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戦国異伝

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第十六話 正装その十六


「くれぐれも」
「そういえば決して愚かな目ではなかったな」
「そこからおわかりになられますね」
「目でわかる」
 孟子にある言葉だった。
「人は目でおおよそな」
「そこに出るからですね」
「そうじゃ。無論それだけでわからぬ場合も多いがじゃ」
「目は確かに話しますから」
「だからよ。それはわかる」
 また言う信長だった。
「あの目の光は強いものじゃった」
「父上の目と同じ色の光でしたね」
「どうもその強さもじゃ」
 それについても話していくのだった。
「義父殿と同じだけの強さになっておったな」
「ですから。もしや美濃は近いうちに」
「戦乱か」
「御気をつけ下さい」
 こう夫に告げるのだった。
「是非共」
「わかった。それではじゃ」
「はい」
「兵の備えは忘れぬ」
 それはだというのであった。
「何があろうともな」
「そうされると何よりです」
「あの義父殿はとかく敵が多い」
 信長もよくわかっていることだった。道三は美濃を一国を治めていてもだ。その出自や革新的な政策によってだ。土着勢力からの抵抗も多いのだ。それでなのだった。
「それが悪い方に転ぶこともな」
「考えられますので」
「そうじゃな。ではじゃ」
「はい」
「今は尾張の政を第一にし」
 それは忘れないのだった。
「第二は美濃への調略」
「そして第三に」
「美濃、そうしていくとする」
「そうされると何よりです」
「伊勢と美濃じゃな」
 信長はまた言った。
「そこがこれから大事じゃな」
「尾張で止まるるもりはないですね」
「ああ、それはない」
「やはりそうですか」
「尾張だけで終わるものか」
 次第に不敵な笑顔になってだ。妻に言うのであった。
「より上よ」
「天下をですね」
「蛟龍は潜み何時か天に昇るものではないか」
「はい、それは確かに」
「ならばよ。わしは昇るぞ」
 茶を飲みだ。勢いよく話すのであった。
「その天にだ」
「そして天下を見下ろされますね」
「そうする。よいな」
「はい、それでは私も共に」
「頼むぞ」
 こう話をする二人だった。義父道三との会見は成功だった。しかしであった。戦乱が再び信長の前に現れようとしていたのであった。


第十六話   完


                  2010・11・17 
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