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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―精霊使いの決闘?―

 デュエルに勝てば元に戻るという仮説が否定されてしまった今、もはや俺に光の結社の侵攻は止められる訳がなく、光の結社は続々と入信者を増やしていった。

 デュエル・アカデミアの先生方は、オベリスク・ブルー寮を『ホワイト寮』に改名することこそ認めなかったものの、外観は真っ白に塗りたくられているため、かつての青色のオベリスク・ブルー寮の姿はどこにも無かった。

 末端を止めることが出来ないのであれば、直接光の結社のトップを叩こうとしたものだが、構成員の多くがガードしてきて全く近づけやしなかった……そのせいで、俺はまだ光の結社の指導者らしい『斎王様』がどのような人物なのかすら解らなかった。
 とは言っても別に隠れている訳ではなく、十代や三沢は普通に廊下や授業でそれらしき人物を見ることもあるというので、ただ俺は避けられているだけなのだろう。

 三沢に聞いた話だが、万丈目は入信者を増やすための前線での隊長で五階堂はその補佐をしており、明日香は光の結社のナンバー2と言った役割で、『斎王様』のサポートをしているらしい……だからだろう、万丈目の姿はよく見るにも関わらず、明日香の姿をこの頃全く見ないのは。

 ……かなり話は変わるが、そろそろデュエル・アカデミアの二年生……つまり俺たちには、修学旅行という一大イベントが執り行われることとなっていた。
日本の高校の修学旅行と言えば、京都や奈良、沖縄あたりが定番であるだろうが、このデュエル・アカデミアがデュエルの専門学校である以上、デュエルに関する場所に行かないと修学旅行というイベントの意味がないのだ。

 そして、毎日毎日デュエルの歴史は更新されていく為、毎年決まった場所に行くということは不可能であるため、校長先生が修学旅行に相応しい場所を選んだ後、職員会議にかけられて決定するというシステムになっているようだった。

 ……だが今のこのデュエル・アカデミアには、本来の校長先生である鮫島校長は未だに帰ってきていないため、クロノス臨時校長とナポレオン教頭がツートップであるのだが、クロノス臨時校長は修学旅行先をイタリアにするという意見を挙げ、ナポレオン教頭はイギリスという意見を挙げ、お互いに譲らずに会議は平行線となったとか……しかも、その二国とも、デュエルに関する大きなイベントがないところが悲しいところだ。

 その平行線だった会議に割って入って行ったのが、光の結社の連中であった。
彼らは乱入するなり、『修学旅行先は斎王様が占いによって運命を見てくださる』といったことを言い始め、クロノス臨時校長とナポレオン教頭の言い争いが終わるなら、と言った様子の教師陣はこの提案を了承しかけるも、それに異を唱えたのが、偶然居合わせた十代だった。

 『だったらデュエルで決めようぜ!』という、いかにも十代らしく、そして鮫島校長風に言うならばデュエル・アカデミアらしい提案に、光の結社側も教師陣(クロノス臨時校長とナポレオン教頭は除く)も賛同し、急遽デュエルが開かれることとなった。

 これだけならば、俺には全く関係のないデュエルであったが、デュエルをするにあたって光の結社側から一つ条件が提示されていた。
『相手は三沢大地・黒崎遊矢・天上院吹雪の三人のいずれかであること』……とことんオベリスク・ブルーを全滅させたいのか、不穏分子を無くしたいのかは知らないが、指定されたのはオベリスク・ブルーの生き残りである三名であった。

 この三人ならば俺が一番弱いのだから、もしもデュエルに負けて光の結社に入ってしまっても、一番被害が少ないのは俺だ。
三沢と吹雪さんの耳に入ってしまえば、あの二人も出ようとするだろう……なので、三沢と吹雪さんには悪いが、耳に入る前に俺が光の結社とのデュエルに参加することとなった。

 対戦相手は、光の結社側であるにも関わらず、光の結社の制服を着ていないプリンセス・ローズと呼ばれる女子生徒であったが、残念ながら彼女のことは良く知らない。

「斎王様から聞いたわ。あなたも、微弱ながら精霊の存在を感じられるんですって?」

 いつものデュエルフィールドにて、対戦相手たるローズから声がかけられる。
確かに、ほとんど微弱ながら精霊の存在は感じられるものの……何故、斎王はそれを知っているんだ?

「……『も』?」

「ええ。私にも感じられるんですの……いいえ。感じられるどころか、いつでも私の側に精霊はいるのよ!」

 ローズの言っていることが全部妄想でない限り、十代の《ハネクリボー》や万丈目の《おジャマ》たちと似たような精霊を持ったデュエリスト、と言ったどころか。

「お話は終わるわよ!」

 あっちから話しかけてきたくせに、ローズは一方的に話を終わらせてデュエルディスクを展開させた。
こちらもそれに習ってデュエルディスクを展開させ、デュエルの準備が完了する。

『デュエル!』

遊矢LP4000
ローズLP4000

「私の先攻から、ドロー!」

 俺のデュエルディスクに『後攻』と表示されたのだから、対戦相手であるローズは自ずと先攻である。
しかし、プリンセスと言うがどんなデッキなのか……パッと思い浮かぶのは【マドルチェ】や【魅惑の女王】とかその辺りだろうか。

「私は《テイク・オーバー5》を発動! デッキからカードを五枚墓地に送るわ!」

 レアカードに位置される、優秀な墓地肥やしカードである《テイク・オーバー5》……やはり万丈目の《ライトエンド・ドラゴン》のように、光の結社に入った者には、『斎王様』からどこから手に入れたかは解らないが、レアカードが配給されているのだろう。

「更に《引きガエル》を守備表示で召喚!」

引きガエル
ATK100
DEF100

 ローズのフィールドに召喚された、守備の体勢をとる舌が長いカエルをまじまじと見るが、《引きガエル》に相違ない……《引きガエル》だけではまだ解らないが、ローズのデッキは【ガエル】ということだろうか……?

「更に、カードを二枚伏せてターンを終了するわ」

「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」

 ローズのフィールドには守備表示モンスターにリバースカードが二枚と、先攻の基本的な防御態勢……いつも通り、頼むぜアタッカー!

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 後攻一ターン目の俺の先陣を斬るのは 、いつも通りに三つ叉の槍を持った機械戦士の出番となり、もはや俺が攻撃宣言を行う前に、《引きガエル》に目標を定めているようにも見える。

「バトル! マックス・ウォリアーで、引きガエルに攻撃! スイフト・ラッシュ!」

 マックス・ウォリアーの乱れ突きの前に、引きガエルはあっけなく破壊されるが、墓地に送られる前にその長い舌を更に伸ばし、ローズのデッキからカードが一枚ドローされた。

「引きガエルは破壊された時、カードを一枚ドロー出来るわ」

「マックス・ウォリアーは戦闘で相手モンスターを破壊した時、攻撃力が半分になる」

 俺もローズも共に戦闘後の効果発動を終わらせ、メインフェイズ2に入りディスクにカードを一枚セットする。

「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!
スタンバイフェイズ時、墓地の《テイク・オーバー5》の効果によって一枚ドローするわ」

 今のテイク・オーバー5の効果と引きガエルの効果によって、通常ドローも含めて三枚ドローすることとなったローズ……リバースカードを二枚も伏せたにも関わらず、手札は潤沢にも程がある。

「更にリバースカード、《リミット・リバース》を発動! 墓地から《イレカエル》を特殊召喚!」

イレカエル
ATK100
DEF2000

 ……俺も多用する、攻撃力1000以下のモンスターを蘇生するトラップカードによって蘇生されたモンスターを見て、俺は顔をしかめると同時に、ローズのデッキが純正の【ガエル】であることを悟った。

「更に《地獄の暴走召喚》を発動! イレカエルをデッキから三体特殊召喚するわ!」

 イレカエルの背後で、狂ったように回る二つの歯車……それも自身が良く使うだけあって、次に何が起きるかは言わなくても解る……すなわち、特殊召喚されたイレカエルと同じイレカエルが更に二体特殊召喚されるということ。

「……俺のデッキには、《マックス・ウォリアー》は一体しかいない」

 ローズの《地獄の暴走召喚》の効果は俺にも適用される筈だが、残念ながら俺のデッキにマックス・ウォリアーは一体しかいないため、特殊召喚出来ない。

「まだまだよ! イレカエルの効果を発動! 私のフィールドのモンスターをリリースすることで、デッキから《ガエル》と名の付いたモンスターを特殊召喚出来る! 私は《イレカエル》を三体リリース!」

 自身のその名に相応しい効果を持った《イレカエル》三体が、一声鳴き声を鳴くとフィールドから消え失せ、代わりに新たなカエル三体が、ローズのデッキから特殊召喚された。

「コレが私の王子様たちよ! 来て、《デスガエル》!」

デスガエル
ATK1900
DEF0

 前回のターンで、《テイク・オーバー5》による布石はあったものの、【ガエル】の特徴であるこの驚異的な展開を、わずか一ターンでやってのけるとは、恐れ入る……って、今なんて言った?

「……王子様?」

「そうよ。このデスガエルたちが私を守るカードの精霊……イケメンの王子様なのよ!」

 ……そう言われてしまえば、精霊の存在を感じる程度の能力しかない自分には、ローズの言葉が真実かどうか確かめようがないのだが……少なくとも、三体のデスガエルたちから精霊の存在は感じない。

「バトルよ! デスガエルでマックス・ウォリアーに攻撃! デス・リサイタル!」

「《攻撃の無力化》を発動! バトルフェイズを終了する!」

 ……今のデュエルの状況では、のんきに精霊のことなど考えている場合ではなさそうだ。
ステータス自体は低いが、水属性のサポートフィールド魔法《ウォーターワールド》や実質、専用フィールド魔法《湿地草原》など補う手段はいくらでもあり、《機械戦士》を遥かに超える圧倒的な展開力は脅威以外の何者でもない。

「私はこれでターンエンドよ」

「俺のターン、ドロー!」

 さて、そのご自慢の毎ターンワンショットキルが出来るぐらいの展開力……せいぜい利用させてもらうか。

「俺は《ニトロ・シンクロン》を召喚!」


ニトロ・シンクロン
ATK300
DEF100

 ニトロという名に反し、一見消火器のようにも見えるシンクロンの召喚により、俺のフィールドにチューナーと非チューナーが並んだ。

「レベル4の《マックス・ウォリアー》と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 ニトロ・シンクロンの頭についているメーターが、計測不能なほどに振り切れ、そのまま二つの光の輪となりマックス・ウォリアーを包み込む……合計レベルは、6。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

グラヴィティ・ウォリアー
ATK2100
DEF1000

 俺のフィールドに伏せるように降り立った機械戦士……というより、外見は機械の獣だが、俺のデッキに入っている《機械戦士》たちの仲間に相違ない。

「《マックス・ウォリアー》の方が攻撃力が高くなるのに、わざわざシンクロ召喚……何か効果が?」

「それはもちろん当たり前さ。グラヴィティ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功した時、相手モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 ローズのフィールドには、王子様と呼ばれていたデスガエルたちが三体……よって、グラヴィティ・ウォリアーの攻撃力は3000。

「攻撃力……3000!?」

「バトルだ! グラヴィティ・ウォリアーで、デスガエル一体に攻撃! グランド・クロス!」

 ローズの驚きの声をよそに、俺はグラヴィティ・ウォリアーへと命令を下した。
あのデスガエルが精霊だろうと王子様だろうと何だろうと、デュエルのルールには全く関係がなく、グラヴィティ・ウォリアーはデスガエルを戦闘破壊した。

ローズLP4000→2900

「きゃっ! ……だけど、王子様は私を守り、私は王子様を守るのよ! リバースカード《激流蘇生》を発動! 破壊された水属性モンスターを全て特殊召喚し、特殊召喚した数×500ポイントのダメージを相手に与える!」

 グラヴィティ・ウォリアーに戦闘破壊された筈のデスガエルが、激流を伴ってそのままフィールドに特殊召喚され、その激流は俺に直撃した。

遊矢LP4000→3500

「くっ……ターンエンドだ」

「私のターン、ドロー!」

 攻撃力3000のグラヴィティ・ウォリアーをシンクロ召喚したことにより、形勢は俺の方へ傾いた……と言いたいところだが、未だにローズのフィールドにはデスガエルが三体並んでいて、ボードアドバンテージもさることながら、《デスガエル》が三体フィールドに並んでいることほど、今は怖いことはない。

「王子様たちの本当の姿、見せてあげるわ! 私は《融合》を発動! フィールドの王子様三体を融合し、《ガエル・サンデス》を融合召喚!」

ガエル・サンデス
ATK2500
DEF2000

 デスガエル三体が融合したことにより、時空の穴から特殊召喚されるグラヴィティ・ウォリアーよりも巨大なカエルである、《ガエル・サンデス》……デスガエルが三体いることに対し、考慮していた方の魔法カードとはまた別のカードだったことに少し安堵しかけたものの、今の状況ではむしろこっちの方が困るということにすぐ気づいた。

「ガエル・サンデスの攻撃力は、墓地にいる《黄泉ガエル》の数×500ポイント……そして、私の墓地にいる黄泉ガエルの数は、三体よ!」

 つまり、今の《ガエル・サンデス》の攻撃力はグラヴィティ・ウォリアーを遥かに超えた、4000という神に匹敵する数値……わざわざ融合召喚したのだから、《テイク・オーバー5》によって《黄泉ガエル》が墓地に落ちているとは思っていたが、まさか三体とも落ちていたとは……!

「バトル! ガエル・サンデスで、グラヴィティ・ウォリアーに攻撃!」

 ガエル・サンデスの動作はその巨体に似合ったものだったが、突如として飛び出て来たカエルの舌に、グラヴィティ・ウォリアーはの胸は刺されてしまう。

「グラヴィティ・ウォリアー……!」

遊矢LP3500→2500

「まだ終わっていないわ! 《融合解除》を発動! 墓地から蘇って、王子様たち!」

 攻撃力が上がっていたグラヴィティ・ウォリアーの破壊に驚いていたところに、融合モンスターの特権であり切り札の、自分のバトルフェイズ中の《融合解除》が炸裂する。

「まだ私のバトルフェイズは終わってないわ! デスガエルでダイレクトアタック! デス・リサイタル!」

「《速攻のかかし》を墓地に捨て、バトルフェイズを終了させる!」

 だが、《ガエル》が三体相手フィールドにいることを恐れていた俺が、ダイレクトアタックに何の対策もしていない筈がなく、手札から現れたかかしによって、自称王子様の音波攻撃は防がれた……かかし自体は、俺を守って破壊されてしまったが。

「王子様たちの必勝攻撃でも倒せないなんて……ターンエンドよ」

「俺のターン、ドロー!」

 なんとか、二度目の大量展開からのワンショットキル並みの威力を持つ攻撃を、《速攻のかかし》のおかげで耐えしのぐことが出来たものの、俺のデッキには《速攻のかかし》のカードは一枚しか入っておらず、墓地サルベージカードは手札にはない……次なるカエルたちの攻撃が防げるかどうか。

「速攻魔法《手札断殺》を発動! お互い手札を二枚捨て、二枚ドローする!」

 ならば、大量展開とか言っていられないほどに攻め込むまでのこと……!

「墓地に捨てた《リミッター・ブレイク》の効果発動! デッキ・手札・墓地から、《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! 来い、マイフェイバリット!」

『トアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 お決まりの《リミッター・ブレイク》によって特殊召喚され、マイフェイバリットカードが俺の目の前でポーズをとった。

「それがあなたのマイフェイバリットカード……私の王子様の敵じゃないわね」

「確かに今は適わないかも知れないが、俺のマイフェイバリットは、俺のカードの起点となる! ……スピード・ウォリアーをリリースし、《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚!」

サルベージ・ウォリアー
ATK1900
DEF1600

 マイフェイバリットカードをリリースし、久方ぶりに行うアドバンス召喚。
それもその筈であり、この新たな機械戦士である《サルベージ・ウォリアー》はアドバンス召喚時にしか効果を発揮しないのだから。

「サルベージ・ウォリアーがアドバンス召喚に成功した時、手札・墓地からチューナーモンスターを特殊召喚出来る! 墓地から蘇れ、《ニトロ・シンクロン》!」

 サルベージ・ウォリアーが持っていた巨大なチェーンにより、墓地からニトロ・シンクロンが引き揚げられる……これで再び、フィールドにチューナーと非チューナーが揃ったというわけだ。

「レベル5の《サルベージ・ウォリアー》と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 本日二度目となるニトロ・シンクロンによるチューニングだっだが、今からシンクロ召喚しようとしているシンクロモンスターが、自らをチューナーに指定しているからか、グラヴィティ・ウォリアーをチューニングする時よりもメーターが大きく揺れている……気がする。

「集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1800

 悪魔のような形相をしている、爆発物の名を関した機械戦士であるニトロ・ウォリアーがシンクロ召喚される。
その2800という元々の攻撃力は《機械戦士》たちの中ではナンバーワンに位置し、魔法カードを使えば瞬間火力は更に増大するのだが……残念ながら、手札に魔法カードはなかった。

「ニトロ・シンクロンの効果により一枚ドローし、墓地の《ADチェンジャー》の効果を発動! このカードを除外することで、デスガエル一体を守備表示にする!」

 《手札断殺》の効果によって、《リミッター・ブレイク》と共に墓地へ送られていた旗を持った機械戦士が一時的にフィールドへ現れ、《Defense》を意味するのであろう青い『D』の旗によってデスガエル一体を守備表示にして除外された。

「なんで王子様を守備表示に……?」

「すぐに解るさ。バトル! ニトロ・ウォリアーで、攻撃表示のデスガエルに攻撃! ダイナマイト・ナックル!」

 ローズの疑問もそこそこにバトルフェイズへ突入し、ニトロ・ウォリアーがデスガエルの一体に向かってパンチの雨あられを放った……やはり、手札に魔法カードがなかったことが悔やまれる。

ローズLP2900→2000

「よ、良くも王子様を……!」

「まだまだ終わっちゃいない。ニトロ・ウォリアーは相手モンスターを破壊した時、相手の守備モンスターを攻撃表示にしてもう一度バトル出来る! ダイナマイト・インパクト!」

 先程ADチェンジャーの効果によって守備表示にされたデスガエルが、今度はニトロ・ウォリアーの攻撃表示とされ、まもなくニトロ・ウォリアーの攻撃の第二の被害者となった。

ローズLP2000→1100

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「一人しゃ飽きたらず、一気に二人も王子様を倒すなんて……! 私のターン、ドロー!」

 自身のライフが1100という数値にまで削られているにも関わらず、なお自分の王子様たるマイフェイバリットカードのことを言うとは、ローズというデュエリストは尊敬に値する……王子様だの精霊だのを抜きにすれば、の話だが。

「私のフィールドには伏せカードがないから、墓地から《黄泉ガエル》を特殊召喚させるわ!」

黄泉ガエル
ATK100
DEF100

 天使の輪が頭上に浮かんだカエルが、その名の通り墓地から特殊召喚される。
《ガエル・サンデス》の攻撃力アップに貢献するため、墓地に貯まったままであった黄泉ガエルだったが、むしろこちらの蘇生効果の方がよっぽど重要であるのは間違いない。

「行くわよ、私の切り札! 黄泉ガエルと王子様をリリースし、《両生類天使-ミ・ ガエル》を特殊召喚!」

両生類天使-ミ・ ガエル
ATK1400
DEF800

 二体のモンスターをリリースし、特殊召喚されるローズの切り札……確かにデスガエルに比べればデカいが、二体のリリースを使ってこの貧弱なステータスはあり得る筈がなく、何らかの切り札たる効果を持っているに違いない。

「ミ・ガエルの効果発動! 自身のの効果で特殊召喚された時、墓地の《ガエル》を可能な限り特殊召喚出来るわ! 来て、《未知ガエル》! そして王子様たち!」

「なっ!?」

 ニトロ・ウォリアーによって破壊されたデスガエル二体と、リリースした筈のデスガエル、更にはいつの間にやら墓地に送られていた未知ガエルまでもが、《両生類天使-ミ・ ガエル》の切り札に相応しい効果によってフィールドに特殊召喚され、ローズのフィールドをガエルたちが埋め尽くした。

「更に行くわよ! 《死の合唱》を発動! 私のフィールドに《デスガエル》が三体以上いる時、相手フィールドのカードを全て破壊する! さあ歌って、王子様たち!」

 万丈目の使用する《おジャマ・デルタ・ハリケーン》に似た効果を持ち……《ガエル》の展開力の関係上、あちらより発動が楽だが……俺がこのデュエルでもっとも恐れていたカードが、満を持して発動された。

 デスガエルたちの、歌とはとても言えない音波攻撃を喰らい続けてニトロ・ウォリアーは爆散してしまい、もうもうと空になった俺のフィールドに煙をあげた。

「これであなたのフィールドにカードはない! しかも、《速攻のかかし》も使ったから防ぐ手段もない。私の勝ちね!」

「……それはどうかな」


 俺の墓地から一枚のカードが光り、デッキからフィールドに立ち込もる煙を切り裂いて一陣の風が飛び出し、五体のカエルたちを相手に守備の体勢をとった。

「……なんなの!?」

「破壊された《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキから《スピード・ウォリアー》を、守備表示で特殊召喚したのさ!」

 俺のフィールドにあったカードは、ニトロ・ウォリアーを除けば一枚のリバースカードだけだった。

 そのリバースカードこそが今発動した《リミッター・ブレイク》であり、俺が《速攻のかかし》を使ってしまった後の《死の合唱》対策として伏せてあったカードであった。

「……だけど、私の王子様たちとその仲間の敵じゃないわ! 未知ガエルでスピード・ウォリアーに攻撃!」

 ローズのフィールドにいるカエルのモンスターの中で、唯一人型のモンスターである未知ガエルが、スピード・ウォリアーに攻撃してくる。
ステータスはローズのフィールドでもっとも低いが、守備表示のスピード・ウォリアーを倒すには充分であり、なおかつ貫通効果を持っている。

 だが残念ながら、俺とて対策は不完全じゃない……!

「ダメージステップ時、俺は手札の《牙城のガーディアン》を発動! このカードを墓地に送ることで、スピード・ウォリアーの守備力を、1500ポイントアップさせる!」

「手札から……牙城のガーディアン!?」

 未知ガエルに破壊されそうなスピード・ウォリアーの前に、牙城を守る機械戦士が突如現れ、未知ガエルの攻撃を跳ね返した。

「牙城のガーディアンによって、スピード・ウォリアーの守備力は1900! 700ポイントの反射ダメージを受けてもらう!」

 牙城のガーディアンに跳ね返された未知ガエルの攻撃は、そのまま本来の主たるローズの下へ返っていき、そのまま俺の代わりにローズがダメージを受けることとなった。

 俺のフィールドにあったカードは、ニトロ・ウォリアーを除けば一枚のリバースカードだけだった。

 ローズLP1100→400

「まさか、私の王子様たちの攻撃を耐えきるなんて……! カードを一枚伏せて、ターンエンドよ」

「俺のターン、ドロー!」

 そして《牙城のガーディアン》の効果はエンドフェイズ時まで続くため、展開力とは裏腹のその低い火力が災いしてデスガエル三体にミ・ガエルの追撃は受けずに済んだ。

 しかし、あくまで牙城のガーディアンの効果はエンドフェイズ時までなのだから、今のスピード・ウォリアーにはもう防ぐことは不可能であるし、《リミッター・ブレイク》と《牙城のガーディアン》による《死の合唱》対策などということが何度も出来るわけがなく。

 つまり、このターンが正念場……!

「俺はスピード・ウォリアーをリリースし、《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

ターレット・ウォリアー
ATK1200
DEF2000

 仲間の力を得る砲台の機械戦士が、スピード・ウォリアーをリリースしたことにより、その攻撃力2100にまで上昇させる。

「バトル! ターレット・ウォリアーで、未知ガエルに攻撃! リボルビング・ショット!」

「リバースカード、オープン! 《ガード・ブロック》! 私への戦闘ダメージを0にし、一枚ドロー」

 この戦闘でダメージが入っていれば終わりだったんだが、やはりそう上手くは行きはしないか。

「カードを一枚伏せてターンエンド」

「私のターン、ドロー!
……墓地から《黄泉ガエル》を特殊召喚するわ」

 だが、決めきれなかったとしても相手の主力は攻撃力1900のデスガエルであり、スピード・ウォリアーの力を得たターレット・ウォリアーの攻撃力には僅かに及ばない……《ガエル・サンデス》が融合召喚でもするのであれば話は別だが、今の黄泉ガエル特殊召喚からそれはない。

「あなたの《ターレット・ウォリアー》の攻撃力の方が高い。けれど、王子様たちの打点を補うガードぐらい投入してるわ! 通常魔法《アクア・ジェット》を発動して、王子様一人の攻撃力を1000ポイントアップ!」

 《激流蘇生》の時にも使われたような激流が発射されているブースターが、デスガエルの一体の背後に取り付けられ、いかにも攻撃力が上がる装備魔法……実際には通常魔法だが……というイメージ通り、デスガエル一体の攻撃力がターレット・ウォリアーを超えた。

「バトルよ! アクア・ジェットで強化された王子様で、ターレット・ウォリアーに攻撃! デス・リサイタル!」

 背中に取り付けられていたアクア・ジェットでスピードを上げたデスガエルの音波攻撃に、ターレット・ウォリアーはじわじわと破壊されていき、そのままターレット・ウォリアーの銃弾は当たらずに破壊されてしまっていた。

「く……!」

遊矢LP2500→1700

「これで終わりよ! もう一人の王子様でダイレクトアタック! デス・リサイタル!」

「悪いが、終わるのはお前の方だ! リバースカード、《リビングデッドの呼び声》を発動! 墓地から蘇れ――《グラヴィティ・ウォリアー》!」

 デュエルの中盤ごろ、ローズの《ガエル・サンデス》に破壊されてしまった機械の獣が、罠版の万能蘇生カードにより墓地より蘇った。
シンクロ召喚によっての特殊召喚ではないので、効果は発動せず攻撃力は2100と低いままだったが、デスガエルの攻撃を止めるぐらいならば問題ない。

「しぶといわね……! バトルを中断し……」

「いや、まだだ。……まだお前のバトルフェイズは終わっちゃいない!」

 ローズの言葉に、俺にダイレクトアタックをしようとしていたデスガエルは攻撃を中断し、俺の言葉に、グラヴィティ・ウォリアーは呼応するかのように一声いなないた。

「変に思わなかったか? なぜ俺が、ニトロ・ウォリアーではなく攻撃力の低いグラヴィティ・ウォリアーを蘇生したか! グラヴィティ・ウォリアーの効果発動! 相手のバトルフェイズ時に相手フィールドの守備表示モンスターを攻撃表示にし、強制的にバトルする! デュエル・ジー・フィールド!」

「えぇ!?」

 グラヴィティ・ウォリアーが自身の身体を中心に引力を発生させ、ローズのフィールドに守備表示でいた《黄泉ガエル》を攻撃表示にさせてグラヴィティ・ウォリアーの下へと引き寄せた。

 相手のバトルフェイズ時に守備表示モンスター限定という、微妙に使いづらい効果を持っているが、このような奇襲であるならば――これ以上に有効な効果はない!

「グランド・クロス!」

「きゃああああっ!」

ローズLP400→0

 ただでさえステータスが低いモンスター群である《ガエル》の中でも、その優秀な蘇生効果と引き換えにしたようなステータスの黄泉ガエルでは、グラヴィティ・ウォリアーの一撃を耐えきれる筈がなく……グラヴィティ・ウォリアーの強靭な鉄の爪をもって、ローズとのデュエルは終了した。

「楽しいデュエルだったぜ、プリンセス・ローズ」

 デュエルの決着の余波で少し倒れてしまったローズに手を貸してやると、意外にもローズは迷いなく俺の手を借りて立ち上がった。

「負けたわ……まだ王子様たちと心を通わせきれていないのかしら」

 そう言いながら自身のデッキを見るローズは、デュエル中となんら変わるところはなく、銀のように発狂してしまうと思っていた俺は、肩すかしを喰らってしまった。

 そしてその背後に、一瞬だけうっすらと王子様の格好をしたデスガエルの精霊が一瞬現れたのだが、すぐ見えなくなってしまった……まだ、精霊としての力が足りていないのだろうか。
……しかしローズには悪いが、『私を守るイケメンの王子様』には程遠い外見をしていたな。

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ遊矢!」

 スタジアムの外、相変わらず二人の弟分を後ろに従えながら、元気に十代が決め台詞を言ってくる。

「そいつはどうも。後はお前の出番だ」

 俺がデュエルに出たのは、あくまで光の結社側の要求による十代の代理にすぎない。
自分の出番が終わったのだから、十代と入れ替わるようにデュエルフィールドを出て行った。

 そして、今まで行われていたデュエルフィールドの中心部で十代が、マイクによって自分がローズデュエル出来なかったことを若干愚痴をこぼした後、高らかに修学旅行先を告げた。

『俺たちの修学旅行先は、あの《童実野町》! キング・オブ・デュエリストの武藤遊戯さんが激闘を繰り広げた、童実野町だ!」

 ほぼ同時刻――光の結社の斎王が占った運命の場所というところが、十代の選んだ童実野町だということは……俺に知る由はなかった。
 
 

 
後書き
テスト中なので更新遅れています(現在進行形)

そして、ローズのキャラを良く覚えていなかったせいで口調がほぼ明日香という……反省材料です、はい。

それと《激流蘇生》。
マイデッキも機械戦士も水属性が少ないので、全く使う機会がない……というかそもそも持っていないのですが、何故だか解りませんがお気に入りカードだったりするので、今回ローズに使わせてみましたw

では次回は修学旅行・童実野町編。
アクセラレーション! ……はしませんが、更新はテストが終わるまでお待ちください。
 
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