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戦国異伝

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第二十一話 一喝その十一


「それで宜しいですかな」
「うむ、本題じゃな」
「左様です」
 その通りだとだ。こう主に告げるのであった。
「鎮吉を用意させたその策ですが」
「既に考えておるぞ」
 すぐにその主からの返事が来た。
「もうな」
「そうでござるか」
「そうじゃ。だからこそ勘十郎を呼んだ」
 信行を見ながら話すのだった。
「既にな」
「といいますとその策は」
「勘十郎、よいか」
 弟を見たままでの言葉であった。
「そなたには再び謀叛を起こしてもらう」
「再びですか」
「そうじゃ。そなたはまずは古渡に戻れ」
 そうしろというのである。
「してじゃ」
「それからですか」
「さすればやがてあ奴が戻って来る」
 信長はここまで読んでいた。
「その時にじゃ。あ奴の言葉に乗れ」
「そうしてですか」
「そしてわしがこれから言うことに合わせよ」
「では」
「よいか。話すぞ」
 信長は茶を置きそのうえで話していく。話し終えてからだ。弟の顔を見て問うのであった。
「わかったな」
「はっ、よく」
「くれぐれもじゃ。あ奴の術にはかかるな」
「術にはですか」
「術のかけ方に思うところはないか」
 このことをだ。問うのであった。
「それについてじゃ」
「術のですか」
「何か特徴はあるか」
「そう言われますと」
 信行はこれまでの津々木とのやり取りを思い出しながらだ。今茶室にいる者全てに話す。そのこととは。
「目でしょうか」
「目か」
「はい、目です」
 それだというのである。
「どうも目を見ればそれで、です」
「術にかかってしまったというのか」
「面妖なことにです」
 そうだというのである。
「目を見ればそれによって」
「ふむ、わかった」
 ここまで聞いてだ。信長はまた頷いてみせた。
 そのうえでだ。信行に対しても言うのであった。
「ではじゃ。勘十郎よ」
「目ですか」
「そうじゃ。目じゃ」
 まさにそれだというのである。
「あ奴の目に気をつけよ」
「具体的には見るなというのですね」
「うむ」
 こう答えて頷きもする。
「そういうことじゃ。よいな」
「わかりました。それでは」
「操られるふりをせよ」
 信長が弟に授ける策であった。
「よいな、そのうえで合わせよ」
「では。その様に」
「後はこの策が実際に動くだけよ」
 話すこと、用意することは全て済んだというのである。 
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