| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十四話 美濃の蝮その十


「他の国の者達もらしいな」
「伊勢やそうしたところからも集めてきております」
「何でもそうした者まで重く用いているというが」
「一体どうした者なのでしょうか」
 この家臣は信長についてさらに話すのだった。
「織田信長というのは」
「それはこれからわかる」
「会ってからですか」
「そうだ。だからこうして行くのだ」
「では殿」
 明智もいた。彼が道三に言ってきたのだ。
「若しもです」
「どうした、十兵衛」
「織田殿が大うつけだったならどうされますか」
「その場合はか」
「はい、その場合はどうされますか」
 鋭い目になってだ。道三に問う明智だった。
「その場合はです」
「その場合は少し考えがある」
「お考えがですか」
「そうじゃ、ある」
 明智にもだ。こう答えるのだった。
 そしてだった。道三はここでその明智を見てだ。彼に声をかけた。
「しかし十兵衛よ」
「何でしょうか」
「そなたまたどうして今はここに来ておるのじゃ」
 問うのはこのことだった。
「確かにかつては斉藤家にいたが今では幕府におるではないか」
「はい、その通りです」
「それでどうしてここにおるのじゃ」
 また明智に対して問うた。
「公方様から何か言われたのか」
「それはその通りですが」
「しかしというのか」
「はい、その織田殿です」
 彼が言うのは信長のことだった。
「公方様も興味を持っておられます」
「そうなのか。尾張の統一のことがか」
「都にも響いておりますので」
「ふむ。して公方様はあの者のことをどう見ておられるのじゃ」
「気に入っておられるようです」
 明智の言葉は周りにとっては以外だった。それを聞いて皆怪訝な顔になるのがその証拠だった。
「どうやら」
「ほう、そうなのか」
 ここでだ。道三はその足利将軍のことも思い出した。彼はだ。
「あの公方様もな」
「そうですな、あの方もかなり」
「変わっておられますから」
「左様ですな」
 明智の他の者達がこう話すのだった。
「公方様でありながら自ら剣を持たれますし」
「それも天下に轟く腕です」
「まさか公方様御自らそこまでされるとは」
「風変わりにも程があるかと」
 現在の将軍である足利義輝は剣豪で知られていた。そしてそれと共に数多くの名剣を集めている。このことでも知られているのである。
 天下ではこの将軍はかなりの変わり者と言われている。それは将軍でありながらそこまで剣にのめり込んでいるからだ。だからである。
「その方があのうつけをですか」
「興味を持っておられるとなると」
「これは」
「ふん、変わり者同士だな」
 義龍は面白くなさそうにこう述べた。
「だからだな」
「確かにそうよのう」
 道三もだった。その二人がそれであるのは認めた。そのうえでの今の言葉だった。
「わしの娘婿もあの公方様も普通ではないのう」
「ですが」
 ここでだ。明智がまた言ってきた。
「公方様は決してです」
「暗愚ではあられぬか」
「むしろかなり聡明であられます」
 そうだというのである。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧