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八条学園怪異譚

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第十一話 池の怪その十


「あいつ等も同時にさ」
「ふむ、四国は河童にとっては鬼門か」
「鬼門も鬼門だよ」
 河童の口調は実にい毎々しげなものだった。
「妖怪で鬼門っていうのもあれだけれどね」
「四国は嫌か」
「何であんなに猿と犬が多いんだろうね、あそこは」
「色々あるのだろうがな」
 四国生まれのうわばみの言葉だ。
「確かに四国は独特の妖怪の勢力図だな」
「そうそう。狐君もいないし」
「狸軍団の天下でもある」
「そこも独特なんだよ」
「全くだ。とにかくだ」
 ここでまた言ううわばみだった。
「御主達の相撲の相手だが」
「本当に誰かいないかな」
「手頃な相手を呼ぶか」
「誰かいる?」
「キジムナーでどうだ」
 うわばみは彼等の名前を出した。
「あの連中と御主達河童は仲がいいな」
「親戚かな」 
 河童はその首を少し右に傾げさせて応えた。
「実際のところね」
「というか実際に親戚であろう」
「多分ね。元々河童って水虎さんが祖先で」
「唐から来ているな」
「今は中国だよ」
 河童はうわばみの言葉を訂正した。どうやらこのうわばみは中国で言う唐代から生きているらしい、それが言葉に出たのだろう。
「そこから来ているからね」
「そうだったな、御主達も渡来人だったな」
「そうそう、ルーツはそうなんだよ」
「今では完全に日本の妖怪になっているがな」
「それを言うと狐君達も狸君達もだよ」
 彼等もだというのだ。
「化ける彼等も中国から来てるからね」
「そうだったな」
「添うそう。渡来妖怪って多いんだよね」
「それでキジムナーを呼ぶか」
「そうだね。キジムナー君達とはいつも遊んでるし」
 親戚同士という理由もあるがそもそも仲のいい間柄だからだというのだ。
 それで河童もこう言った。
「じゃあ今から呼ぶね」
「うむ、そうせよ」
 うわばみも河童の言葉に頷く。かくしてだった。
 河童は池の中に声をかけた、するとだった。
 池からどんどん河童達が出て来た。それでこう言ってきた。
「やあ、呼んだかい?」
「相撲の相手が決まったのかな」
「誰?まさかうわばみさんじゃないよね」
「鬼さんでもないよね」
「キジムナー君達に決まったよ」
 河童は仲間達にこう返した。愛実と聖花はどの河童も同じに見えるが河童達にはそれぞれ違う姿だとわかるらしい。
 その河童達が二人の目の前で話していた。
「早速ガジュマルのところに行って呼ぼう」
「そうなんだ、またキジムナー君達なんだ」
「相撲の相手最近決まってない?」
「誰か別の相手いないかな」
「勝負に出る相手が」
「だからわしがすると言っておるが」
 河童達と共に池にいるうわばみが再び言ってきた。
「それでどうだ」
「駄目だよ、うわばみさん大きいし力も強いから」
「僕達が幾らいても勝てないじゃない」
 河童達は最初の河童と同じことを言う。
「それでお酒飲み尽くすし」
「だから駄目だよ」
「やれやれ。折角酒が飲めると思ったのだがな」 
 うわばみはあえて残念そうに、だがそれと共に笑って述べた。 
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