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万華鏡

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第十話 五月その十二


「今は違うけれどね」
「脚が長くなったのね」
「そうみたい。そういえば脚が短い人tっていうと」
「何かあったの?」
「ほら、戦国大名の今川義元」
 戦国時代の有名人でもある。公家そのままの格好をして都の文化を深く愛し親しんでいたことでも知られている。
「あの人は脚が短かったのよ」
「あっ、その話弟から聞いたわ」
「弟さんから聞いたの」
「うちの弟戦国時代のゲームもするから」 
 そこから得た知識だというのだ。
「今川義元って脚が短かったって」
「聞いたのね」
「生まれた時あんまりにも手足が短くて驚かれたとか」
「そうそう、そうらしいのよ」
「それで馬に乗るのが下手だったって」
 この話はよく言われている。
「聞いたけれど」
「みたいね。まあ馬に乗るのもね」
「脚が長い方がいいのね」
「そう。だから美優ちゃんって結構いけると思うわ」
 美優は乗馬もできるというのだ。
「あと琴乃ちゃんもね」
「私も?」
「そう、琴乃ちゃん運動神経いいから」
 だからだというのだ。
「馬に乗れると思うわ」
「乗馬ね」
「八条神社って流鏑馬もするから」
 馬に乗り的を射る、神事の一つであり重要な儀式の一つでもある。
「まあこれは乗馬も弓道も相当できないと駄目だから」
「馬に乗って弓で的を射るのよね」
「一朝一夕でできるものじゃないのよね」
「うん、私乗馬も弓道もしたことがないから」
 両方したことがなくてどうかというのだ。
「絶対に無理よ」
「それは今度ね」
「今度って?」
「大学の先輩がするから」
 こう琴乃に話す。
「うちの大学のね」
「八条大学の」
「そう、確か」
 ここで景子は言った。
「八条神社の一番上の娘さんでね」
「その人がなの」
「その人弓道部と乗馬部にいてね」
 流鏑馬に必要な二つの技を身に着けているというのだ。
「それでなのよ」
「ううん、何か凄い人がいるわね」
「本当に流鏑馬って難しいのよ」
 景子は真剣な顔で琴乃に話す。
「馬に乗りながら弓矢を放つのよ」
「弓矢っていうと」
「両手使えないでしょ」
「うん、そうなるわよね」
「手綱が使えないから」
 だからだというのだ。
「相当な馬術でないとね」
「落馬するわよね」
「しかもね」
 それに加えてだった。
「弓矢で的を射るのもね」
「私弓道については詳しくないけれど」
 琴乃はこう前置きしてから弓矢のことを話した。
「的を射るのって難しいわよね」
「うん、かなりね」
「それでもよね」
「そうよ。馬で駆けながらその真ん中を射抜くのよ」
「滅茶苦茶難しいわよね」
「駆けながらでしかも馬に乗ってると揺れるから」
 正確に射るには極めて難しい、流鏑馬というものは生半可技量では決して出来るものではないことをかなり強く話す景子だった。
「それに顔も正面を向いてないから」
「的を見てるから」
「このことでも乗馬の技術が要求されるのよ」
「乗馬も弓道も相当じゃないと」
「絶対に無理よ」
「ううん、私はとてもね」
「私も絶対に無理よ」
 話す景子もだというのだ。 
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