼女が可哀想です。

私は彼女のことを高く買っています。

できれば、幸せになって欲しいです。
 
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