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戦国異伝

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第十三話 家臣達その二


「皆の者、川中島は御苦労だった」
「はい」
「有り難き御言葉」
「それぞれ傷は癒しているな」
「有り難き御言葉、無論であります」
 彼等を代表して武田信繁が言ってきた。
「我等、全て湯の場で傷を癒しております」
「それは何よりだ。それではだ」
「はい、今は」
「何をするかですな」
「そうだ、戦はまずは終わった」
 その上杉との川中島はというのだ。
「だが。これは一つの戦が終わったに過ぎぬ」
「はい、次は上野ですな」
「そこに兵を向けるのござるな」
「その通りだ。だがその前にやるべきことがある」 
 信玄の目が光った。戦の場にあるかその時よりさらにだ。その目が光ってそのうえで言うのだった。それはまさに虎の目であった。
「信濃をだ」
「信濃を治める」
「そうされますか」
「そうだ、信濃を治め豊かにする」
 これが信玄の今の目標だった。彼は戦ばかりを見ているわけではないのだ。
「まずはこの甲斐より道を通しだ」
「信濃の全土にですな」
「その道を」
「そうだ、通す」
 まずは道であった。
「無論治水に田畑もじゃ」
「治めていかれますか」
「甲斐と同じく」
「豊かにする」
 信玄は断言さえしてみせた。
「よいな、戦で拡げた国はだ」
「豊かにする」
「だからこそ拡げる」
「豊かにせぬ土地なぞ手に入れても何の意味もない」
 信玄独自の考えだった。実は彼は戦よりも政を好む。本国甲斐は彼が主になってから見違えるまでに豊かになった。堤が築かれ田畑は開墾され様々なものが植えられだ。街は整備されしかも金山まで見つかっている。信玄は金山の資金で政を行い国を豊かにしているのだ。
 そして今信濃もだ。豊かにするというのである。
「何度も言うが信濃はただ手に入れたのではない」
「それは豊かにする為」
「だからこそ」
「手に入れたと」
「領地を拡げてそれで満足するのは二流よ」
 信玄から見ればそうであった。
「その拡げた領地をどう治めるかがだ」
「御館様の見られているもの」
「そしてそれでさらに豊かになり」
「そのうえで」
「都だ」
 幸村に話したことをここでも話してみせた。二十四将にもだ。
「都を目指すぞ」
「はい、それはわかっております」
「都に入りそのうえで」
「天下を」
「この乱れた国をだ」
 信玄は己が治める天下についても考えていた。そこまで考えてそのうえで動いているこがだ。この武田信玄という男なのである。
 その彼がだ。今言った。
「全て豊かにしようぞ」
「泰平をもたらしそのうえで」
「豊かに」
「今の戦は泰平をもたらす戦と心得よ」
 信玄の言葉だ。
「よいな、そのうえだ」
「はっ、我等一同御館様に」
「この命を捧げ」
 二十四将だけでなくだ。義信も見て言うのだった。 
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