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万華鏡

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第十二話 来てくれた人その九


「俳優の人とか」
「そうでしょ。あるでしょ」
「歌手の人がヤクザ屋さんの組長さんの前で歌ったりとか」
「うん、あるわ」
「結構あるのよ。昔は特にね」
 景子はそうした事情も話していく。
「俳優の人がそっちの人に顔を切られたりって話もあったし」
「それどうしてそうなったの?」
「どうしてそんなことに」
「何でも映画会社の社長と揉めて」 
 誰が黒幕かもここで出た。
「それでなの」
「ああ、それで」
「それでなのね」
 琴乃と彩夏もそれでわかった。
「その人顔を切られたのね」
「ヤクザ屋さんに」
「そう。それで神社とかお寺でも賭場とかあとテキ屋も」
 祭りの時に出店を出すその業界もだというのだ。
「ヤクザ屋さんがやってること多かったから」
「テキ屋ってあれだよな」
 美優がテキ屋と聞いてこう言った。
「たこ焼きとかタイ焼きとか」
「そう、ああしたお店もヤクザ屋さんがやるから」
「それでか」
「今はかなり違うけれどね」
「そっちもヤクザ屋さんの世界だったんだな」
「神社とかお寺には稼いだお金の幾らかが入ったの」
「上納金だよな」
 美優は景子の話からこう考えて彼女に述べた。
「それって」
「そうなるわよね。賭場でもね」
「場所を出してるからか」
「そう、ショバ代になるかしら」
 景子自身もこう言う。
「それにね」
「何かお寺とか神社もやばい世界なんだな」
「奇麗ごとだけじゃなかったのよ」
 景子は微妙な顔になっていた。
「世の中自体がそうかも知れないけれどね」
「何かお寺とか神社へのイメージが変わるな」
「キリスト教の教会でもね」
 そちらの話にもなる。
「寄付とかでもね」
「教会っていうと」
「これは日本の話じゃないけれど」
 日本の話ではないがそれでもだというのだ。
「イタリアとか。シチリアとかね」
「マフィアよね」
 里香はシチリアと聞いてすぐにこの組織の話を出した。
「あの人達がなのね」
「シチリアっていうかあの辺りってマフィアが全部取り仕切ってるらしいから」
 ナポリはカモラという別系統の組織になるがどちらにしても犯罪結社だ。イタリア南部は彼等に全てを握られているのだ。
「教会だってね」
「その人達の寄付で」
「そう、建てられてるから」
 そうなっているというのだ。
「けれどそれは見て見ぬふりらしいわよ」
「日本よりも酷くない?」
 琴乃はその話を聞いてこう景子に言った。
「あんまりじゃない」
「そう思うわよね」
「何か酷いわね」
「私もそれ聞いてね」 
 景子もこう言う。
「有り得ないって思ったわ」
「そうよね、やっぱり」
「景子ちゃんの神社ってそこまではないわよね」
「まあ。お布施はあっても」
 そもそもこうしたことやお祈りを拒むことはできない。それを拒めば神社も寺も成り立たないので難しいところである。
「流石にそこまではね」
「ないわよね」
「そう、私のお家って五百年程前に建てられたの」
「古いわね」
「神社だとまだ新しい方よ」
「そうなの」
「そう。五百年位だとね」
 まだ新しいというのだ。 
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