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八条学園怪異譚

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第十話 大学の博士その一


                     第十話  大学の博士
 愛実と聖花は自分達のクラスで愛実の席で向かい合って座りそのうえで話をしていた。まずは聖花が言った。
「その博士だけれどね」
「大学のその何でも知ってるっていうね」
「そう、学園全体の怪談のことも知ってるっていうね」
 聖花は日下部から聞いたこのことを愛実に話した。
「あの人だけれど」
「実際何歳なの?」
「それがわからないのよ」
 年齢については首を傾げさせて困った顔で述べる。
「少なくとも百歳は超えてるみたいだけれど」
「そのことは間違いないのね」
「多分百二十歳を超えてるって。けれどね」
「けれど?」
「よくわからないけれど日本の長寿記録には申請していないから載ってないみたいよ」
「そうなの」
「だから実際の年齢は博士だけが知ってることで」
 他ならぬ本人だけがだというのだ。
「正確な年齢は不詳だって」
「それだけで凄い話よね」
「そうね。それにね」
「何か博士号一杯持ってるのよね」
「あちこちの国、大学から一杯貰ってるらしいわ」
 そうそう簡単には取れないそれもだというのだ。
「一体幾つあるのかわからない位ね」
「それだけ持ってるの?確か博士号って」
「一つ取るのもね」
 それだけで大変だ。それこそ末は博士か大臣かという言葉は伊達ではない。やはりそれだけのものであるのだ。
 その博士号を幾つも持っていると聞いて学校の成績は自分ではあまり自信のない愛実は羨望の顔でこう言った。
「凄い人なのね」
「そうね。文学に理学、工学に医学に」
「何でもなのね」
「そうみたい。とにかくあらゆる分野で知られててね」
「ううん、漫画みたいね」
「そうね。特に古代史と語学が凄いらしいわ」
 そちらが博士の一番の得意分野だというのだ。
「民俗学でも権威らしいわ」
「民俗学って妖怪とかも勉強するのよね」
「そう、柳田邦男からね」
 その民俗学の開祖だ。この人物なくしてこの学問はないとまで言っていい。
「遠野とかね」
「遠野?」
「東北の方で河童で有名な場所なのよ」
「ふうん、そうなの」
「他にも座敷童子とかがいて」
「あっ、座敷童子は知ってるわ」
 愛実もこの不思議な妖怪のことは知っていてそれで言う。
「あれよね。子供にしか見えないっていう」
「そう、その妖怪も東北よね」
「東北って結構妖怪多いのね」
「なまはげとかもいるから」
 これも東北だ。東北にもそうした話が多いのだ。
「それで柳田邦男も東北にはよく行ってるのよ」
「ふうん、そうだったの」
「それでその民俗学についてもね」
「あの博士専門家なのね」
「権威らしいわ。だからここはね」
「ええ、博士のところに行って」
 愛実は聖花の話を聞きながら述べる。
「それでよね」
「そう、色々聞いてみよう」
「ええ。それにしてもはじめてじゃない?」
「はじめてって?」
「こうしたお話がお昼で進むっていうのはね」 
 それがだというのだ。二人共八条学園の怪談の関連ではこれまで夜に調べに行ったりしていたからだ。それで愛実も今言ったのである。 
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