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有栖キャロの小学校物語

作者:blueocean
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第19話 魔導師がやって来ました………(中編)

「ちっ、この場所を仲間に見つかる前に見つけなくちゃいけないのによ………」

狼に指示を出し続ける男。
ジランドは苛々しながらもキャロ達6人を懸命に探していた。

(くそっ、手に入れた情報は回さず止めているがそれにも限度がある。早くしないと他の奴にも気づかれる………)

この焦りと子供だという考えが、捜索もうまくいっていない理由である。
狼達は商店街をただ単に走り回っている。

「くそ………どこにいる!!出てこいガキ共!!」

遂には大きく叫んでしまう始末。
最初の余裕は全くなかった………










「さて先ずは整理するぞ。狼に関しては問題ない。エリオ達の話と実際の狼達を見て分かったが、あの狼達は地球の犬科と変わらないみたいだ」

そう話し始めるエローシュ君。この顔になるとエローシュ君は頼りになります。

「今、俺のバックにはさっきの唐辛子煙幕に加え、犬の嫌いな臭いを出す『ワンちゃんホイホイ』がある。これをうまく使ってあの狼達を一点に固め動けなくする」
「エローシュ君って勉強道具を入れてないのにランドセルが重いから中に何を入れているんだろうと思ってたけど、そう言うのが入ってるんだね」
「ああ、全てたぬき印の商品だぜ!」

たぬき印を作っているのはいったい誰か気になってきました………

「でも誰がその狼を誘導するの………?」
『僕がやる』
「佐助頼めるか………?数はそんなに無いから出来れば一回で全部一ヵ所に集めたい」
『エローシュそれは無理があるわよ!!』
『エローシュ、僕も一緒に………』
「駄目だ、エリオには他にやってもらう事がある。むしろ一番酷かもしれない」
『何………?』
「敵の足止めをしてほしい。狼から気をそらしてくれ」
「エローシュ君!!」
『無茶よ!!いくらエリオだって大人の魔導師相手に実戦なんて………』

私も同じ意見です。いくらなんでも無理があります!

『分かった、任せてエローシュ』
「『エリオ君!?』」

まさかのエリオ君の言葉に通信しながらですが、ルーちゃんと声が重なってしまいました。

「悪い、魔導師を知っている奴にしか頼めない事だったからさ………」
『ううん、むしろ望むところだよ、レイ兄やゼストさんとやってきた事は無駄じゃないって所を見せてあげる』
「何あいつ、凄くかっこいいんだけど………イケメン主人公なんですけど………」
「あんたとは大違いね」

夏穂ちゃんのツッコミに少し落ち込むエローシュ君でしたが、直ぐに顔を上げ、再び真面目な顔になりました。

「ならエリオ、危険だと思うが頼むぞ、足止めだけで良いから」
『分かった』
「ルーちゃんはエリオの援護を」
『役に立てるか分からないけど、やってみるわ』
「じゃあ3人共頼むぞ。佐助は成功したら連絡を頼む」
『了解』

話を終えたエローシュ君はトランシーバーの電源を切った。

「エローシュ君、私は………?」
「キャロちゃんは最後の保険だ。あの男がどのくらい凄いのか全く分からない以上、いざって時に出せる切り札が必要だからさ。キャロちゃん、その竜は強いんでしょ?」
「うん、フリードは強いよ!」
「ならみんながピンチになったら時指示を出すからその時は頼むな」
「うん、分かった!」

切り札………いい響きですね。

「エローシュ」
「おっ、流石速いね佐助」

2階にいたはずなのに窓から現れる佐助君。
エローシュ君からワンちゃんホイホイを受け取りました。

「ここ2階だよね………?」
「うんその筈ですけど………」

私と真白ちゃんは驚きながら互いに話しました。

「じゃあ任せたぞ」
「心得た………」

そう言うと再び視界から消える佐助君。

「えっ!?」
「消えた………」

「ああそっか、2人は佐助の家の事聞いてなかったっけ?」
「ちょっとエローシュ、流石に本人の許可無く言っちゃ………」
「夏穂、大丈夫だよ。佐助だって別にいいって言ってくれるさ」

そう言って私と真白ちゃんの方を向くエローシュ君。

2人の会話を聞くととても重要な話みたい。
一体何の話だろ………?

「佐助の家はな、代々続く忍者の末裔の家なんだ」












「くそっ、くそっ!!」

何時までも見つからず地団駄を踏むジランド。

「ターゲットを見つけたときは楽な仕事だと思ったのによ………!!」

そう思い返し歯軋りをする。

「見つけたら男のガキはその場で殺して、女のガキは好き者に高値で売り付けてやる。結構可愛いガキが多かったからな………。これで俺は幹部に金がたんまり………ぐふふ………」

嫌らしい笑みを浮かべながらそんなこと思う。
そんなところに………

「見つけた!!」
「あっ?」

自分の身長ほどある槍を持ったエリオが現れた………








「ガウウウウ………!!!」

唸りながらこちらの様子を見る狼。

「やはり賢い………」

いきなり道の真ん中に現れた佐助に狼達が徐々に集まってくる。

「獲物を確実に仕留めるため逃げ場を無くす………よく調練されている」

佐助は狼の動きに感心しながら制服のポケットに手を入れ、周りを見渡す。

『佐助、我ら猿飛一族は名を変え一般人と装いながらも主に尽くしてきた。自身の力を使うのは自身の主の為だけにしろ、それ以外は許さん』

佐助の父に小さいときから教えられてきた事。

「父さんごめんなさい………」

そう呟きながら佐助はクナイを構える。

「ウウウウ………ガウウウ!!!!」

リーダー各の声が響いた瞬間、四方に展開していた狼が一斉に襲いかかってくる。

「だけど大したこと無い」

そう言いながらクナイを電柱に向かって投げ、引っかけると、クナイに繋がれていたワイヤーを高速で巻き上げた。

今の佐助は両腕に腕輪をつけている。
その中にワイヤーが中にあり、メジャーのように伸ばしたり瞬時に仕舞うことが可能なのだ。

そしてその強度は強く、大の大人がぶら下がっていても切れることがない。

佐助はそれをクナイに巻き付け使用していた。

襲ってきた狼をワイヤーを使って飛ぶことにより狼達は互いにタックルぶつかりあう。

「こっちだ」

再び地面に下り、余裕そうにゆっくり歩く。

「ガウウウウウ!!!」

狼達は怒りに任せ、再び佐助へと向かった………






「おらっ!!」

降り下ろされたデバイスの剣をエリオはバックステップで避け、槍を回しながら腰に横薙ぎに叩き入れた。

「ぐうっ!?」

ジランドは思わず下を向きそうになるが、目線をエリオから離さず、エリオの追撃の突きを避けた。

「調子に乗るなぁ!!」

蹴りを腹に入れ、エリオの動きを鈍らせる。

「死ねぇ!!」

大きく降り下ろした斬撃はエリオを真っ二つにするはずだったが、エリオは何とか槍を構え受け止めた。

「うっ!?」

大人と子供。どうしても力の差や体の大きさで差が出来てしまう。
剣を受け止めたのはいいが、重い攻撃に思わず膝を着いてしまった。

「いいのか止まってて?」

エリオが動けないのを良いことに何度も何度も叩きつける。

(………大丈夫、攻撃は見える!)

そんな状態でもエリオは冷静だった。

(こんな攻撃レイ兄に比べれば全然遅いし、ゼストさんに比べれば全然軽い。落ち着け………実戦でもいつも通りやれば問題ない………)

攻撃を耐えながらも強張った自分の心を落ち着かせる。

「へん、そろそろ持たないだろ………?止めを指してやる!!」

先程よりも大きく振りかぶり、力一杯振り下ろそうとする。

(今!!)

そんな男の脇を稲妻が通りすぎたように黄色い閃光が通り過ぎた。

「なっ………」

腹部を抑えながら通り過ぎたエリオを見る。
ジランドの腹部を着ていたバリアジャケットごと斬り裂いていた。

「お前は一体………」
「僕はエリオ・モルディアル、魔導師見習いだ!!」

電気を帯びた体でエリオは力強く答えた。













『エローシュ』
「佐助か!上手くいったか!?」
『僕に不可能という二文字はない』
「三文字な………」

ホッと一息吐いて突っ込むエローシュ君。
やはり心配だったようです。

『無事狼達を誘導して一ヶ所に固めて閉じ込めた。本当の凄い、ワンちゃんホイホイ………』
「これを試すために犠牲になった犬がいるんだろうな………」

エローシュ君はそう言って静かに黙祷しました。
何故か青く大きな犬が思い浮かびましたが何故でしょうか………?

「よし、俺達もあの男の所へ移動しよう」
「し、信也君、私達が行ったら邪魔にならない………?」

真白ちゃんが恐る恐る手を上げて言いました。
確かにあんな狼みたいな怪物を出す相手なんて普通なら恐いですよね?

「………まあその可能性もある。キャロちゃん、相手を捕縛出来る魔法とかってある?」
「うん、一応………だけどあんまり得意じゃないの。もっと練習してれば良かったんだけど………」
「まあ仕方がないわよね、こんな事態になるなんて普通ならありえないわよね………」
「そうなると夏穂に敵を抑えててもらうしか無いか………」

そんな提案をするエローシュ君。流石にそれは危険過ぎる………!!

「エロー………」
「キャロ、大丈夫よ。合気道はある意味最強の武術なんだから」
「夏穂ちゃん………」

それは魔導師には関係無い事なんだよ………?








「ぐうっ………!!」
「悪いな、ガキだと思って甘く見すぎてた。ここからは俺の戦いでやらせてもらう」

召喚陣から大量の鴉が現れて、それは全てエリオにへと向かっていく。

「はあああ!!」

槍を正面に構え、疾走する。
雷を帯びた槍が飛んでくる鴉達に突きと同時に雷を浴びせ、全ての鴉を撃ち落とした。

「はぁはぁ………」
「だが、いかんせん修行不足だな。これほどの能力があって、その年でこの実力とは恐れ入った。将来確実に指折りの魔導師になるだろう。だからこそ、俺達によっては脅威になる」
「あ、あなたは………」
「お前はここで確実に仕留めさせてもらう!!」

再び鴉を多数召喚するジランド。

(くそ………今の僕じゃこれ以上放出したら動けなくなっちゃう………もっと魔力を効率よく使えれば………)

自分の不甲斐なさに情けなく思うも、この不利な状況を打開する方法を探していた………

(召喚した鴉の多さに思わず雷撃を使ったけど、あの鴉は僕の力を使わせるのが目的。じゃなかったら何度も通用しない攻撃はしないはず………だとしたら!!)

そう思ったエリオは槍を構え、雷を抑える。

「ほう……気がついたなガキ。だが、ただの鴉を召喚したと思うか?」
「えっ!?」

槍で鴉達を叩き落としていたが、いかんせん数が多く、落としきれない。

「知ってるか?鳥の嘴は固く、人の皮膚なんて簡単にえぐられる。俺がこうやって鴉を大量に召喚出来るようにしたのは燃費がいい上に空を飛べない魔導師には結構有利になるからだ」

「う、うわああああ!!!」

嘴で腕の皮膚を噛み付かれ、そこから血が流れる。
目を直接狙ってくる鴉もおり、エリオは徐々に冷静さを失っていった。

「この、この!!!」
「くはは!!やっぱり恐怖には勝てないか。雷を使えよ、そうしればその鴉達は駆除出来るぜ」
「くるなあああああ!!!!」

自身の電気を放出し、エリオの群がっていた鴉を全て落とした。

「はぁ………はぁ………」
「辛そうだな。………さて次位で終わりかな」

そう言って再び鴉を召喚しようとした時だった。

「何だ!?」

羽を羽ばたかせた虫たちがジランドに向かって飛んできた。

「エリオ!!」
「ルー!?」

その虫、インゼクトを飛ばしたのはルーテシアだった。
もっと早く召喚するつもりだったが、時間がかかってしまい、やっと複数召喚出来たのだった。
肩で息をするエリオに近づいてそっと肩を貸した。

「大丈夫?」
「ルー………出てきちゃ駄目だ。あの人、強い………」
「うん、分かる。私も召喚師だもん………だからこそ2人でだよ」
「ルー………」

「違うぞ、2人だけじゃない」

そんな時、そこに新たな人影が。

「ほう、まさかこっちにわざわざやってくるとはな………俺が出した狼達はどうしたんだ?」

虫を鴉で駆除したジランドは現れたエローシュに余裕そうに質問した。

「俺のワンちゃんホイホイで身動き取れねえでいるよ」
「ワンちゃんホイホイ?………まあいい。ついでにお前らも全員相手してやるよ」

「なら容赦しない」

そんな淡々とした声が聞こえてきたかと思うと、いきなりクナイが飛んできた。

「なっ!?」

咄嗟に剣で一つは弾くが、もう一つのクナイは捌ききれず、そのクナイはジランドの左腕に巻き付いた。

「捕まえた………!!」
「夏穂!!」
「ええ!!」

エローシュの声と共に駆け出す夏穂。
動けないジランドの左腕を返し、手首と肘、肩を極めて倒した。

「くうっ!?何だ動けねえ………」
「合気道よ、魔法は使えないけどこうやって相手を締めて動けなく出来るのよ?」
「な、何でだ!?子供に締められて何で………!!」

「夏穂、暫くそうしててくれ。ルーちゃんかキャロちゃんは回復とかって出来るか?」
「私がちょっと出来るよ!!」
「そうか。………じゃあキャロちゃん、エリオの処置を頼む」
「うん!」

そう言うとキャロはゆっくりとエリオに近づいていく。

「ありがとう」
「うん………」

そう返事をしてキャロの処置を受けるエリオ。

「加奈お姉ちゃんから教えてもらった………えっと………ファーストエイド!!」

キャロのデバイス、キューティクル(スカさん作、召喚術の負担を緩和するように作られたもの)を発動し、エリオは優しい光に包まれた。

「温かい………」
「完全には無理だけど多少の傷なら治ると………思う」
「えっと………その間は?」
「回復ってあんまりしたこと無いから………」

可愛く舌を出し、自分の頭をコツンと軽く殴るキャロ。
なれない事をした為ぎこちなさがあり、エリオは苦笑いしか出来なかった。

「ルーちゃん!えっと………バインドだっけ?出来る?」
「デバイスも無いしあまり得意じゃないけど一応出来るわよ。だけどあの男をずっと捕縛出来るほど強いバインドは無理ね」
「構わない、暫く動けなくしてくれれば佐助が痺れ薬をつかって暫く動けなく出来るから」

そう言って懐から袋を取り出す佐助。

「この結界みたいな物もコイツが戦闘不能になれば解けるだろうし、後はコイツを警察に差し出せば………」
「………悪いがそれは無理だ」

そうジランドが呟くとエローシュ、夏穂、佐助の3人が光の輪で拘束された。

「これは!?」
「バインドだ。リーダーのお前が1人1人指示を出してくれたおかげで、気づかれずに使う事が出来たよ」

夏穂の拘束から離れた事で剣でワイヤーを斬り、立ち上がる。

「しかし末恐ろしいガキ達だ。魔導師でも無いのにこれほどの力があるとはな………出来れば俺の組織に誘いたいくらいだ」
「………遠慮するよ、お前みたいなクズの仲間なんてな」

そんな言葉を吐いたエローシュに近づくジランド。そして腹に蹴りを入れた。

「げほっ!?」
「「エローシュ!!」」

すかさずエリオが駆け出し、ルーテシアが再び虫を召喚する。

「白き平原の覇者よ。我が僕となり、大地を揺るがせ!!獣王召喚、フェンリル!!」

そう言うと、大きな召喚陣が現れ、吹雪によって視界が見えなくなった。

「うわっ!?」
「くっ!?」

駆け出したエリオも、ルーテシアが召喚した虫たちもその吹雪に包まれ動けなくなる。
そしてその吹雪が止むと………

『我を喚んだか小僧………』

白く、巨大な牙を持った狼がそこに現れたのだった………














「み、みんな………」

真白は1人、物陰に隠れて戦いを見ていた。

「わ、私は………」
『真白は隠れてろ。敵の狙いは真白のその宝石だ、真白が出てくると危険が大きすぎる』

そう言われて今まで隠れていた。
しかし最悪な状況になり真白も気が気じゃ無かった。

「わ、私何かしなくちゃ………!!」

だけど真白の足は震えて最初の一歩が踏み出せない。

「私にも何か力があれば………」

思わず宝石を握りしめる真白。

「みんな………」









「りゅ、竜魂召喚、フリード!!」

キャロはフェンリルに戸惑いつつも咄嗟にフリードを出し、力を開放した。
フリードは大きくなり立派な竜に。その大きさはフェンリルにも負けていなかった。

「でかああ!!」
「まさに怪獣対戦………」
「キャロって凄いのね………」

バインドで縛られている3人は思わずそう呟くが驚いているのは3人だけじゃなかった。

(あんな竜をあのガキが!?この星は何なんだ!!管理外世界に何でこんなにレベルの高い魔導師がいる!?)

叫びたいのを必死に抑えながらそんなことを思う男。

「くっ、フェンリル!!」
『我に命令するな!!』

そう言うとフリードに向かって突進するフェンリル。
その勢いは大地を震えさせ、人をちっぽけに感じさせる。

「フリード!!」
「クウウウウ!!」

キャロに声を掛けられ、気合を入れるフリード。
その場で仁王立ちにし、フェンリルを真正面から受け止めた。

「うおっ!?」

ぶつかった瞬間衝撃は周辺に広がる。
まさに怪獣対戦。そんな非現実的な戦いが海鳴市の町中で行われていた。

『舐めるな!!』

力と力のぶつかり合いで均衡状態になっていた2匹だったが、フェンリルが体を震わせると、雪のような白い霧が発生する。

「!?」

フェンリルを抑えていたフリードの足が凍り始めた。

「フリード!!」

キャロの声に反応して距離を取ったフリードはその場から跳躍。
上空へと飛ぶ。

「ブラストフレア!!」

上空から炎を発射するフリードだが、フェンリルの巻き起こしている冷気に負けて攻撃は通らない。

『こんなものか白竜よ………』

少しがっかりした様に呟き、口に冷気を集中させる。

「フリード来るよ!!」
「クオッ!!」

キャロの声に反応したフリードがその場で身構える。

「!?キャロ駄目!!逃げて!!」
『我を舐めるな白竜!!喰らえ、アブソリュートブラスト!!』

ルーテシアが大声で指摘するが時すでに遅し。
フェンリルは口に溜めた冷気を上空にいたフリードに向けて発射した。
発射した冷気の塊は最初こそ小さかったが、空気中に充満している冷気を吸って大きくなっていき………

「!?」

フリードに直撃する時にはもはや逃げ切れないほど大きくなっていた。

「キュオオ!!」

それでもフリードは何とか体全体で受けるのは避け、直撃を右の翼だけに抑えた。
しかし………

「キュオ!?」

直撃した翼からどんどんフリードの体が凍っていく。

「フリード!!」
「ク、クォオ!!」

慌てて自分の炎で氷を溶かそうとするが、氷の勢いは止まらずどんどん加速していく。

「キャロ、フリードを戻しなさい!!このままじゃ死んじゃうわよ!!」
「う、うん!!」

ルーテシア言われ、再び召喚陣を出現させるキャロ。フリードを元の大きさに戻した。

「………」
「フリード!!も、戻れ!!」

地上に真っ直ぐ戻るフリードを慌ててボールに戻すキャロ。

「フリード………ゴメンね、私が未熟なばっかりに………」

涙目でボールに入ったフリードに謝るキャロ。

『これで終わりか白竜よ………全く、期待はずれも良いところだ………』

残念そうにそうこぼすフェンリル。
そしてその召喚師であるキャロを見つめた。

「な、何………」
『優しく、心地良い雰囲気を持つ娘だな。そこにいる紫の娘もそうだ。我等も心から力を貸そうと思える』
「あなたは………」
『我も出来ればお前逹の様な………』

「おいフェンリル、何余計な事を話している!?男は殺して女のガキを生かして捕らえろ!!」

そんな会話も虚しく、ジランドの大きな声が響く。

『………これも契約の代償か………こんな奴に我が………済まんな、許せ心優しき召喚師よ………』

そう言って口を開け冷気を溜めるフェンリル。

「やめろぉーーー!!!」

エリオが物凄い速さでフェンリルに対して突貫する。

「空牙絶咬・雷刃!!」

零治が使う神速の突き。
雷を帯びた槍をフェンリルを襲う。

『むうっ………』

素早いフェンリルであったが、子供であるエリオの小ささとそれに重なり速い攻撃に気が付けず、エリオの攻撃はフェンリルの足を斬りつけた。

「まだまだ!!」
『調子に乗るな!!』

もう一度同じ技で攻撃しようと反転した時だった。
ただ足を上げ、踏みつけた攻撃は地面を揺らし、エリオのバランスを崩す。

そしてフェンリルの体の下で片膝をついてしまった。

『そこか!!』

素早くバックステップしたフェンリルはエリオを視界に捉えると、大きな前足で大きくなぎ払った。

「くっ!?うわああああああああ!!」

何とか立ち上がる、バックステップで避けようとしたエリオ。
だが完全には逃げ切れず、その前足になぎ払われてしまった。

「エリオ君!!」
「エリオ!!」

近くの住宅に突っ込んだエリオに駆け寄るルーテシアとキャロ。

「エリオ、エリオ!!」

ルーテシアに揺すられるが反応が無い。
頭からも血が流れており、キャロが回復魔法をかけるが止血で精一杯だった。

『………これで終わりだ』

口を開け、フリードに放った様に冷気を放つ準備を始める。

「待て、フェンリル!!女のガキは………」
『アブソリュートブラスト』

巨大な冷気を発射した………












「くそ………」

キャロ達をターゲットにしたジランドを睨みながらそう呟くエローシュ。
フェンリルによって出現した冷気により手足の感覚どころか体の体温も下がってきていた。

キャロ達魔導師組はバリアジャケットがあり、ルーも今回デバイスが無いが動いている分まだ平気だった。しかし魔導師じゃない3人は別だ。
バインドによって動けない事もあり、かなり危険な状態になっていた。

「夏穂………佐助………」
「ぼ、僕は………まだ平気………だけど………」
「夏穂………?夏穂………!!」

慌てて声をかけるが返事が無い。
指がピクンと反応しているのが見えたためまだ生きているのは分かったが一番危険な状態になっている。

「夏穂………夏穂………!!」

一生懸命声を張り上げ、凍える体で地面を這いつくばって夏穂の所へ向かおうとするエローシュ。

「くそ………俺が………俺にもっと力があれば………!!」
「し…し……ん…や………」

そんな中夏穂がエローシュの名前を呟いた。
その声はすぐにでも弱々しく今にでも消え去りそうなほど小さかった。

「待ってろ………今助けて………」
「し……んや………逃……げ………」

最後の一文字、ては口が動くだけで声には出ていなかった。

「逃げて………だと?ここに来て………お前は………」

自身の情けなさに気持ちが押しつぶされそうになるエローシュ。
動いていた体も電池が無くなったおもちゃのようにピタリと止まった。

「動け………動けよ………口だけかよ俺は………リーダーみたいな真似事して結果はこれかよ………ふざけるなよ………俺はやれるまだやれるんだ………!!」

体が動かない状態でも目はまだ死んでいない。
気持ちは既に折れそうで、最後の一本が繋がっている様な状態。

それでもエローシュは諦めない。

「く……おおおお!!!」

最後の力を振り絞るかのように唸り声を上げながら前へ這い進む。
そんな時、バックから一つの箱が転がり落ちた。

それと同時にエローシュが進むのを止めた。

「あれ………何で俺、止まってるんだ………?それにこの感覚って………」

とても懐かしい感覚。まるで前の自分を思い出す様な感触。

『へえ………お前って面白いな………転生………そんなものが実際にあるとはな………』

そんな事を感じていたエローシュに向けて、声が聞こえてきた。

「お前は………?」
『やっと封印が解かれたと思えば目の前にはガキだもんな………だが契約で決まった以上拒否は無理か………』
「何を言って………」
『おいガキ、力が欲しいか?」

エローシュの声を無視して勝手に話を進める。
エローシュも考えるほどの意識は既に無く、相手がどういう人物かを考える余裕は無かった。

「………欲しい。友達を………俺の大事な人達を助けられる力が欲しい………」
『ほぅ、救うとは言わないのか。あくまで助けると………』
「俺の力のなさは身に染みている………力を持ってみんなと対等になっても意味が無いんだ………だったらみんなを助けられる力を………みんなの為になる力を………!!」

最後だけ力強く答えるエローシュ。
そこから反応が無く、声を無くなった。

「おい………」
「いや、驚いてさ。まさか力が欲しいかって聞いて『皆を助けられる力が欲しい』って答えるなんて思わなかったからさ………。本当に驚いた………」

上から声が聞こえ、見上げるとそこにはエローシュと同じくらいの身長で黒髪が肩程まで伸びた少年がエローシュを見つめていた。

「お前は………」
「エクス・フォン・インヴェルト、デバイスさ」

そう言ってニヤリと笑うのであった………  
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