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八条学園怪異譚

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プレリュードその五


 愛実は丸いきつね色のパンを食べながらこう聖花に言った。緑の芝生と青い川の中にそのきつね色のパンが点の様に存在している感じだ。
 その中でだ。白いパンを食べている聖花に言ったのである。その言った言葉は。
「このパン美味しいね」
「有り難う。そう言ってくれるんだ」
「だって。本当に美味しいから」 
 笑顔での言葉だった。嘘偽りのない。
 その笑顔でだ。愛実は聖花に言ったのである。
「このパンね。中のクリームだけれど」
「どう?そのクリーム」
「うん、凄く美味しい」
 クリームもだ。そうだというのだ。
「こんな美味しいクリームパンはじめてだよ」
「お父さんとお母さんってパン職人なんだ」 
 自慢げにだ。聖花は愛実に語った。その白く丸いパンを食べながら。
「お父さんの家が元々あそこにあってね」
「パン屋さんだったの?」
「そうなの。そこにお母さんがアルバイトで入って」
 それが縁でだというのだ。
「結婚してね。それでお母さんも勉強してパン職人になったの」
「ふうん。そうなの」
「愛実ちゃんのお家もそうだよね」
「あっ、うちはお母さんが元々同じ商店街の人で」
「そうだったの」
「そうなの。それで子供の頃からお友達で」
 愛実も聖花もまだ子供なので知らなかった。幼馴染みという言葉は。
 それでだ。愛実はこの表現を使ったのだ。友達という言葉を。
「仲良くしててね。大人になってね」
「結婚したのね」
「うん、そうなの」
 このことをだ。愛実はにこりと笑って話した。
「そうなったの」
「そうなの。それじゃあ」
「それじゃあって?」
「愛実ちゃんはお友達同士からできたのね」
 こうだ。聖花は愛実を横に見て言った。自分より少しふっくらとした感じで小柄な彼女を見て。
「愛実ちゃんのお姉ちゃんも」
「そうだね。私はそうなるよね」
「お友達同士でも結婚できるんだね」
「そうみたいね。けれど女の子同士はできないのよね」
「女の子同士だとお友達のままなんだね」
「うん、そうだね」
 こう笑顔で話すのだった。
「だから私と聖花ちゃんもね」
「お友達のままよね」
「けれど。凄く仲のいいお友達になれるよね」 
 ここでだ。愛実はこう聖花に言った。
「誰よりもね。ずっと仲のいい」
「うん。誰よりも信じ合えてね」
「誰よりも大切にし合える」
「そうしたお友達になれるよね」
「絶対にね」
 こう二人でだ。笑顔で話をする。そして。
 聖花は自分が食べている白いアンパン、粒あんのそれを食べながらだ。愛実に今度はこんなことを言った。
「ところでね」
「ところでって?」
「愛実ちゃんのお姉ちゃんだけれど」
「凄く奇麗でしょ」
 顔を晴れやかなものにさせてだ。愛実は聖花の今の言葉に応えた。
「そう思うよね」
「うん。何かお人形さんみたい」
「芸能プロダクションの人から声がきたりするの」
「えっ、タレントさんになるの?」
「ううん。お父さんもお母さんもまだ答えてないから」
 定食屋を経営している二人は即答していなかった。芸能界や子役にまつわる話を聞いていたので娘をそうした世界に入れていいのかと躊躇しているのだ。
「それでお姉ちゃんはまだタレントさんじゃないよ」
「そうなの。けれどよね」
「凄く奇麗よね」
「あんな奇麗な人いないよね」
「まだ小学校の五年だけれど」
 愛実の姉はその学年だ。尚彼女も聖花もまだ幼稚園の低学年だ。
「凄く奇麗で私の自慢のお姉ちゃんよ」
「十一歳よね」
 聖花は今度は年齢の話をした。 
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