| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十三話 テストの結果その九


「あの娘横浜ファンじゃない」
「うん、そうだけれど」
「お楽しみメニューってあの娘が決めてるのよ」
「あっ、お料理も作ってるの」
「お店の上って居酒屋でしょ」
「うん。白鯨ね」
 同じ家が経営している店だ。
「あそこから持って来てるのね」
「そうなの。それでお楽しみメニューはあの娘が決めてて」
「じゃあまさかベイスターズが巻けたら」
「お酒に会わないメニューが出て来るのよ」
「お客さんへの八つ当たり?」
「違うの。あの娘が適当に考えて出すメニューがいつもそうなるのよ」
 ベイスターズが負けると酒に合わないメニューが出て来るというのだ。彼女が意識せずに出すそれがだ。
「何故かね」
「ある意味凄いわね」
「とにかく。ベイスターズが負けている時はね」
「お楽しみメニューが駄目なのよ」
「そう、鬼門だから」
 まさにそれだというのだ。
「止めた方がいいわ」
「わかったわ」
 琴乃も里香のその言葉に頷いた。そしてだった。
 この日は歌と酒だけに集中した。それはバンドの練習も兼ねていた、それで満足した顔で家に帰るとすぐに母にこう言われた。
「飲んできたでしょ」
「わかる?」
「顔真っ赤だから。それに」
 母は琴乃が満足している顔であることも見て言う。
「歌ったわね。カラオケね」
「ちょっと皆と言ってきたの」
「部活の皆となのね」
「うん、テストも終わったからね」
「楽しんできたのならいいわ。けれどね」
「けれどって?」
 琴乃はリビングのソファーのところに鞄を置いて制服の上着を脱ごうとする。そうしながら母に対して問うたのだ。
「飲み過ぎとか?」
「それもあるけれど今はね」
 母は上着に手をかけた娘にさらに言った。
「ここで服は脱がないでね」
「自分のお部屋でってことなのね」
「そう。ここで脱いだら駄目よ」
 母が言うのはこのことだった。
「ひょっとしなくても脱ぐつもりでしょ」
「あっ、そういえば」
「まずはお風呂入ってきなさい」
 娘にこう告げた。
「それでお酒抜いてからね」
「着替えてよね」
「晩御飯はあるから」
「お父さん達はもう食べたの?」
「とっくに食べたわよ」
「そうなの」
「だからまずはお風呂に入ってお酒を抜いて」
 そしてだというのだ。
「晩御飯にしなさい。いいわね」
「もう八時なのね」
 リビングにあるそれを時計を見ればそうした時間だった。
「何か早いわね」
「随分歌ってきたみたいね」
「それで飲んできたけれど」
「スタープラチナね」
 母はその店の名前も言った。
「そこよね」
「わかるの?」
「わかるわよ。フリータイムフリードリンクで九八〇円ね」
 母はカラオケのお金の話もした。
「というかあのお店って八条学園の生徒は皆行くのよね」
「他の学校の子も多いわよ」
「それでも昔からよ。あのお店は八条学園の生徒の溜まり場になるのよね」
「八条百貨店とかもよね」
「ええ。お母さんの時からよ」
 上着を着なおした娘に言う。
「懐かしいわね。けれどとにかくね」
「まずはお風呂ね」
「ここで脱いだら駄目よ。女の子は人前で着替えるものじゃないから」
「お母さんいつもそう言うわね」
「当たり前よ。お父さんや幹也に見られたらどうするのよ」
「それはちょっと」
「女同士でも更衣室でだけよ」
 母の口調は普段とは違い厳しい。
「そしてお家の中だとね」
「お部屋の中で着替えるのね」
「後、絶対に服は着ること」
 このことも言うのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧