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木の葉芽吹きて大樹為す

作者:半月
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若葉時代・慰霊祭編<おまけ>


 大きな失敗もせずに舞い終えた私は、すっかり疲労困憊状態だった。
 ううむ、以前にマダラと七尾と続けざまに相手した時並みに疲れたわ。

「何とか……無事に終わったね。よ、良かった」
「お綺麗でしたわ、柱間様。まるで夢の中にいる様な気分でした」

 舞台から離れた所に生えていた木陰にミトと並んで座る。
 川の側だからなのか、吹き抜ける夜風が涼しくて気持ちいい。火照った体が冷めていく。
 多分、舞う前の私と顔を合わせるか、写輪眼か白眼で観察しない限り先程の舞い手が千手柱間だと分かった者はいないだろう。
 それほど今の私は普段の私と似ても似つかぬらしい。新たな発見である。

 そんな事をつらつらと考えていれば、馴染んだ気配を察して、肩を落とした。
 多分、顔を合わさない方が互いの精神衛生上にいいのだろうが、今回ばかりは私も疲れたせいで動けない。なのでぐったりしながら、じっと座っていた。
 ——案の定。
 向こうからやって来たうちはマダラは、私を見ると眉根を吊り上げてみせた。

「柱間。貴様、とうとう頭に花でも咲かしたのか? 何だその格好は」
「頭領、見ず知らずの女性に対して失礼ですよ……って、柱間様? え?」

 礼装に着替えたマダラとヒカクさんが私達に歩み寄って来る。
 大股で歩くマダラに小走りで従っているヒカクさんが、目を剥いて座り込んでいる私の顔を何度も見やる。

「じょ、冗談でしょう? 千手の頭領が——って、ははは……本当だ」

 わざわざ写輪眼まで使用して、確認したらしい。ヒカクさんが乾いた笑声を上げる。
 マダラの眉間の間の皺が深まる。そんな顔で見ないで下さい、自分とて本意じゃないんです。

「こんばんは、うちはの頭領。うちの柱間様に何かご用でして?」
「貴様は……?」
「うずまきミトですわ。以前相見えた際に名乗らずにいて、申し訳ありませんわ」

 私の腕にくっ付いたミトがにこやかな微笑みを浮かべたまま、マダラへと挨拶する。
 けど、気のせいだろうか? なんだか言葉の端々に棘がある様な……。
 そういえば、七尾の件の時はかなり切羽詰まっていたのと敵対していた事もあって、碌に会話する事も無く別れたんだよね。

「うずまき……渦の国の長寿の一族か。何故うずまきの一族が千手にいるのだ?」
「幼い頃に千手に引き取られたんだ。封印術にかけてミトの右に出る者は千手にだっていないよ」

 なんだかやけに空気が刺々しくなっていくので、ここで会話に乱入しました。
 ヒカクさんが感謝の眼差しで私を見つめて来る。自分でも勇者だと思いましたよ、ええ。

「んで、何か用か?」

 マダラが無遠慮に人の事を睨んでいる。まぁ、いつも睨まれているけどね。

「——その戯けた格好は何だ。どう見ても女物だろうが。貴様、女装趣味でもあったのか?」
「私の見立てに何かご不満がありまして、マダラ殿?」
「大有りだ」

 ミトが応じたのに、マダラはミトに視線をやる事も無く、私を睨んだままだ。
 心無しかマダラはかなり苛立っている様だ。まー、普通に考えればそうだよねぇ……。
 自分の格好を見下ろして、軽く溜め息を吐く。可愛い妹の滅多に無い我が儘だったから、腕を通してみたけど、どうにもちぐはぐな感じがして落ち着かない。
 こきこきと首を動かせば、嫌な音がした。——ああ。凝ってるなぁ、私の肩。

「それにしてもよく分かったな。扉間以外の人達は、オレが口を開かない限り気付かなかったってのに。写輪眼で確認したのか?」
「馬鹿を言うな。何故オレがそのような真似をせねばならん」

 え? じゃあこいつ、見ただけで私だと分かったのか。そいつは凄い。
 感心してれば、ミトが不機嫌そうにマダラを睨んでいた。
 ミトの視線に気付いたのだろう、マダラも目を眇めてミトを睨みつけている。

 間に挟まれた私は——非常に居心地が悪かったとだけ明記しておこう。
 
 

 
後書き
個人的にこの二人の仲が悪かったら面白いなぁ、と思って。
扉間の名前なんて全然出て来ないのに、頭領、うずまきと聞いただけでミトの事を連想していましたから(原作にて) 
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