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戦国異伝

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第二話 群星集まるその五


 多くの家臣が集まりだしていた。しかし吉法師はそのことに満足した面持ちは見せていなかった。今日もまた政の話をしていた。
「さすればです」
「ここはです」
 右にいるのは白髪の太った男、左にいるのは老僧だった。吉法師は彼等の話を聞いていた。
「市に金を注ぎ込みましょう」
「そして道をよくするべきかと」
「ふむ。そうだな」
 吉法師は二人の言葉に頷いていた。そうしてだった。
 まずは右を見てだ。次に左を見た。そのうえで彼等に告げた。
「松井友閑」
「はい」
 まずは太った男が応えた。
「武井夕庵」
「はい」
 次に僧侶がだった。それぞれ応えたのであった。
「市のことはそなた達に任せた」
「わかりました」
「それでは」
「思う存分手腕を振るうがいい。そして」
 これで終わりではなかった。彼は今度は頬髯の男を見てだ。また命じた。
「村井貞勝」
「はい」
「そなたは田を栄えさせるのだ」
 そうしろというのだった。
「よいな」
「それがしは田をですか」
「田も市も共に欠かせぬもの」
 彼は言った。
「さすればどちらも金を注ぎ込むべきだ」
「しかしです」
 またここで政秀が言ってきた。
「殿、金がかかり過ぎではありませんか」
「金か」
「はい、そうです」
 彼がここで言うのはこのことであった。吉法師の傍らの場所から厳かに言う。
「それがかかり過ぎるかと」
「市と田を共にしてはか」
「左様です、それでも宜しいのですか」
「よい」 
 しかしだった。彼はそれをよしとしたのであった。
「それでよいのじゃ」
「宜しいというのですか」
「そうじゃ、よいのじゃ」
 彼はまた言ってみせた。
「それでな」
「そこまで仰るのはどうしてですか」
「池田勝正」
「はい」
 ここでだ。一人の名前が呼ばれたのだった。見れば鋭利な顔をした男であった。
「そなた、金についてどう思うか」
「充分なものが出せるかと」
 その男池田はこう答えたのだった。
「何も気にせず」
「いけると見るか」
「はい、しかも金が余ります」
 池田はこうも述べた。
「その余った分はどうされますか」
「坂井大膳政尚」
「はい」
 また一人いた。今度は何処か穏やかな面持ちの男であった。
「そなたに城壁の修復を任せた」
「この那古屋のですね」
「そうじゃ、ここのじゃ」
 こう彼に命じるのであった。
「よいな、大膳」
「畏まりました」
 坂井もこう答えた。 
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