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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  八十一話 墓参り

 
前書き
みなさんどうもです。鳩麦です!!!

ようやく移転作業が終わりました……申し訳ありません。

オリキャラ募集のけん、みなさんありがとうございました。
既に採用者の方一人にはメッセージをお送りしましたので、来ていないという方は……申し訳ありません。
多くのキャラの中からじっくり考え、一番この物語に合うキャラを選んだつもりです。
ですからもしそのオリキャラが登場したときは、投稿者個人ではなく、読者の方々全員の応援の結晶として大切に扱うつもりでおります。
どうか、登場した彼女がみなさんに愛されますよう祈る所存です。

さて、受験のため更新は亀になるでしょうが……しかし、ようやく完成いたしました第一話。
それでは、此処にGGO編の開幕を宣言いたします!! 

 
2025年11月某日
福島県某所

「まさか、お前がうちの俺と同郷だったとはなぁ……なぁスデンリィ。妙な縁だよなぁこりゃあ」
リョウは今、墓参りに来ていた。
それに気付いたのは、リョウが昔出会った、たった十五分程度の友との約束を果たすため、菊岡から情報を手に入れた時だった。
スデンリィの墓が、リョウがとても良く知っている場所にあったのだ。

「それにここならまぁ、案外定期的に来れっからな。また来年まで、せいぜい静かに眠ってくれや」
墓の前には団子と、緑茶のペットボトルが置かれていた。先に会いに行ったこの近所に住む彼の母親の話によると、此処には彼のナーヴギアを焦って止めてしまい自殺した、彼の妹も眠っているらしい。
涼人はスデンリイの墓から一歩離れると、ぐるりと周囲を見渡す。斜面を利用して出来たこの墓地は、上の方から見ると麓から斜面を登るように続く墓地があり、その向こうに涼人が中学2年まで育った町がある。
やはりこの町が一番落ち着くなと、涼人は思う。
現在の自宅がある川越に大体3年くらい。あの浮遊城に2年ならば、この町には9年ほど生きていたのだ。
この町はまさしく、自分に取っての故郷である。落ち着くのは当然だ。

そんなことを思いつつ墓地を下って行くと、下から声が掛かった。

「りょうー」
「よぉ、遅かったな」
美幸だった。家を出る直前であわてた様子で朱くなりながら家の中に舞い戻った事から、どうしたのかは聞くまでもない。和人と直葉はおばあちゃん達の家に居るはずだが、今日はもう二度めになるので来なくて良いと言ってある。

この墓地には歩いて三分掛かるか掛からないか位だし、実は本来通るべき寺院を無視して住宅街から直接入れる裏ルートが有るため、先行してあらかじめ買っておいた備え物を持ち、調べて置いた場所へスデンリイの墓参りに行ってきたのだ。

「りょう、どうしたの?叔母さんのお墓もっと向こう……だよね?」
「あぁ、ま、ちょっち別の奴の墓参りにな。まぁ、気にすんな」
「……分かった。行こっか」
「おう」
涼人が詳しい事を言わずに居ても、美幸はそれ以上追求しようとはしなかった。
墓地を横に貫く石畳を通り、涼人が降りてきたのとは別の階段を登り始める。

「…………」
「…………」
やがて、その墓石の前に涼人と美幸はたどり着く。

「よぉ、お袋」
「お久しぶりです。叔母さん」
そこが、涼人の母親。桐ヶ谷 (はるか)の墓だった。

そもそも涼人達がこの町に来たのは遥が勤めていた会社の地方支店に転勤したことによってだった。
一応遥の実家は川越の桐ヶ谷家なのだが、結局の所遥は一人で子供二人を育てる事になっても、余り実家に頼ろうとはしなかった。涼人達の祖父である父親とあまり仲が良くなかったのも、原因の一つだろう。

『今考えっと、無駄に強えぇ人だったんだよな……』
芯が太く、折れず、強かでしなやかで……何時も笑っていたような気がする。
美幸の母親である真理も「遥さんは本当に格好良くて綺麗な女性(ひと)だった」と以前言っていた。
しかしそんな彼女の強い精神(こころ)は、自分自身の肉体(からだ)すら引き離してしまった。
彼女自身について行けなくなった体は溜まった疲労を爆発させ、そして余りにも……有る意味では彼女らしくあっさりと、涼人の母は逝ってしまった。

あの時、涼人には始め母が居なくなった事に今一実感が沸かなかった。
しかし通夜の後、それまで気丈に一粒の涙も見せずに葬式などで動き回っていた玲奈が、おばあちゃんの家の一番奥の部屋で涼人の体をしっかりと抱き締めながら大声を上げて泣いた時、確かに自分の母親は死んだのだと理解したのだ。
それ以来、年に一度必ずこの墓へ来ている。SAO内では、空に祈るだけで済ませたが……

「ちゃんと、帰って来たぜ。お袋……」
「…………」
自分はこの世界に帰って来た。
幾つもの刃と、爪と牙を潜り抜けて、帰って来たのだ。

「……来年は、姉貴も一緒だと良いんだがなぁ」
「そうだね……お姉ちゃんは何て?」
「『ホントにごめんね!母さんにも謝っといてお願い!じゃないと天罰が来そうな気がするのよ!』だとよ」
「あはは……」
苦笑しながら、祈りを終えた美幸が備え物のプリンを置く。ちなみに昨日もプリン。今日もプリンである。言うまでもなく、プリンが遥の好物だったからだ。

「うし、帰るか」
「もう良いの?りょう」
「いつまでも居たって仕方がねぇからな」
「……そっか」
二人は階段を下りはじめる。
元々来た裏口から墓地を出ると、小さな片側一車線の道路があり、それを渡ると住宅街だ。
この道を少し進んだ場所に、既に取り壊された涼人達が住んでいたアパートがあった場所と、彼らが幼少の多くの時を過ごした「おばあちゃんの家」がある。ちなみにそこに住んでいるのは、おじいちゃんとおばあちゃん。それにそこの孫娘の母親である、紀乃(きの)と言う女性だ。皆涼人達を温かく迎えてくれた。

二人並びながら、家々の間を歩いていると、不意に美幸が言った。

「ね、りょう」
「ん?」
「しーちゃんの事だけど……」
「あぁあいつな。東京の高校に居んだっけか」
「うん。おばあちゃんも、紀乃叔母さんも詳しい事は教えてくれないんだけど、何か有ったみたいで、わざわざ一人で暮らしてるみたいなの……」
しーちゃんと言うのは、涼人と美幸の幼なじみで3つ年下の少女だ。
本好きの物静かな少女で、二人にとっては共通の妹のような存在である。美幸にも涼人にもよく懐いて居たが二人が越してからは互いに忙しく涼人が此方に墓参りに来たときに会う程度だった。
無論、SAOから戻ってからは全く連絡を取っていない。

「つーか……少しは連絡すりゃ良かったな……」
「私もだよね……だから」
と、美幸は少し期待した視線で涼人を見る。

「東京に戻ったら、会いに行こうよ!」
「……成程」
確かに、幼なじみに会いに行くと言うのは悪くない。久々に成長しただろう妹分の顔を見ておきたいと言うのは確かにそうだ。が……

「まあ先ずは期末片付けてからだな」
「あ、そっか……」
向こうに戻れば即座に期末考査が待っているのだ。直ぐに。と言うわけにも行かないだろう。

「ま、んじゃ12月になったらな。ほれ、その程度で沈んでねえで、さっさと行くぞ」
「あ、ま、待って!」
わざと歩みを早めた涼人と、それに続く美幸の姿はどこか、七年以上前にこの道を歩んで居た小さな少年と少女の姿を思い起こさせる物だった。


新たな物語の歯車が、小さな音を立てて回り始めた。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

多分初めて涼人の母についてお話をしたと思います。
此処から物語はスタートです。しーちゃんというのは……お分かりですね?

ではっ!! 
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