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万華鏡

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プレリュードその六


「そうよね」
「うん。そうだけれど」
「名前は」
「月宮琴乃っていうの」
「月宮さん?」
「あっ、琴乃でいいから」
 笑ってだ。琴乃はその眼鏡の少女にこう返した。
「そう呼んでくれていいから」
「じゃあ。琴乃さんでいいかしら」
「いいわ。それで貴女の名前は」
「水木っていうの」
「水木さん?」
「そう。水木里香っていうの」
 この名前をだ。彼女は琴乃に話した。
「宜しくね。同じクラスだしね」
「そうね。それにしても」
「それにしても?」
「水木さんって何か」
「あっ、里香でいいから」
 この少女水木里香もだ。名前でいいと琴乃に返す。
「そう呼んでね」
「うん。じゃあ里香ちゃんでいいかな」
 琴乃は微笑んでこう里香に返した。
「この呼び方でいい?」
「いいよ。それじゃあ私も琴乃ちゃんって呼ぶわね」
「宜しくね。それでだけれど」
「それでって?」
「始業式が終わったら早速ね」
 何があるかとだ。里香は琴乃に話すのだった。
「部活の勧誘があるからね」
「あっ、それがあるの」
「ええ。今丁度校庭でその準備がはじまってるから」
「私が登校してきた時はまだだったのに」
「始業式の間に出してね」
 それで用意をするというのだ。
「何か新入生の登校の邪魔にならないようにって」
「その気遣いでなの」
「そう。始業式の間に準備をするらしいのよ」
「成程ね。そうなの」
「ええ。それでね」 
 里香は琴乃にさらに話してきた。その話はというと。
「琴乃ちゃん何処の部活に入るの?」
「ええと。何処って言われても」
 そう言われてもだとだ。琴乃は首を捻って里香に答えた。二人で廊下を進んでいるがその周りは二人以外の新入生で一杯だ。二人は人ゴミの中を進んでいた。
 その中でだ。琴乃はこう里香に言ったのである。
「まだ決めてないの」
「そうなの」
「中学の時はバスケットボール部だったけれど」
「じゃあ高校でも?」
「どうしようかしら」
 首を捻りながらの返答だった。
「まだ考えてないけれど」
「そうなの」
「里香ちゃんはどうするの?」
 返す形でだ。今度は琴乃が里香に尋ねた。
「部活はどうするの?」
「ええと。実はね」
「実はって?」
「私中学の時部活に入ってなかったの」
 やや暗い顔になってだ。里香はこう琴乃に答えた。
「何処にもね」
「そうだったの」
「中学の時は塾に習いごとが多くて」
「部活に行く暇がなかったの」
「そうなの。塾は八条塾でね」
 そこに通っていたというのだ。八条グループが経営しているその塾にだ。
「あとお習字やそういうことも習ってたから」
「書道やってたの」
「あとはお茶もね」
「茶道?」
「それもしてたの」 
 こう話すのだった。 
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