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八条学園怪異譚

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プレリュードその九


「だって愛実ちゃん凄くいい娘だから」
「そうなの。だけれどね」
「何かお母さん今日変なことを言うね」
「今の愛実ちゃんにはそう思えるかもね」
 お母さんは少し微笑んでこうも言った。
「けれどね。人は誰でもいい面と悪い面があるのよ」
「愛実ちゃんにも?」
「聖花ちゃんだって悪い面があるでしょ」
 聖花自身にもだ。お母さんは言った・
「そうでしょ。あるでしょ」
「そういえば私って」
 聖花はお母さんの言葉を聞いて自分のことを考えた。そのうえでだった。
 こうだ。紅茶を飲む手を止めてお母さんに答えたのである。
「忘れ物結構するわ」
「そうでしょ?そのことは気をつけなさいね」
「うん。私もそんなところあって」
「愛実ちゃんにも何か悪いところがあるわよ」
「そんなことあるとは思えないけれど」
「だから。人にはいい面と悪い面があるの」
 まただ。お母さんは聖花にこのことを話した。
「誰にでもね。勿論お母さんにもね」
「そんな。お母さんには」
「あるのよ。これでも焼餅焼きだから」
「そうだぞ。母さんの焼餅はな」
 どんなものかとだ。ここで言ってきたのはお父さんだった。
 困った様に笑ってだ。こう言ったのである。
「凄いんだぞ。結構な」
「そうなの」
「お父さんが女の人にちょっとでれでれしたら凄く怒るんだぞ」
「お父さんがそうなるからでしょ」
 お母さんは口を尖らせてそのお父さんに言う。
「全く。ちょっと奇麗なお客さんが来たら鼻の下を伸ばして」
「おい、そうなってるか?」
「なってるわよ。全く女好きなんだから」
「しかし浮気はしていないぞ」
「そんなことしたら許さないわよ」
 早速だった。お母さんはその焼餅を見せた。しかもお父さんもそうしたところを見せた。
 少し恥ずかしいところを見せたがだ。お母さんは聖花にこう言った。
「だから。誰でもね」
「そうなの」
「そうなの。いい面もあれば悪い面もあるの」
「全部いいっていう人いないの?」
「いないわ」
 お母さんはこう答えた。
「人ならね」
「人ならなの」
「人は。完璧でないから人なのよ」
「完璧だったらどうなるの?」
「神様になるわ」
 人ではなくだ。そうした高い存在になるというのだ。
「そんなことになったらね」
「完璧だと神様になるの」
「聖花ちゃんは神様をその目で見たことあるかしら」
「ないよ」
 神は人の目で見えるものではないのかも知れない。確かに存在しているがそれは人の目で見るにはあまりにも高位であるがゆえに。人の目で見ることはできないのだ。
 それでだ。お母さんは言うのだった。
「そうよね。ないわよね」
「神様っているのよね」
「いるわ」
 神の存在をだ。お母さんは否定しなかった。むしろ肯定していた。
「確かにね。いないっていう人はいても」
「仏様もだよね」
「いるわよ。そのこともきっとわかる時が来るわ」
「けれど人間は神様じゃないのね」
「なれるかも知れないけれどね」
 だが、だ。人間は人間だというのだ。完璧ではない。 
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