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八条学園怪異譚

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第一話 湧き出てきたものその十六


「自分自身の心の中にあるね。戸惑いやそうしたものなのよ」
「そうなの」
「自分自身が一番手強いのかもね」
「私自身が?」
「そう。自分の中にある焦りや戸惑い」
 愛子は愛実に述べていく。愛する妹に対して。
「テスト以外だと」
「他のことについてもなの?」
「当たり前よ。何かをするのは自分自身で」
「私自身だから」
「そう。ほら、嫌な心って色々あるじゃない」
 具体的な話にもなる。その心がどういったものなのか。
「憎んだりとか。怒ったりとか」
「怒ることもなの」
「そうよ。他には妬んだりとか」
 無意識のうちにだ。愛子も愛実にこの感情のことを話した。
「そうした感情をね。抑えたりね」
「そうすることもなの」
「そう。自分自身に、敵に勝つことなの」
「そうなの」
「自分に負けないでね」
 優しいが確かな声でだ。妹に告げたのである。
「そうしたら終わりだからな」
「うん、それじゃあ」
「愛実ちゃんはいい娘だから」
 少なくともその心にはいいものが非常に多い。お世辞にも強いとは言えないが。
 姉は妹のそうした心もわかっていた。だからこそ言うのだった。
「しっかりしてね。そこはね」
「しかりとして」
「そうしていけばいいから。自分に負けないでね」
「若し負けたらどうなるの?」
「その時それぞれだと思うけれど」
 一概にどうなるとは愛子も言えなかった。だがそれでも言うのだった。
「ただね。いい結果にはならないから」
「やっぱりそうなの」
「特に。誰かを妬んだり憎んだりしたら」
「その時はなの」
「一番よくない結果になると思うわ」
 こう妹に話した。
「だから気をつけてね」
「そうするね。絶対に」
「じゃあ食べましょう」
 見れば愛実はそのステーキとカツを食べる手を止めていた。そうして姉の話をじっと聞いてそのうえで頷き応えていたのである。
 その妹にだ。姉は微笑んでこう告げたのだ。
「その自分自身に勝つ様にね」
「あっ、そうね。それじゃあ」
「食べて力をつけてね」
 これもだ。只の力ではなかった。
「愛実ちゃん自身に勝てる様にね」
「私勝つから」
 今は試験だけを見てだ。愛実は答えた。
「私自身にね」
「そうしてね。それで明日だけれど」
「試験のこと?」
「聖花ちゃんも一緒よね」
 この名前をだ。愛子はここで出してきた。
「あの娘も一緒よね」
「聖花ちゃんの成績だとずっと上の高校に行けると思うけれど」
「八条高校だと特進コースよね」
「八条高校の特進コースっていったら」
「全国トップクラスよね」
「そう。あそこは凄いの」
「クラスで一番だからね。聖花ちゃん」
 聖花の成績のことは愛子も知っていた。付き合いの親密さ故に。
「公立でもトップ行けるわよね」
「けれど。お家がパン屋さんだからって」
「高校は商業科なのね」
「それで大学は」
「聖花ちゃんって弁護士さんになりたいって言ってるわよね」
「うん。だから」
「成程ね。大学は法学部なのね」
 弁護士は法律を扱う仕事だ。だから法学部になる。
「凄いわね。先のことまで考えてるの」
「そうなの」
「聖花ちゃんやっぱり凄いわ」
 愛子はにこりとして彼女のことを褒める。しかしその言葉がだ。 
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