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戦国異伝

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第十五話 異装その七


「何故全て揃うかとです」
「わからないのか」
「それはか」
「色を司る家が残るとも限りません」
 このことも話す竹中だった。
「三好も朝倉も。そして我が斉藤もです」
「強いからな」
「色を持っていなくてもだ」
「ですからわかりません」
 竹中は首を傾げさえさせた。
「それはです」
「どちらにしろそれぞれの家に色があるのは面白いな」
「そうだな」
「それはな」
「確かにな」
 三人衆と不破はそれはいいとしたのだった。例え偶然にしてもだ。
「そして織田は青か」
「その青がだ」
「どうなっていくかだな」
「それを見ましょう」
 竹中は落ち着いていた。それは最初から変わらないが今は特にであった。
 斉藤方でも見る者は見ていた。そうしてだ。
 当の信長はだ。己の前に控える家臣達の姿を見てだ。満足した顔であった。彼もいつもの茶筅髷に派手な上着の右半分を肩から脱いでだ。半袴に縄の帯にとだ。傾いた格好だった。
 その主の姿を見てだ。能の翁の仮面と格好の平手が言うのだった。
「全く。殿は」
「爺、よく似合っておるぞ」
「好きでしておるのではありません」
 怒った声で返す平手だった。無論他の者もそれぞれ奇抜な格好である。
「どうしてそう素っ頓狂なことを為さるのか」
「ここまでしてこそじゃ」
「そう仰るのですね」
「その通りじゃ。先程も申しておるだろうが」
「それでもです」
 平手のいつもの小言は変わらない。
「殿の悪戯好きは。相変わらずですな」
「茶も好きだがそれも好きじゃ」
 信長は例によって悪びれない。
「傾くのもな」
「それに能や狂言も」
「そうですな」
 他の家臣達も言ってきた。見ればそれぞれその姿である。どう見ても大名とその家臣達には見えない。全くであった。
 そしてだ。赤鬼の仮面の柴田が言ってきた。
「それがしは殿にどうしてもこれだと言われましたが」
「他にないでござろう」
「うむ、権六殿はやはり」
「鬼でござるからな」
「戦場の鬼でござる」
 誰もが言うことであった。
「権六殿が赤鬼ならばです」
「佐久間殿が青鬼で」
 その佐久間はだ。実際に青鬼であった。
「どちらも鬼ですな」
「実に相応しい」
「もっとも」
 ここで皆笑いながら言うのだった。
「実際に一番怖いのは平手殿ですが」
「全くその剣幕たるや殿も敵わない」
「恐ろしい方です」
「わしはじゃ」
 そう言われてだ。平手はバツの悪い顔になった。そのうえでの返答だった。
「皆の為を思って言っておるのじゃがな」
「厳し過ぎますから」
「とても」
「それは皆のことを考えてじゃ」
 翁の面を付けたままだがそれでも表情は誰もがよくわかるものだった。
「わしはあえてじゃ」
「それでも厳しくて」
「まさに鬼です」
「織田家の閻魔大王ですな」
「全くです」
「誰が閻魔じゃ」
 平手はその言葉にも反応する。耳はかなりいいのだ。
「わしの何処が閻魔じゃ」
「いや、一理あるな」
 だがだった。ここで信長が言う。 
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