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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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SAO編
  五十話 解放軍リーダー救出作戦

「ミナ、パンとって!」
「ほら!皿に腕当たるぞ、こぼすこぼす!」
「リョウ兄ちゃん僕だけスープ少ないー」
「どれ?……ほら、これで良いだろ?」
「あーっ、リョウ兄ちゃん!ジンが僕の目玉焼き取ったー!」
「何ィ?くぉら!ジン!」
「か、代わりにニンジンやったようー」
「ニンジンってお前……あぁ、泣くなカロ!俺のやるから我慢しろ、ほら!」

「凄いね……」
「だな……」
 サチとキリトが続けて呟く。
眼前で繰り広げられる朝食の風景は、あっちでワーワー、こっちでギャーギャーと言った様子で、まるで戦場の様だ。
そんな中、一人アスナが苦笑しながらキリトに問う。

「って……何でリョウはあんなに馴染んでるの?」
「あぁ、俺の兄妹と兄貴って俺達が小学校の頃から一緒だったからな……慣れてる……のかな?」
「でもあそこまで直ぐに馴染めるなんてすごいですよ……まるでシュテルが戻ってきたみたい」
 クスクスと笑うサーシャをみて、キリト達は聴きなれない名前に首を傾げるが、サーシャがその先を言おうとしなかったので、追及は控えた。
静かさとは無縁だが、賑やかで温かい朝の食卓に、サチは黙って眼を細めて、微笑む。

「でも、リョウも皆も、とっても楽しそう……」
 嬉しそうに言うサチを見て、キリトは眩しそうに眼を細める。

「…………あぁ、そうだな」
「うん」
 子供達の相手をするリョウの顔は、すがすがしいほどに笑顔だった。

 その後、サーシャと共に、軍の最近の動向などに関して話合っていると、不意に、キリトが顔を上げ、教会の正面。大扉の方を向いた。

「誰か来るぞ、一人」
「え?またお客様かしら……?」
 サーシャの言葉に、今度はリョウが真剣な目つきで立ちあがって扉を睨む。

「いや、気ィつけた方がいいな。こりゃ鎧着てる音だ」
「……っ」
 昨日の今日であるため、相手は一人といえども全員に緊張が走る。その瞬間、教会の中に扉をノックする音が響いた。

────

 教会の扉から、キリトとサーシャの二人に挟まれるようにして入って来たのは、銀色の長い髪をポニーテールに結った背の高い女性で、装備は軍のユニフォームと同様の色彩を取った服と金属鎧に、腰にはショートソードとウィップを吊っている。
昨日とは違い、使い込まれた様子のその装備一式を見てリョウはわずかに警戒のレベルを上げるが、サーシャが子供達に笑顔で言った「この方は大丈夫」の一言でそれは霧散した。
恐らくこの教会内に限って言えば、此方よりもサーシャの危機管理能力の方が高いだろう。

 ユリエールと名乗ったらしいその女性は、此方に話が有るのだとキリトに説明したと言う。
サーシャに勧められ、キリトを含めた全員が集まった丸テーブルの前に軽く一礼して座ったユリエールは、ひとまず中心に居たアスナに向かって頭を下げた。

「はじめまして。ユリエールです。ギルドALFに所属しています」
「ALF?」
 基本的に、SAOでは名乗る時、自分の名前と所属するプレイヤータイプ(もしくは所属ギルド名)を述べる。例えばアスナは、「アスナ KoB」キリトだと、「キリト ソロ」といった具合だ。
しかし此処で、アスナはユリエールの述べたギルド名に首を傾げた。ALFという名には、聞き覚えが無かったからだ。
そこに助け船を出したのは、意外にもリョウだった。

「|Aincrad Liberation Forces (アインクラッド解放軍)の略称だな。つかその略称久々に聞いたわ」
「り、リョウ!失礼だよ!」
 少しぶっきらぼうな口調で言ったリョウを慌ててサチが注意するが、ユリエールは特に気にした様子も無く微笑んで、受け答える。

「すみません。皆さんには『軍』で定着していますもんね……私は正式名称がどうも苦手で……」
 苦笑しながら言ったその声は落ち着いた少し低めの大人っぽい声で、銀髪と空色の瞳という冷悧な印象の見た目も相まってクールビューティと言う言葉がぴったりに思えた。
続いて、アスナが自己紹介に移る。

「はじめまして。私はギルド血盟騎士団の……あ、今は一時脱退中なんですが、アスナと言います。この子はユイ」
 紹介を受けたユイは、不意に名前を呼ばれた事に気付くと、ぱっと顔を上げ、ユリエールをじっと見て……やがて小さく首を傾げた後、二コリと可愛らしく笑って視線を戻した。
続いてリョウ達が自己紹介をする。

「リョウコウっす。ソロです」
「サチと言います。生産職……です」
 普段あまり名乗らないサチは若干緊張気味だったが、特に噛む事も無く言えた事にホッとした様子を見せる、
するとユリエールは、少しだけ考え込むようなしぐさを見せた後、小さくつぶやいた。

「KoB……道理で連中が軽くあしらわれる訳だ……」
 それを聞いた瞬間、アスナの顔が強張る。
あしらわれた。という事は、この女性は昨日の事を知った上でこの教会に来ているのだろう。彼女が軍のプレイヤーで有る事も加味すると可能性として考えられるのは……

「つまり昨日の件で抗議に来た……という事ですか?」
「いいえ。その逆です。むしろ良くやってくれたとお礼を言いたいくらい」
「…………?」
 事情がつかめない。
普段の軍の姿からすれば、この状況で有れば怒鳴り声の一つでも上げそうなものだが、そうではない?ならば何を?と、アスナを始めとしたユリエール以外の五人が疑問に思っていると、椅子に座ったユリエールが突然姿勢を正して、言った。

「今日は、皆さん四人にお願いが合ってきたのです」
「お願い……?」
 アスナの問いに頷いたユリエールは、再びゆっくりと口を開いた。


 話は、軍の現在の体制ができるまでの事情に端を発する。

 現在の、ギルドALF。通称《軍》は本来、ギルドMTDと言うまったく別の名前のギルドだったのだそうだ。
このMTDと言うのは、現実世界に居た頃キリトやリョウがよくお世話になった、SAO開始当時日本最大のネットワークゲーム専門の総合情報サイト《MMOトゥデイ》の略称で、当然、ギルドを結成したのもそこのリーダーである、《シンカー》という男だった。

 さて、そもそも、現在《軍》と呼ばれるそのギルドが一番初めに提示した理念に付いて、此処で説明しよう。

 シンカーが本来理想図として提示したのは、一言で言うならば[社会主義国家]の形に近い物だ。
組織内における全プレイヤーが得たアイテムや情報。及びコルを、一端《MTD》と言う組織の下に置いて共同管理し、その上で纏まった利益を全プレイヤーに平等に分配すると言う策で、結成当初のみの事を言えば、決して現在の様な独善的な体制ではなかったのだ。
実際の所、その体制が効果を発揮してギルドに入団した者も決して少なくは無い。何しろ、上の命令にさえ従っていれば取りあえず食料など最低限の物は保障されたからだ。情報の無い物や、どうすれば良いか分からなくなった者の中にこのギルドに参加する者が多かったのはある意味必然とも言えた。
そうしてギルドMTDこと《軍》は規模を膨らませ、ついにメンバー数三千人を超える、超巨大ギルドとなったのである。

 平たく言うならば……それがまずかった。

 管理しきれなくなったのだ。
 人数を増やして、危険性を極力減らしたうえでの狩りをおこない、その上で得た収入をギルド内で均等に分配する。この発想は、はっきり言えば全く間違っていない。むしろ多くのプレイヤーの中で最も正しいとさえ世間一般で有れば言えるだろう。
しかし忘れてはならないのは、この世界がMMORPGの中だと言う事である。

 以前説明したが、MMORPGとは本来、「プレイヤー同士でゲーム内の限られたリソースを奪い合う」という、面倒な本質を持っている。
そしてそう言った世界の中で軍の掲げた様な理念を実現するためには、「末端まで届く強力なリーダーシップ」が有る事と、何よりギルド自体が、「管理できる現実的な規模で有る事」が絶対の必要条件だ。その点のみを抽出して行った場合、軍は条件を満たせなかった。
巨大すぎるのだ、組織そのものが。

 当然、組織が巨大化すればトップの指示や理念は通りにくくなる。結果、軍内部では末端プレイヤーによる入手アイテムの秘匿が横行。それに対して、上層部が粛清を行い、末端側は反発すると言う事態が次々に起こり、リーダーであったシンカーは最終的に指導力を失っていった。

 そこに台頭して来たのが、現在のギルドALF。《軍》を正式名とした男。
軍のサブリーダーで、名を《キバオウ》と言った。

 彼が提案したのは、単純に言えばギルドの体制強化案だった。
先ず、ギルドの名称を《アインクラッド解放軍》に変更。
此処までならば唯の趣味紛いの域なのだが、その後、公認の方針として、犯罪者狩り及びEXPやコル等の効率が良いフィールドの独占を開始。
犯罪者狩りに関しては、ある程度一般プレイヤー達の指示を得ていた物の、フィールド独占は数の力によるマナーを守らない強引な方法で有ったため、一般との摩擦が激化。今の軍に対するイメージの元となった。
しかし、フィールド独占による高効率の稼ぎによりギルドの収入は結果として激増。ギルド内におけるキバオウ一派の力はより強力な物となって行き……現在は、シンカーはほぼ飾り物。街中での《徴税》行為すら許す状況になってしまった訳である。

 しかしながら、どんな組織にも弱点があるように、キバオウたちにもそれは存在した。
彼らのしている事が本末転倒だった事がそれに当たる。

 アイテムや、コルの貯蓄量は、多少強引で有るとは言っても確かに増え続けた。しかし、あくまでそれらは使わなければ意味が無い。貯蓄をするだけして、キバオウたちはゲーム攻略その物を蔑ろにし過ぎたのである。結果、そこを糾弾されたキバオウは彼の配下で最もレベルの高い者集めた精鋭部隊を最前線に送り出すと言う少々賭けとなる手段に出た。そしてその攻略チームと言うのが、以前リョウ達が出会ったコ―バッツ達だったのだ。

 結果は、読者諸君も知ってのとおりである。
さて、その散々な結果の報告を受けたキバオウはと言うと、当然余りにも無謀な手段を使ったその判断ミスを強く非難された。こうして、軍内部の分裂は沈静へと向かった……かに思われたのだが……

「閉じ込めたぁ!?」
「はい……」
 リョウの驚いた声に、ユリエールは力なくうなだれる。

 そう。追放寸前まで追い詰められたキバオウは、ついに回廊結晶を使って高レベルダンジョンのど真ん中にシンカーを取り残すと言う強攻策に出たのである。

「その時のシンカーは、『丸腰で話し合おう』というキバオウの言葉を信じたために非武装だったそうで……とてもダンジョン最深部のモンスター群を突破できる様な状態では……」
「転移結晶は?」
 キリトが聞くと、ユリエールはこれまた力なく首を横に振った。

『いや、迂闊すぎだろ。仮にもギルマスがそれで良いのかよ……』
 迂闊すぎると言ったのは、それをする動機が充分にキバオウにはあるからだ。
シンカーが死亡した場合、ギルドリーダーの座は自動的にサブリーダーであるキバオウの物になる。つまり……

『要はあちらさんは殺ろうとしてたんじゃねぇか……』
 キバオウのしたことは、《回廊(ポータル)PK》と呼ばれるかなりメジャーなPKの手法の一つだ。シンカーとて、ダンジョン内で話し合おうと言われた時点でそれを予測していなかった訳ではないだろうに……

「良い人過ぎたんです」
『お人好しか……』
 どうやら軍のギルドマスターは、|SAO(この世界)では、真っ先に死ぬタイプの人種だったらしい。

そして、ユリエールからのお願いは此処からが本番だった。

────

 さて、ユリエールから出された依頼こうだ。

 地下ダンジョンに潜り、三日前に閉じ込められたシンカーの救出を手伝ってほしい。

 まぁ要は、リーダーたるシンカーに起こったこの危機を防げなかったのは副官である自分の責任で、相手がダンジョンの中に居る状況では転移結晶を届ける事が出来ないため助けに行きたい。
しかし自分のレベルではそのダンジョンの突破が不可能なことは火を見るよりも明らかであるため悩んでいた所に、上層から有り得ない強さを持つ三人組(何故か戦闘に参加していないキリトも頭数に入ってた)の噂を聞き付け、此処に来た。
で、厚かましいとは知りつつも自分の手助けをしてはくれまいかと頼みに来た訳だ。

 さて、それに対する此方の反応はと言うと……

「ん~~」
「……」
「……」
 かなり迷っていた。
信用して付いて行くのは簡単だ。しかし、ホイホイ付いて行ってだまし打ちされるとも限らないのである。
まぁリョウ達のレベルで有れば大抵の事は力技でひっくりかえせるだろうが……正直何が有るか分からない以上、素直すぎるのは危険だ。
まして、軍の内情を知らないリョウ達にとってみれば、今の話それ自体が嘘で有るとも限らない。そう言う世界なのだ。SAO(ここ)
そうして、その胸をユリエールに伝えたアスナの顔が、ユリエールの微かに潤んだ瞳(副官と言うか、どうも恋人っぽい)を見て辛そうに顔をゆがませた時だった。

「大丈夫だよママ、その人。嘘ついて無いよ」
『……っ』
 唐突に、鈴の音を鳴らすような綺麗な声が響いた。
ユイだった。
最早昨日の様にぶれた言葉使いでは無く、だいぶ安定した文章だ。

「ユ、ユイちゃん……そんな事、分かるの?」
「うん。上手く言えないけど……分かるよ」
『…………』
 そう言ったユイの頭に、キリトの手が伸びてその黒髪をくしゃくしゃと撫でる。

「疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ?行こう。きっと何とかなるさ」
 にやっと笑ったキリトにアスナ一言、のんきな人ねぇと言いつつも二コリと笑顔で答える。
 それを見たキリトが、今度はリョウに振りかえった。

「兄貴は?俺らだけでも何とかなるかもだけど……」
「……──行けるか?」
「え?」
 呟いたリョウの言葉がよく聴こえなかったらしく、聞き返したキリトにリョウはニヤリと笑って、今度ははっきりと答える。

「っま、いいぜ。偶には人助けってのも悪かねぇだろ」
「偶にって……ちなみに兄貴、信用の根拠は?」
「あぁ?んなもん、言うまでもねぇだろ?」
 相変わらずにやにやと笑うキリトにこれまたニヤリと返したリョウは人差し指の先でこめかみを二回「トントン」と叩き……

「勘だ!!」

────

「ぬおおおおお」
 右の剣がずばーーーーーーっ!

「りゃあああああああ!」
 左の剣でどかーーーん!

「パパーがんばれー」
 無邪気に応援する子供の声。

「おっしゃああああああああ!!!」
 答える子煩悩なパパさんの声。

「ギャアアアアアアアア!!」
 心なしか悲鳴に聞こえるモンスター達の声(?)

 こんなのが、先程からずっとリョウ達三人の前で繰り返されている状況である。というか……

「……暇だ」
「そう言わないの。リョウ」
「あはははは、でも実際。私達居る意味ほぼ皆無ですね……」
 リョウのため息交じりの声に答えたのはアスナとユリエールだ。
ダンジョンに入ってから、キリトがずっとあの調子で無双を続けているため、後ろに控えるアスナ、ユリエール、リョウ、ユイは暇でしょうが無い(まぁユイに関してはどちらにせよだが)。
唯一、先程キリトが何故か大事に取っていたカエルの肉をアスナが速攻でごみ箱に捨てた時は、一同爆笑した物だが……

 シンカーが閉じ込められたと言うダンジョンは、意外にも直ぐ近く。第一層、始まりの街の、地下にあった。
何でも、上位階層の進行状況によって解放されるタイプのダンジョンだったらしく、βテスターだったキリトですら知らなかったらしい。レベルは60程度。中層プレイヤーにとっては十分すぎるほどに高レベルダンジョンだが、既にレベル90を超えるキリトにしてみればさしたる程度ではないため、この状況である。ちなみに、ユイが付いて来ているのは流れと言うか何と言うか、サチと共に留守番を頼もうとしたのだが4、彼女が頑なに行くと言って聞かなかったのである。

『頑固なとこは母親譲り……ってかぁ?』
 そうして、カエルからレイスやゾンビ。ボーン系のモンスターとなって行ったモンスター達を、何度目かキリトが消し飛ばした時、遂に、通路の向こうに安全地帯と思われる暖かな光が見えた。

「奥にプレイヤーが居る。グリーンだ」
 キリトがそう言った途端、我慢出来なくなったらしいユリエールが一気に走りだし、アスナとキリトも慌ててその後を追う。と……

「あ、おいちょっと……待ってくれ~い」
 当然リョウは置いて行かれる訳で、えっほえっほと走り出した。

『つーか、やっぱ彼氏さんですか……』
 最近増えてるよなー等と微笑ましい事をついつい考える。その時だった。
ふと、ユリエールとシンカーの間に有る、十字の交差点の様な通路が眼に入る。
十字路の奥に有る、影になっていて見えない部分が視界の端に入った……瞬間

『っ!!?』
 突然、凄まじい悪寒を感じてリョウは咄嗟に叫ぶ。
まだ見えない。何も見えないが……あの通路はヤバい!!

『来ちゃだ──「とめろキリトォ!!!」』
 自分と同じく何かを叫ぼうとした奥の男の声に重なって、地下道内に轟いた。
次の瞬間、ズバン!と空気が破裂する様な音がして、キリトが猛烈な勢いでダッシュし、ユリエールを抱え込んで引き止めた。
そして二人が、十字路ギリギリのところで止まったその瞬間……
さながら眼前を通過する列車のごとく、黒く大きな影がユリエールとキリトの眼前を通り過ぎ、反対側の通路へと入って行った。

「ちっ!」
 あの大きさは間違いなくボスモンスターだ。考えるよりも早く、リョウはキリト達の元へと跳躍で一気に接近。彼らとボスモンスターを挟んで前に立つ。
ボスが居ると言う情報は、一応事前には受けていた。
レベルはダンジョンと同じ60程度と考えていたため、正直楽勝だと思っていたのだが……


『此奴が、60クラスだぁ?』
 現前の闇の中に溶け込んでいるモンスターの姿は、策敵の暗視スキルのおかげではっきりと見てとれる。しかし、その姿は今まで見たどのモンスターよりも重々しい威圧感を放っていた。
真っ黒でボロボロのフード付きマントに質量を持った霧の様な闇を纏い、巨大な血の滴る鎌を持ったその姿はまさしく……

「死神……」
 後ろでキリトの呟いた声が、耳の中に残響となって響く。

《運命の鎌(The Fatal-scythe)》
 それが、その死神の名だった。
 
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