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八条学園怪異譚

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第十話 大学の博士その十一


「学園の東北と南西にそれぞれ神社とお寺があるな」
「その二つもなんですか」
「風水なんですか」
「よからぬ存在は東北、南西から出入りする」
 これも風水だ。所謂鬼門、裏鬼門だ。
「四方を封じるのも大事じゃが」
「それに加えてその二つの方角ですか」
「そこも護るんですね」
「東西南北にはそれぞれ青龍、白虎、朱雀、玄武を配する」
 四霊獣だ。川、道、平野、山がそれぞれにあたる。
「それに加えてじゃ」
「東北と南西にもですか」
「そうした配置が大事なんですね」
「尚この学園の四方は自然にある」
 つまりそうした場所を選んで置かれたというのだ。
「いや、この学園の創設者もよく考えておるわ」
「確か八条財閥の初代ですよね」
「その人がここに学校建てたんですよね」
「そうじゃ。まあ話は長くなるが」 86
 ここで博士は話に前置きもしてきた。そのうえで二人に言う。
「この学園はどうもじゃ」
「どうも?」
「どうもっていいますと」
「よい妖怪が集まる要因があるらしいのう」
 こう二人に言うのだった。
「どうやらのう」
「妖怪が集まる要因」
「それがですか」
「大体人が集まり陰もある場所には妖怪が来る」
 そうなるというのだ。
「しかしそれを差し引いてもじゃ」
「この学園は多いんですか、妖怪や幽霊が」
「いい人達にしても」
「幾ら何でも多過ぎる」 
 そうだというのだ。
「わしが見てもな。普通は七つじゃ」
「あっ、七不思議ですね」
「それだけなんですね」
「そうじゃ。精々それ位じゃが」
 七つどころか幾つあるかわからない。それは博士もよくわかっている。
 だがわかっているのはそれだけでこのことはわかっていなかった。
「しかしわしもこの学園に幾つあるかはじゃ」
「博士もですか」
「わからないんですね」
「増える一方じゃな」
 博士は首を捻りながら言う。
「その辺りは」
「そうなんですか」
「そんなに多いんですか」
「そうじゃ。しかし」
「しかし?」
「しかしっていいますと」 
「どうも外から出入りするだけでなく」
 博士は尚も首を捻り続ける。そのうえで愛実と聖花に言うのだった。
「中にもあるやもな」
「中に?」
「中っていいますと」
「だからこの学園の中に妖怪やら幽霊やらが出入りする場所がある様じゃ」
 二人に、少なくとも彼女達が思いも寄らぬ話だった。それで二人は同時に博士に対して言った。
「中ってこの学園の中に」
「そういうのがあるんですか」
「とはいっても僕達はね」
「気付いたらここにいるから」
 博士の妖怪達がここで二人に言ってきた。
「何かね。本当に気付いたらだから」
「この学園にいたんだよ」
「妖怪ってどういうのなの?」
 愛実は彼等の言葉を聞いて首を捻った。今度は彼女がそうした。
「気付いたらいたって」
「そうよね。ちょっとそれって」
 聖花も愛実に続いて言う。 
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