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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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EpilogueⅤこれも騎士の仕事・・・か?byシグナム&ヴィータ

†††Sideシグナム†††

「ようやく見つけましたね・・・」

「ああ・・・・長かったな・・・」

私の隣で疲労困憊と言った風のオーディンへ声を掛ける。そう言う私も、そしてアギトやアイリ、ヴィータ達も疲労を見せている。

「久々に暴れられるかもって思ってたんだけどなぁ~。入口探しでもうヘトヘトだ」

「こら、ヴィータちゃん。戦いたいなんて不謹慎よ。せっかくの平和なのに」

「判ってんよ。てか、もたれかかんなよっ、重いだろうが!」

「だって疲れたんだもの~。あと、そんなに重くないもん~(泣)」

「泣くなっ、うっとおしい!」

「ヴィータちゃん、つぅ~め~た~い~(泣)」

「シャマル。私にもたれかかると良い」

「へっ? あ、えっと、その・・・はい、じゃあお願いします」

オーディンを筆頭とした我々グラオベン・オルデンは今、元イリュリア・ベクスバッハ地区――現シュトゥラ領土(あと数ヵ月で正式にシュトゥラ・アムル領となる)へと赴いていた。
事の始まりは昨日、クラウス王子の使者がオーディンの元を訪れた事だ。その者の用件は、この地区のどこかに人体実験施設が在るらしく、その調査を願いたい、というものだった。情報源にして依頼主は、イリュリア王バルデュリス。バルデュリス王も大変な妹を持ったものだな。
件の人体実験施設と言うのも、元女王テウタ派の連中が秘密裏に造ったものらしい。もちろん王はそんな施設が在るなど知らず、戦犯として投獄されている元テウタ派の研究者たちへの聴取の果て、初めて知ったとのこと。だからこそすぐに調査、発見次第破壊してほしいという依頼だ。

「んん~・・・なんかお尻拭いさせられてるっぽいよね~」

「縮小されたって言ってももうイリュリア騎士団はベクスバッハ地区(ここ)には入れないから、自然と調査はシュトゥラ側になっちゃうから仕方ないよ」

オーディンの傍を飛んでいるアイリとアギトが溜め息交じりに話している。その調査班に抜擢されたのが、ベクスバッハ地区に最も近い街・アムルを本拠地とし、戦力としても十分すぎる我々グラオベン・オルデンだ。
依頼を受け、今朝早くからベクスバッハ地区の荒野地帯へ赴き、施設を探し続け、昼を過ぎてからようやく発見することが出来た。施設の入り口である足元――地下へと通じる鉄扉へと視線を移す。地上に施設が無いと調査の結果判明し、地下に在るだろうと考え入り口を探し・・・発見した。何時間と歩き回った疲労が今、我々全員を襲っていた。

「疲れている者は休んでいてくれ。私は先に調査に行っているから」

オーディンはそう仰り、起動していた“エヴェストルム”で足元の鉄扉を貫き、粉砕。我らが御守りするべき主であるオーディンをお1人で調査へ行かせるわけもなく、

「いえ! 私も共に参ります!」

「あたしも!」「アイリも!」

シュリエルとアギトとアイリが真っ先にオーディンの隣に立ち、次いで私にシャマルとザフィーラ、最後にヴィータが「しゃあねぇ、行くか」と“グラーフアイゼン”を起動し携えた。それから鉄扉を潜り、地下深くへと続く階段を下りて行く。階段を含め地下の通路はかなり広く、大人が横に10人と並んでもまだ余裕があるほどだ。光源は壁面の内部に埋め込まれた魔力灯で、一定間隔を開けて設けられている。

「それにしても人体実験施設なんて。一体、何をしようとしていたのかしら・・・?」

「名称からして外道に違いないだろう。不死者グレゴールやキメラ達のような生体兵器の生産所かもしれないな」

殿を務める私とザフィーラの前を行くシャマルとシュリエルの横顔が不快感に歪む。あまり表情を出さないシュリエルですらああもハッキリと出るとなると、おそらく今の私の顔も似たようなものだろう。

「キメラと屋内での戦闘かぁ~。メンドそうだけど、やり応えはあるよな」

「何だ、ヴィータ。騎士から戦闘狂に鞍替えか?」

「違う! そんなシグナムみてぇな末期症状なんかじゃねぇ!」

何かしら納得のいかんことを言われたな。まるで私が戦闘狂のような言い草だ。オーディンに慌てて答え、なおかつ私を指さしているヴィータに「待て。私は戦闘狂ではないぞ」と反論する。すると何故かオーディンとザフィーラ以外から「え?」などと、信じられないと言った風な目を向けられてきた。む。いろいろと反論したいが、その前にオーディンが「扉だ」と立ち止まった。通路の先、そこにはただ壁があるのみだった。行き止まりに思えるのだが・・・。

「全騎、戦闘用意」

いや、とにかく今は「ヤヴォール」オーディンの言葉を信じ、我々はいつでも戦闘に臨めるように意識を切り替える。オーディンが壁へと近づき右手でそっと触れた。そして何かを呟き、バチバチと右手から壁面全体に電流が流れたと思えば、ゴゴゴゴと壁が下降していく。

「上下開閉式の扉だ。・・・・防衛機構や罠などは無いようだが・・・」

「私とザフィーラが先を歩きます。ヴィータ、シュリエルは後方警戒だ」

先頭に立って歩みを進めるオーディンより前に出、守護騎士としての役を担う私とザフィーラ。そこからまた少し進んで行くと、通路は少しずつ狭まって行き、左右に分かれ道がいくつも出て来たが一度も曲がることなく直進し、そして1つの鉄扉の前に行きついた。

「扉の向こうから複数の魔力反応。気を付けろ」

オーディンに警告され、我々は武装を構え、臨戦体勢に移る。オーディンに触れられた鉄扉は中央から分かれ左右へと平行移動、音もなく開いて行く。開き切った鉄扉の向こう側の様子が見えた。鉄扉の奥には敵など居らず、円い部屋が在った。天井には巨大な魔力灯。床には壁面に沿うように棺らしき物が何十と円形に並べ置かれていた。

「これ、全部・・棺なの・・・?」

我々は室内へと入り、宝石のような鉱石造りの透明感のある棺の中身を見る。棺に収められていたのは、「・・全員、子供だ・・・」だった。赤子からヴィータほどの幼さ子、エリーゼ卿ほどの歳の子も居る。シャマルは見るのも辛いと言った風に目を逸らした。

「コイツら全員が人体実験されたってぇのか・・・?」

「だとすればイリュリアの研修者とは犬畜生でも温い外道だ・・・!」

「いや、待てみんな。この子供たちは生きている・・・!」

オーディンはそう言って1つの棺の蓋を開け、まるで死人のように横になっている少年の頬にそっと触れた。シャマルもまた医者としての顔になり棺を開け、収められていた少女の首筋に手を添えてから「本当です! この娘も生きてます!」嬉しそうに告げた。

「みんな、棺の蓋を開けてくれ! 一気に治癒させる!」

――我を運べ(コード)汝の蒼翼(アンピエル)――

オーディンはそう仰り、背より蒼く光り輝く12枚の剣翼を展開した。我々は指示に従い、オーディンと共に何十と言う棺の蓋を開け放って行く。

――女神の祝福(コード・エイル)・ver.Geburah――

そして剣翼が無数の羽根となって舞い散り、1枚1枚が棺の中に眠る子供たちの元に降りる。羽根の触れた子供たちが蒼い魔力膜に覆われていく。そして数分とせずに子供たちは一斉に起きたのだが、しかし子供たちが起きたことで、今まで生きてきた中で一番苦労する羽目になろうとは・・・・。

†††Sideシグナム⇒ヴィータ†††

「うわぁぁ~~~~ん(泣)」

「ママぁ~~パパぁ~~(泣)」

「きゃはははは!」

ああもう、うるっせぇなぁ! ガキどもが起きたと思った途端に泣くわ笑うわ走り回るわ。最初は、人体実験されてその上死んじまったのかって思って同情しちまったけど、その同情もすぐに薄れちまった。

「うげっ!?・・・って、痛ぇなオイっ! 誰だっ、あたしの後ろ髪引っ張った奴ぁっ!」

「わぁ~~い♪」「逃~げろぉ~♪」

今日もオーディンに結ってもらった自慢のおさげが思いっきり引っ張られたから、変な呻き声出しちまったじゃねぇか。怒鳴って振り向く頃にはもう後ろには誰も居ねぇしよっ。まぁ犯人らしいガキ(5歳くらいの男の)2人を標的として捕捉。さぁ追いかけて取っちめようかと思えば、「わぁ~~い!」ガキ(男)の1人があたしの騎士甲冑のスカートを勢いよく捲って行きやがった。

「ぬわっ?」

すぐにスカートを押さえる。そんで「クソガキ!!」あたしのスカートを捲って行ったガキを睨んで、ハッとしてオーディンを見る。捲られた時に下着を見られたかもしんねぇって思ったんだけど、オーディンはガキどもの中で最年長(15歳だと)でリーダーであるらしい女――フェリと話してる最中だった。視界に入らないところに居てよかった。変に恥をかかずに済んだからな。そんじゃま、悪ガキを成敗しに行くか。

「わぁ~~い!」

「きゃあああっ!?って、見ないでくださいオーディンさん!」

「あ痛ぁぁああっ!?」

「あ、こらっ、アダム! やめなさい!」

オーディンの隣に居たシャマルのスカートを捲ったガキ――アダム。シャマルは下着を思いっきりオーディンに見られたから顔を真っ赤にして、オーディンの頬を手加減なしの平手打ち。うわぁ、いってぇ。んで、叩いたことに悲鳴を上げて何度も「ごめんなさい!」って謝るシャマルに、オーディンは笑顔で許してる。つうかアダムってガキはとんでもねぇな。ガキどものリーダーのフェリの言う事すら聞かねぇ。

「むおっ!?」

少し離れているところであたしらと同じように子守りをしているはずのザフィーラから、普段なら絶対に聞かねぇような変な声が。そっちを見てみると、あたしよりちょっと小さいくらいの男と女のガキ2人を背中に乗せてるザフィーラが居て、「毛、毟られたんだな・・・」女のガキの手にはザフィーラの毛らしきものが。それでもザフィーラは怒ることも、振り落すこともしないで「しっかり掴まっていろ」って言って、また走り出した。

「ぎゃあぁぁああああっ!」

「うわっ!? アイリが食べられる!?」

「アイリ、美味しくないよ~~~っ!?」

また違うところじゃアイリが赤ん坊に掴まって、脚から先をしゃぶられてた。何とかアギトに助けられたアイリだけど、アイリを奪われたことで赤ん坊が派手に泣き叫ぶ。そこに登場すんのが、子守り出来そうな奴には到底見えねぇ(つうか、あたしら全員子守りに向いてねぇよ)シュリエルだ。
オドオドしながら赤ん坊を抱き上げるけど、その無表情っぷりがさらに赤ん坊を泣かせる。んで、近くに居たシグナムに寄る。っつうかさシュリエル、その選択はどうよ。お前ら揃って無表情組だろうが。案の定、赤ん坊は泣き止まない。

「あー、何をやっているんだ。ほら、こっちへ」

と、そこへオーディンが2人のところにやって来た。そんでもってシュリエルから赤ん坊を受け取って、赤ん坊の頭を左胸の方に向け直してから抱いた。

ありがとう(イオメム)生まれて来てくれて(ゼーレット・テーア)私はとても幸せです(イェリユー・アル・セーヴェ・アエキ)

そんでもって体を揺らしながら歌い始めた。

貴方と共に生きる時間(アー・フィエファル・エ・)幸多くありますように(ルアシロン・エ・イオン)

聴いたこともねぇ言葉での歌だけど、何て言うか「落ち着くな・・・」ついウトウトしちまう。ぎゃあぎゃあ騒いでいたガキ連中も、オーディンの歌声に静まり返って、聞き惚れてるせいか一斉に座りだした。オーディンに抱かれてる赤ん坊も泣き止んで、ジッとオーディンの顔を見上げる。それから少しの間、あたしらはじっくりオーディンの歌声を聴いて、終わった時には半分以上のガキどもが眠ってた。

「オーディンさん、歌がお上手なんですね」

「つうか、オーディンって男なのに、母親みてぇだよな」

シャマルに褒められて照れくさそうに「ありがとう」お礼を言っているオーディンに、あたしがそう言うと、「え゛っ?」オーディンは納得いかないって顔であたしを見てきた。起きていた何人かのガキがオーディンの足元に「お母さん?」「ママ?」って群がった。オーディンが本気で落ち込む顔見んの初めてな気がする。

「コホン。で、今からは真面目な話になるから、グラオベン・オルデンは心して聴くように」

つうわけで、あたしらは輪になって座り込んで話を聴く姿勢になる。オーディンがガキどものリーダー・フェリとの会話で得た情報をあたしらに話した。やっぱ反吐の出るもんだったよ。他国からガキどもを誘拐して、異物が体に馴染みやすい小さい頃から魔導実験。
生体兵器として完成すれば戦場投入、失敗して壊れたり死んだりしても他国の人間だから問題なしってさ。ふざけんな。でだ。今ここに居るガキどもは最近――2ヵ月足らず前に誘拐されて来たってことだ。

「ですが、誘拐されてから幽閉されっぱなしで、皆さんが訪れる今日まで実験されることは無かったです」

「お前たちを誘拐してすぐにイリュリア戦争が起こったからだな」

「そうみたいです。不幸中の幸いというものですね」

シグナムにそう言われたフェリは、膝枕しているガキの頭を撫でながらフッと笑った。オーディンは「とりあえずは、だ。ここから出よう」ってフェリや他のガキどもをぐるっと見回した。
まず施設からの脱出だ。正直、移動には時間が掛かると思ったけど、そこはオーディンの万能魔導のおかげで何とかなった。眠っている奴、長距離・長時間の歩行が続けられない体力の無い奴は、オーディンの魔導――泡に包んで浮かばせて移動させた。そんで地上からの移動は、

「うわぁ、おっきいお船~っ♪」

「お日様、まぶしい♪」

「お姉ちゃん、アレなんてお名前ぇー?」

「お姉ちゃんじゃなくてお兄さん、な? アレは、スキーズブラズニル、というお名前なんだよ」

起きてるガキどもは久ぶりに外に出たからか満面の笑顔で騒いで、そしてオーディンが召喚した空飛ぶ巨大帆船スキーズブラズニルを見てまた大騒ぎ。つか、今日のオーディン、落ち込む回数が半端なく多いな。なんかの予兆か・・・? とにかくあたしらはスキーズブラズニルへ飛行の魔導で乗船、一路アムルへ向けて出航した。

「フェリ。今からコイツで君らをシュトゥラ王都ヴィレハイムへ運ぶ。そこから君たちが故郷へ帰れるようにしよう」

「あ、はいっ。それでお願いします!」

「さてと、そう言うわけで、グラオベン・オルデン全騎。子守り再開だ」

本音を言うとさ、もう子守りはちょっとな~とか思うんだよ。なぁ、オーディン。アギトとアイリを見てみろって。明らかにゲッソリしてんじゃん。そりゃそうだよ。特にアイリなんて赤ん坊にしゃぶられたんだからさ。ザフィーラだって毛を毟られ過ぎて、下手すりゃハゲちまうかもしんねぇし。
けどシグナムとシャマル、そんでシュリエルは「ヤヴォール」嫌そうな顔しないで応じた。あたしとザフィーラ、アギトとアイリも遅れて「ヤヴォール」って了承。で、子守りを再開することになったんだけど・・・

「きゃぁぁああああ!? どうして私ばかりスカートを捲られちゃうのぉぉーーーっ!?」

シャマルは、アダムと、ソイツの仲間らしい連中からスカート捲りを何度も食らった。1人が捲ってシャマルがすぐに押さえて、手を離した瞬間に別のガキがスカート捲り。アホなことで連携しやがるよ、アイツら。つうかシャマル。お前、もう座ってろよ。

「千切れちゃう! あたしの尻尾千切れるって!というか、目が回るぅ~~~!」

「痛い痛い痛い! アイリの羽、引っ張らないでよね~~~~っ!」

アギトとアイリは相変わらず悲惨な目に遭ってた。アギトは尻尾を掴まれてブンブン振り回されてるし、アイリは背中から生えてる翼を左右に引っ張られてた。あの2人が一番頑張ってんよ、ホント。で、ザフィーラはと言うと、両腕にぶら下がってるガキ2人をそのまま持ち上げてる。体が浮いたことがそんなに楽しいのかザフィーラの腕にぶら下がってるガキどもがきゃいきゃい笑ってやがる。

「すごいすごい! 剣の姉ちゃん、カッコいい!」

シグナムは“レヴァンティン”を使って、オーディンから調達したらしい果物を空中で斬り裂いてた。今度はリンゴを頭上に放り投げて、“レヴァンティン”を高速で振るってリンゴを分割、もう片方の手に持っていた皿に乗せてる。それを見ているガキどもから拍手喝采。シグナムの奴、本気で楽しそうに笑ってやがる。え~と、シュリエルは・・・お、居た居た。シュリエルは甲板に座り込んで、絵本を読み聞かせていた。

「なんだ。あの2人なら上手く子守り出来ねぇと思った・・・って、うぉーい! 危ねぇから縁に上ろうとすんなっ!」

右舷の方をふと見ると、ガキ3人が1mちょっとくらいの縁によじ登ろうとしてんのを発見。でもスキーズブラズニルは、全長が2Kmで全幅が300mっつう巨大さだ。あたしが今居るところは前部甲板・右舷の半ば。距離もあるし、ガキどもも騒いでいるからあたしの声が届いてねぇ。

「子守りする役の人数が圧倒的に足りねぇ・・・!」

走るより早く移動するために飛んで、下手に知恵のついたガキども(2人が土台になって、1人が縁をよじ登る)の元へ向かう。あと数mってところで、縁の上によじ登ったことがよっぽど誇らしいのか仁王立ちするガキ(当然、男だ)が、

「あ」

「んなっ・・・!?」

体勢を崩して縁の向こう側に落ちて消えた。落っこちやがった! 血の気が引く。速度を落とすことなく縁から飛び出して、ガキが落ちて行った足元へ急降下しようとしたところで。

「っ・・・んだよ。落下防止用の魔力網が有んのかよ・・・」

安堵の息を吐く。あたしの眼下には、万が一に縁から落ちた奴用のための網が張ってあった。乗る前には無かったから、きっと落ちた奴が出たその都度に自動展開されんだろうな。とにかく「危ねぇだろうが! もう縁に上んな!」網の上でポカンって呆けていたガキを怒鳴って、甲板の上まで連れて行く。ガキを甲板に降ろした瞬間、ソイツは今さら怖くなったのか泣き出した。

「はぁぁ・・・・。超しんどい・・・」

大きな溜息と一緒に、あたしはその場にへたり込んだ。そこからはもう記憶に残らねぇほど走ったね、甲板の上を。人体実験施設から王都ヴィレハイムまでの空の旅、約30分。鬼ごっことかいう遊びで。あんだけ煩わしかったガキどもも眠ってりゃ可愛いもんでさ。あたしの膝枕で眠る女のガキの寝顔につい頬が緩む。

「お疲れ様、ヴィータ」

「ん。オーディンもお疲れ。はは、歌いすぎて、声ガラガラじゃねぇか」

「歌ったり大声出したり。時間にすれば短いが、その中身は濃かったからな」

「だな。あ、あとさ、アギトとアイリ、今日はすげぇ頑張ったからさ・・・」

ぐったりと仰向けに倒れ込んでる、髪がボッサボサのアギトとアイリの方に目をやる。オーディンは苦笑いして、「ああ。何かご褒美を上げないとな。もちろんヴィータやシグナム達にも」ってあたしの頭を撫でた。それに対して「ん」小さく頷く。やっぱオーディンに撫でられると落ち着く。

「・・・ヴィレハイムが見えて来たな」

あたしは座ってるから見えねぇけど。終着点のヴィレハイムはもうすぐだ。ま、ヴィレハイムに到着してからはサクサクと話は進んだもんだよ。ガキどもから故郷を聞き出して、その故郷の管理者と連絡を取って、迎えに来させたり送り届けたりと。

「起きている時は大変だったが、眠っている赤ん坊と言うのは実に愛らしいな」

「ああ。体温が高いからか、こうして抱いていると気持ちが良いな」

「ええ、そうねえ~。ふふ。オーディンさんの言う通り心臓の鼓動を聞いて、安心して眠ってるわ」

さすがに喋れない赤ん坊はどうすることも出来なかった。今シグナムとシャマルとシュリエルが母親みてぇになって抱いている赤ん坊3人の今後は、人体実験施設の調査と、イリュリア研究者への尋問の結果次第だ。それまでは乳母を募って、そして育てさせるってことになった。

「もし見つからなかったらぁ・・・、オーディンさん、私と一緒に育てましょうね❤」

「なに!?」

「それは良い案かもしれん」

「シグナムまで何を言って・・・!」

「私たちは母親になるのか? 父親がオーディン・・・。悪くないかもしれない」

「シュリエルもか!?」

ま、もしそうなったらエリーゼとアンナが本気で怒るだろうな。けどそんな結末も見てみたいと思ったのは、オーディン達には秘密だ。




 
 

 
後書き
グッド・モーニング、グッド・アフタヌーン、グッド・イーブニング。
今話には一切関係ありませんが、

「Youtubeのアカウント、削除されちまったい!」

これがなかなかショックでしてね。また一からUPし直しと思うと、本気でヘコむ。
とりあえずは、このエピソード・ゼロを終わらせてからにしよう(泣)。
あ、今のところ予定通りで、あと3話で終了かと。

 
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