| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二話 群星集まるその二


「忍の出じゃな」
「如何にも」
 男はその通りだと答える。
「幼名は久助といいます」
「左様か」
「この度ある知り合いに言われてこちらに参りました」
「知り合いとな」
「伊勢の者でして」
 滝川はここから話すのだった。
「名を九鬼嘉隆といいます」
「ふむ。九鬼というのか」
「尾張の織田家に行くべしと言われまして。何やら面白い若殿がいるとか」
「ははは、世辞はよいぞ」
 吉法師は笑ってそれはいいと返した。
 しかしだった。ここでまた言うのだった。
「しかしじゃ」
「しかしでございますか」
「その九鬼という者にも会っておこう」
 彼は言った。
「是非にじゃ。政秀」
「はい」
「その者も呼ぶがいい」
 楽しげな笑みを浮かべて政秀に告げた。
「よいな、すぐにじゃ」
「畏まりました。それでは」
「優れた者はどんどん呼べ」
 吉法師はまた言った。
「そうしてじゃ。わしの下に集めるのじゃ」
「それでは今より」
「うむ。さて、それではじゃ」
 吉法師は滝川をあらためて見てだ。彼に告げた。
「滝川一益よ」
「はい」
「これからは久助と呼ぶ」
 笑みを浮かべて彼に言ったのである。
「それでよいな」
「はい、それでは」
「そなたは今日よりわしの家臣じゃ」
 信長は微笑んで彼に告げた。
「わかったな」
「よく」
「そしてじゃ」
 吉法師はその滝川にさらに言ってきた。
「その九鬼という者も連れて来るのじゃ」
「はい、それではすぐに」
「志摩ということは水軍が使える筈」
 吉法師はすぐにこの結論に至っていた。
「その力思う存分使わせてもらおう」
「殿、お待ち下さい」
 ここでそれまで控えていた柴田が彼に対して問うてきた。
「今水軍と仰いましたが」
「その通りだが」
 吉法師は彼の言葉に平然として返してみせた。
「それがどうかしたか」
「海に出られるのですか?」
 柴田は怪訝な声になっていた。
「まさかと思いますが」
「そうじゃな。海は大事なものじゃ」
 信長はまずはこう述べてみせたのだった。
「それは事実じゃ」
「では伊勢でも攻められるのですか?」
「いや、それはない」
 それは否定した。しかしここでは多くは語らなかった。
 そのうえでだ。また言ってみせたのである。
「しかし海だけではあるまい」
「といいますと」
「一体」
 柴田だけではなかった。佐久間と痩せた顔の初老の男も問うてきた。
「何を御考えでしょうか」
「よければこの森可成にお教え願いたいのですが」
「川じゃ」
 それだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧