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万華鏡

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第十四話 成果その十五


「だからダンスもメインだけれどな」
「だからなのね」
「ダンスは出来る様にしておかないとな」
「じゃあ太り過ぎはやっぱりよくないわね」
「動きが鈍るからな。それ以上にな」
「やっぱり痩せ過ぎも」
「痩せ過ぎたら筋肉がなくなるから」
 ダンスの為には筋肉が必要だ、その為痩せ過ぎもまたダンスにとってはよくないことになるのだった。まさに何事もだった。
「それも駄目だからな」
「ううん、バランスなのね本当に」
「ダンスの場合は高いスペックでな」
 バランスのレベルにも色々でダンスの場合はそうだというのだ。
「アイドルみたいな感じか?」
「四十八人いるチームの?」
「センター目指す感じでやってみるか?」
 美優は七割本気、三割冗談でこうも述べた。
「そうしてみるか?」
「食べてもいいけれど頑張れば」
「ああ、やってくれよ」
「うん、最近路上ライブでも何かいつも見てくれる人出て来たしね」
 この学園の軽音楽部はよく路上ライブを行う、プラネッツ達一年もそれが出来る様になってきていたのだ。つまり実践主義の部活なのだ。
「やってみるね」
「何でもやってみてよね」
 景子もこの考えだった。
「やっぱりそれからよね」
「私やっぱりやってみることが好きなのよね」
 微笑んでこう言った琴乃だった。
「というか立ち止まって何もしないとかね」
「それ琴乃ちゃんじゃないわね」
「結局勉強でもなのよ」 
 生粋の行動派なのだ。確かに琴乃らしかった。
「何もしないでいるとか好きじゃないのよ」
「そうよね」
「そう。好きじゃないのよ」
「だったらまずは食べて」
「ええ、動くわ」
「そうしてね」
 景子も琴乃に言った。そしてだった。
 琴乃はその日戻ってこう母に言った。
「お風呂に入る前にね」
「どうかしたの?」
「ちょっと。踊ろうかなって」
「ダンスの練習するのね」
「そうしようかしらって思ってるけれど」
「お部屋の中では出来ないわよ」
 母は娘にそれは禁じた。
「何処かにぶつけて怪我したり壊れたりしたら駄目でしょ」
「それはね」
「そう。それはよくないから」
「ううん、確かにそれは」
「他の場所でしなさい。お庭とかでね」
「お庭ね」
「ブレイクダンス?ひょっとして」
「それはちょっと」
 今のところプラネッツの専門外だ。プラネッツの今の音楽はロックにポップスだ。そうした音楽だからである。
 ブレイクダンス、即ちラップの系列はだというのだ。
「違うから」
「そう。じゃあ」
「お外でするわね」
「そうしてね。それで練習の前に」
「準備体操?」
「忘れたら駄目よ」
 それもだというのだ。
「さもないと本当に怪我するからね」
「そうよね。準備体操は必要よね」
「何でも身体を温めてからよ」
 母は今は強く言った。
「それから何でもね」
「準備体操をしないとね」
「温める意味以外にもね」
 準備体操の意味は他にもあった。
「ほぐすこともあるから」
「それ中学の時にかなり言われたけれど」
「水泳でもそうよ」
 このスポーツもだった。
「準備体操をしないと駄目だから」
「ダンスでも」
「極論すればお料理にもよ」
「そっちもなの」
「お母さんもそれはしていないけれどね」
 料理の前の準備体操はだというのだ。
「そこまではね」
「普通はしないわよね」
「けれど心構えはしてるわ」
 それはだというのだ。
「包丁も火も使うからね」
「お料理も危ないからね」
「そう。じゃあダンスの練習の前にはね」
「うん、準備体操もしっかりするわ」
「あとよかったらね」
 母はさらに言う。
「お風呂の後にはね」
「一杯?」
「その前によ。お茶ならいいけれど」
 琴乃が今言った一杯とは酒のことだ。だが母はそれが違うというのだった。
「ストレッチよ。お風呂の後はね」
「あっ、身体をほぐすのね」
「そして柔らかくするのよ」
「それよね」
「そう。身体が柔らかいとダンスも滑らかになるでしょ」
「私昔から身体柔らかいけれど」
 身体の柔らかさにも自信がある。バスケ部の時からその柔軟さについては周りからもよく言われてきている。
「余計になのね」
「そう、柔らかいに越したことはないわよ」
「それこそヨガ出来るみたいに?」
「そこまで出来る?柔らかく」
「無理かもね、それはね」
 琴乃はそこまではと少し苦笑いになって母親に答えた。
「幾ら何でも」
「まあそこまでは言わないけれどね」
「ダンスだからよね」
「そう、とにかくね」
 それでもだというのだ。
「ストレッチはしっかりしてね」
「うん、ダンスが滑らかになる様に」
「そして怪我もね」
 またこのことが話に出た。
「怪我もしない様にね」
「何でも怪我なのね」
「スポーツ選手でも第一は怪我をしないことでしょ」
 故障がちの選手は幾ら素質があっても大成しにくい。田淵幸一もその怪我の多さの為に名球界に入ることが出来なかった。
「だからよ」
「そういうことね」
「じゃあいいわね」
「ええ、準備体操とストレッチもね」
「忘れないでね」
 琴乃は母にはこの二つのことを言われた。とにかく琴乃は今は軽音楽部としてダンスにも励んでいた。それはただ踊るだけでなかった。


第十四話   完


                             2012・11・5 
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