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万華鏡

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第十二話 来てくれた人その十二


 景子はあらためてこう言った。
「八条神社はお馬さんだけれどね」
「その流鏑馬で乗るお馬さんだよな」
「そう、そのお馬さんも大事にされてるけれどね」
「甘やかされてはいないよな」
「ええ、それはないわ」
 美優に対して話し他の三人にも同時に説明する。
「だって。流鏑馬は人馬一体でないとね」
「できないよな」
「射る人も心技体をかなり鍛えないといけないけれど」
「お馬さんもだよな」
「そう。だからね」
「大事にはされててもか」
「極端に甘やかされてはないの」
 そうしては流鏑馬なぞ出来ないからだ。
「太らない様にもされてるわ」
「そういうことなのね」
「そう、太ったら運動に影響が出るから」
 このことは人も馬も変わらない。
「それでなの」
「じゃあ八条神社のお馬さんはか」
「毎日ちゃんと運動して食べ物にも気を使ってね」
「体調管理もされてるんだな」
「そうなってるの」
「そうか。大事にされてるのと甘やかされてるのって違うんだな」
「そうみたいね」
 景子も言う。彼女達は次第にだがそうしたこともわかってきていた。
 こうした話もしてあらためて他の四人に言った。
「神社も色々あるからね」
「ただお参りしてお賽銭出したりするだけじゃないのね」
「そうよ、本当に色々あるから」
 琴乃にも話す。
「何かとね」
「そうなのね」
「そう。とりあえず流鏑馬のお話はいい方向に向かうことを願うわ」
 これは景子の切実な願いだった。
「八条神社も助かるから」
「ええ、本当にね」
 琴乃も景子のその言葉に頷く。こうした話をしてだった。
 数日後景子は四人をその八条神社に呼んだ。そして四人は神社の境内において思わぬ展開を目の当たりにした。
 そこには銀色の豊かな髪に緑の瞳の美女がいた。背は高くすらりとしている。
 白い肌に中性的な顔立ちで鼻は高く彫がある顔立ちだ。どう見てもだった。
「日本の人じゃないんじゃ」
「そうよね」
 里香は戸惑いながら琴乃の言葉に頷いた。
「ヨーロッパの人よね」
「アメリカかも知れないけれど」
「白人の人よね」
「そうよね」
「あっ、ハーフの人らしいの」
 景子が戸惑う四人に話した。戸惑っているのは琴乃と里香だけでなく美優と彩夏もだったのである。
「銀月聡美さんっていうの」
「ギンヅキさん?」
 彩夏は思わず片仮名で言ってしまった。
「ええと、どの国の人なの?」
「ギリシアです」
 本人から返事が来た。やや硬質で澄んだ声色だった。
「日本人とギリシア人のハーフです」
「あっ、本当にハーフなんですね」
「そうです」
 微笑んで彩夏に話す。
「ギリシアにいた頃から弓をしています」
「八条大学の学生さんなの」
 景子が聡美の詳しいことを四人に話す。
「ギリシアからの留学生でアーチェリー部に所属してるの」
「じゃあ弓はばっちりなのね」
「そうなの。実際に馬に乗ってそれで射てもらったけれど」
「できたのね」
「ばっちりだったの」
「馬にも乗れるのね」
「そうなの」
 景子は目を輝かせて琴乃に話す。 
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