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万華鏡

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第十一話 流鏑馬その八


「私が喋っても多分全然違う言葉になるわ」
「実は私もね」 
 そして彩夏もだった。
「やっぱり。秋田の言葉も」
「無理か?」
「多分ね、もうずっと神戸にいるから」
 だから喋れなくなっているというのだ。
「とにかく言葉って喋ってないと忘れるからね」
「あたしも父ちゃんに言われるよ」
「美優ちゃんもなの」
「沖縄の言葉もう忘れたってな」
 そう言われるというのだ。
「あたしも関西にずっといるからさ」
「言葉がどうしてもね」
「関西になるんだよな」
「神戸にね」
「まあとにかく。言葉もそうだけれどな」
「うん、流鏑馬ね」
「来るといいよな」
 美優は彩夏に応えながら景子を見て言う。
「本当に誰かな」
「ネットって世界中から見られるよね」
 景子は視線を上にやって考える顔になり返した。
「だったら外国の人とかも」
「やっぱりその可能性はあるよな」
「ゼロではないけれど」 
 世界で見られるからにはだ。だが、だった。
「日本の神事だからね」
「日本人だよな」
「キリスト教の人が参加してもいいけれどね」
 当然キリスト教以外の宗教もだ。日本の神道はそうしたことについては相当に寛容である。
「ただ。問題は出来るかどうかで」
「誰かいないかしら」
「いたらいいよな、本当に」
「一人でも」
 既に一人いるからだというのだ。
「神社としても正規に雇うし」
「正社員か?」
「職員さんだけれどね」
 八条神社では働く人はこの呼び方になるらしい。
「そうなるわね」
「そうか。職員さんか」
「確かに神主さんの資格があれば言うことなしよ」
「神主さんってどうしたらなれるんだよ」
「普通に大学でそうしたコース受けたりとか」
 景子は神主のなり方を具体的に話した。
「八条大学にもあるわよ」
「あの大学にもか」
「普通は皇學館大學だけだけれど」
 三重にある。そうした意味でかなり特殊な大学だ。
「うちの大学にもあるらしいのよ」
「そうなのか」
「そう、それにね」
「それに?」
「神道だけじゃなくて」 
 その神主のコースだけでないというのだ。
「仏教の各宗派にね」
「お坊さんのコースもあるのか」
「あとキリスト教の神父さんも牧師さんもね」
 キリスト教のコースもあるというのだ。
「天理教のもあるし」
「何か色々あるんだな」
「宗教学部のコースがあってね」
 八条大学独特のコースだ。
「そこで取れるのよ」
「何か凄い学校だな」
「本当に特別だから」
 景子はその宗教学部について話す。
「色々な宗教の勉強も出来るのよ」
「じゃあ景子ちゃんもか」
「お兄ちゃんもそうだったし」
 兄のことも話に出す。
「八条大学宗教学部で神主さんの資格取ったのよ」
「そうか」
「そう。本当に何でも取れるから」
「というかそんな学校他にないわよ」
 里香は八条大学宗教学部のそのあらゆる神職の資格が得られる状況について少し驚いた顔で景子に対して言った。 
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