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万華鏡

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第七話 お泊り会その十三


「寝るまでお話しよう」
「そうね。じゃあね」
 景子が琴乃の言葉に応える。その顔は真っ赤になっている。
 ワインのせいで真っ赤になっているその顔で琴乃にこう言ったのだ。
「今からシャワー浴びてね」
「お風呂は明日にしよう」
「朝によね」
「朝に絶対にお酒残ってるから」
 五人共かなり飲んだ。その結果だった。
「明日の朝はね」
「お風呂なのね」
「お風呂に入ってね」
 そしてだというのだ。
「二日酔い抜こう」
「そうすればいいわね、確かに」
「後ね。お風呂入る前に」
 琴乃はさらに言う。
「走ろう。トレーニングでね」
「ああ、それいいな」
 美優も真っ赤な顔で言う。五人共本当にかなり酔いしかも口調もろれつが回らなくなっている。その物腰もだ。
 完全に酔っている。だがそれでも意識は確かでこう言ったのである。
「この状態でお風呂入ったら身体に悪いしな」
「特に心臓にね」
「だから今はな」
「シャワーで済ませてね」
「明日の朝だな」
 その朝にだというのだ。
「走ってからな」
「うん、お風呂ね」
「そうするか。じゃあな」
 美優は琴乃の言葉に頷く。そうしてだった。
 この日はそれぞれシャワーを浴びてパジャマに着替えて夜遅くまでおしゃべりをして寝た。この日はこれで終わった。
 そして次の日。朝起きるとだった。
「うっ、これは結構」
「残ってるわね」
「そうね。予想以上にね」
「お酒が」
 五人共見事に二日酔いだった。起きると頭が痛い。
 それは琴乃も同じだ。だがそれでもあえてこう言うのだった。
「で、ここでね」
「走る?」
「走るの?」
「そう。そうしてお風呂に入ればね」
 そうすればだというのだ。
「お酒はもう消えるから」
「それで部活に気持ちよく行けるのね」
「お酒残さずに」
「そう。お酒もね」
 ランニングと風呂、この二つで汗をかいてすっきりしてだというのだ。
「もうお風呂からあがるとね」
「すっきりしてるのね」
「二日酔いにはこれが一番よ」
 適度な運動と入浴だというのだ。
「どんな二日酔いでも消えるから」
「じゃあやるか」
 美優は暗い、うんざりとした様な顔だがそれでも起き上がりそうしてだった。パジャマから緑のジャージに着替えて言うのだった。
「今からな」
「うん、そうしよう」
 琴乃も琴乃で黄色いジャージだった。その姿でだった。
「これで二日酔いなんて一発だから」
「いいこと聞いたわね」
「そうね」
 景子と彩夏も着替えながら話す。
「今度から二日酔いの時はね」
「ランニングとお風呂ね」
「これで本当にお酒が消えたら」
「していけばいいね」
「そうなの。お酒飲んですぐの運動とかお風呂は危ないけれど」
 これは命に関わる、しかしだった。
「二日酔いだとね」
「もう大丈夫なのね」
「そうなったら」
「今度からね」
 こう言って全員で着替えて琴乃の家を出る。そして準備体操をしてから琴乃は里香の背中をぽんと押して言った。
「無理しないでいいからね」
「一生懸命走らなくてもいいの?」
「二日酔いだから」
 その残っているものを抜くからこそだというのだ。
「そんなにね」
「そうなの」
「そう。こうした時の運動はあくまでゆっくり」
 決して無理をしないというのだ。
「そうするものだからね」
「わかったわ。じゃあ今は」 
 里香も頷いてそれからだった。五人でゆっくりと走る。そうして風呂に入って酒を抜いてから部活に向かうのだった。


第七話   完


                               2012・8・30 
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