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八条学園怪異譚

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第十一話 池の怪その二


「じゃあそういうことでね」
「お昼休みに行ってみる?早速」
 聖花は時間を提案した。
「それじゃあ」
「そうね。それじゃあね」
 こうして二人は日本の人魚について高等部の図書館で本を開きそのうえで調べた、そのうえで二人がわかったことは。
「あの人魚姫と全然違うわね」
「そうね」 
 二人で四人用のテーブルに向かい合って座っている。愛実から見て右手で向かい合い左手は空になっている。
 その席で二人で本を開きそして話しているのだ。
「アンデルセンのあの奇麗で悲しい人魚姫と違って」
「猿みたいな顔って」
「それで食べたら長生きするのね」
「毒はないのね」
 これはある漫画の設定らしい。こうした設定を取り入れて人魚の肉に対する神秘性を増させたのであろうか。
「けれど滅多にいない」
「そうした妖怪なのね」
「しかもね」
 聖花はその日本の人魚について書かれた本を見ながらこうも言った。
「海以外にも人魚はいるのね」
「そうね。淡水人魚ね」
「琵琶湖に出たっていうけれど」
「じゃああれよね」
 愛実は聖花のその琵琶湖に人魚が出たという話からこの答えに至った。
「うちの学校のお池にも人魚がいてもおかしくないのね」
「そうよね。そうなるわね」
 聖花も愛実のその言葉に頷く。
「何がいるかわからないけれど」
「河童に人魚」
「他にもいるかもね」
「まあ悪い妖怪はいないから」
 愛実はこのことに安心して言う。
「怖がらなくてもいいわね」
「こういうの出たら怖いわよね」 
 聖花は人魚とは別のページを開いていた。そこにはやけに長い蛇の下半身に幽霊の様な手とざんばら髪の不気味な顔の女がいt。舌も異様に長い。
 その妖怪を指で指し示してこう愛実に言う。
「濡れ女っていうけれど」
「あからさまに怖そうな妖怪ね」
「川辺とかにいて近寄ってきた人を捕まえて血を吸うそうよ」
「つまり吸血鬼ね」
 博士達に言われた日本にいる吸血鬼だった。
「これって」
「そう、この妖怪はね」
「こういうの学校に出たら怖いわよね」
「大騒ぎになるわよ」
 血を吸う、即ち殺すということだからだ。
「これは本当に怖いわよ」
「から傘さんとか塗り壁さんとは違うからね」
「子泣き爺のお爺ちゃんは人を殺してしまうこともあるらしいけれど」
 抱くと石の様に重くなる、その重さで押し潰してしまうのだ。
「それでも学校にいるお爺ちゃんは違うから」
「そうよね。輪入道さんでもね」
 こちらは見れば魂を抜かれるという。何故そうなるかはわからないが。
「けれどこれはね」
「あからさまに危ないから」
 そうした種類の妖怪だった。
「出たら怖いわね」
「それも半端じゃなくね」
「というかこの妖怪身体凄く長くない?」
 愛実は濡れ女について書かれている文章を見ながら言った。
「何か三百メートルとか書いてるけれど」
「その長い身体で何処かでも追いかけて捕まえて」
「蛇の身体でね」
 まさに絡め取ってだというのだ。
「血を吸うのね」
「全身の血を吸われて死ぬって」
「怖いわよ、これ」
 またこう言う愛実だった。 
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