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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第82話 三国一の花嫁達 後編

婚礼を終えた私は麗羽、揚羽、美羽を連れ、馬で遠出をしました。

私達は洛陽より出て数刻程駆けた後、小高い丘にて馬上より平原を見渡しました。

「兄様、何故こんな場所に妾達を連れてきたのじゃ?」

美羽は疑問を私に打つけてきました。

「大事な話があるから、こんな人気のない場所に来たんだ。ここなら人に聞かれることもないだろ」

私は美羽に真剣な表情で言いました。

「大事な話とは何なのじゃ?」

美羽は不思議そうな表情になりました。

「美羽は南陽郡で悪徳官吏を排除したらしいな。それで美羽はどう思った?」

「許せんのじゃ! 妾の一族まで汚職に手を染めていたのじゃ!」

美羽は過去の記憶を思い出したのか、手をわななかせながら怒っていました。

「美羽はそれが南陽郡だけで起こっていると思うかい?」

「あのようなことは南陽郡意外でも起こっているのかや?」

美羽は真剣な表情で聞き返してきました。

「あんなこと珍しいことじゃない。この大陸のそこら中で日常茶飯事だ。全ての官吏が汚職を働いている訳ではないだろうが、大半は汚職を少なからずやっているだろう」

「父上達は何をやっているのじゃ!あんなゴミ共放置しているなど許されることじゃないのじゃ」

美羽は拳を握りしめ怒りに震えていました。

「美羽殿、袁逢殿は好きで放置しているのではありません。全ては、宦官や皇帝の外戚達が闘争に明け暮れ、地方を返り見ないからです。彼らにとって、世界は洛陽だけなのです。それは、皇帝陛下にとっても同様でしょう。民のことなどどうでもいいのです」

揚羽は美羽に真剣な表情で言いました。

「・・・・・・何じゃと。それでは民はどうなるのじゃ・・・・・・。今も重税で苦しんでいる民がいるのじゃぞ。兄様、どうして陛下は苦しむ民を見捨てるじゃ」

美羽は哀しい表情をして、私に聞いてきました。

「後漢の天命が尽きようとしているということだ。今の皇帝が存命の間は後漢は滅びることはないだろう。だが、死ねば後漢の命脈は尽きたも同然。後継者の劉弁、劉協、いずれも傀儡にしかなれぬ皇帝とは言えぬ道化でしかない。腐り果てた後漢は砂上の楼閣のように崩壊していく」

私は厳しい表情で美羽を見つめながら言いました。

「兄様、何を言っているのじゃ。そのようなことを聞かれたら逆賊として処断されるのじゃ。兄様は仮にも漢の皇族なのじゃぞ」

美羽は慌てて私に言いました。

「皇族だから言っているのだ。後漢を再興した光武帝は民の為の政治に尽力された名君。この私も尊敬する人物だ。光武帝がこの荒廃した有様をご覧になったらどう思う。決して見過ごしにはならないだろう」

私は美羽を説得するために光武帝のことを持ち出しました。

「兄様・・・・・・、まさか、民の為に新たな漢を起こす気なのですか? 光武帝は王莽という逆賊を打ち倒すという大義名分があったからできたのじゃ。今、兄様がそのような真似をしても逆賊になるのじゃ」

美羽は動揺を感じている表情で私を見ていました。

「今直ぐことを起こす気は毛頭ない。これから5年後、反董卓連合が結成され、洛陽は火の海になる。そのとき、劉弁が毒殺されて即位した劉協は洛陽を逃げ出す。そこで、後漢は滅びる。私は劉協をもり立てる気など毛頭ない。劉表、劉焉も同様だろう。劉協に皇帝の権威があれば諸候が洛陽に兵馬を引き連れるような蛮行を行うなずがない。劉協は所詮道化でしかない。良くて、諸候に祭り上げられ、御輿になった挙げ句、最終的には禅譲を迫られるだけだ」

私は美羽にこれから起こる未来の話をしました。

「あ、兄様、何故そのようなことを知っているのじゃ? もしや!」

美羽は動揺しつつも私に口を開きました。

「美羽、お前の考えているようなことは絶対にないぞ。私はこの先の未来を知っているだけだ」

「未来を知っている・・・・・・。 兄様、妾をからかっておるのか?」

美羽は怒った表情で言いました。

「嘘などついていない。何故、私が美羽が南陽に下るとき、榮奈をつけたと思う。全てはお前の悲惨な未来を回避するためだ」

私は美羽を哀しい表情で見ました。

「妾の未来とは何のことなのじゃ! 兄様は何を知っているのじゃ」

美羽は私に駆け寄ってきました。

私はその後、美羽に麗羽達にも話した内容を語りました。




「信じられないのじゃ! 妾が、妾が民を苦しめるなんて・・・・・・」

美羽は体を震わせながら言いました。

「私が美羽を洛陽の庶民の子供と交流を持たせ、貧民街にいる民の姿を見せる前ならどうだ?」

私は真剣な表情で美羽を言いました。

このことは反董卓連合前に話す必要がありました。

今の美羽では正義感が強過ぎて、董卓に合力しかねません。

そんなことになったら、私が美羽の為にしたことが水の泡になります。

「兄様・・・・・・、妾は悪人なのかえ?」

美羽は俯きながら言いました。

「美羽が無知なままなら、そうなっただろう。美羽、無知は罪だ。特に支配する側の者にとってはな。そして、もっとも罪なのは知りながら何もしない者だ。一般の民には支配者に抗う術はない。あったとしてもそれは命がけだ。だから、支配者は無知ではいけない。美羽が過ちを犯す前に私はお前を導いた」

私は美羽を抱きしめ優しく語りかけました。

「ひ、ひっく、兄様はだから新たな漢を起こすのかえ?」

美羽は涙で一杯の目で私を見て言いました。

「そうだ。腐りきった王朝は民を苦しめるだけの存在。支配者の為に民がいるんじゃない。民に必要なのは彼らを守り導く存在だ」

「わかったのじゃ。妾も兄様の夢の為に働くのじゃ」

美羽は涙を拭きながら、強く決意した表情で言いました。

「美羽さん、正宗様の話は当分誰にも話さないように。このことを知っているのはこの場にいる私達と周瑜という人物だけですわ」

麗羽は真剣な表情で美羽に言いました。

「麗羽姉様、心配しなくても、このような話は誰にも話せないのじゃ」

美羽は憮然とした表情で麗羽を見て言いました。

「兄様は反董卓連合側に立つ気なのじゃろ。罪無き董卓はどうするつもりなのじゃ。それに洛陽を焼くのは誰なのじゃ?」

美羽は私を厳しい表情で私に言いました。

「我らが最初に洛陽に入城し、董卓は死んだことにして、彼女を保護する。洛陽を焼くのは董卓配下の者達だ」

「美羽殿、正宗様は死体を用意して董卓の死を偽装するおつもりです」

揚羽は私の言葉に補足しました。

「兄様は本当にずっと前から準備をされていたのじゃな。妾が遊び惚けているその時も・・・・・・。世を憂いていたのじゃな」

美羽は私と揚羽の言葉を聞いて、私を哀しい表情で見ていました。

「兄様、これからは妾も共に苦労を分かち合うのじゃ。妾はまだまだ未熟じゃが、兄様の為に働きたいのじゃ」

美羽は私に凛々しい表情で言いました。

「当然だ。私は美羽に期待してこの話をしている」

私は美羽の両肩を強く掴んで言いました。
 
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