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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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SAO編
  四十七話 教会にて──

「どうぞ」
「「「「ありがとうございます」」」あざっす」
「リョウ……」
 差し出されたお茶に四人が一斉に礼を言う。が、一人だけ丁寧とは言い難い言葉を発したリョウにサチは小さくため息をついた。
 教会内の右側の小部屋。その中にあった長机に、四人は座り、子供たちの保護者らしき女性は、茶を配り終わった後向かい側に座り、首を傾げる。

「それで……人を、探していらっしゃると言うお話でしたけど……?」
 その問いに、アスナは慌てたように持っていたカップを置いて答える。

「あ、はい、私はアスナ、こっちはサチ、リョウ、この人はキリトと言います」
「こんにちは」
「どもっす」
 タイミング良く頭を下げたリョウとサチに続き、キリトも慌てたように頭を下げる。

「あ、すみません名前も名乗らず……私は、サーシャです」
 釣られた様に頭を下げる女性……サーシャに続き、アスナも頭を下げた。
そうして、アスナは自身の膝の上で未だに眠るユイを紹介し、この少女に記憶が無いらしい事や、保護者を探している事の説明を始めた。
そして、それを聞いた後、今度はサーシャがこの教会の説明を始める。

 この教会に暮らす小学生、中学生年代の子供の数は、現在二十人程度。《はじまりの街》に居る子供プレイヤーのほぼ全員なのだそうだ。
ゲーム開始時、この世界に居たその年代の子供の殆どは程度の差は有れどパニックを起こし、精神的問題をきたしたのだと言う。その頃、キリトは中二アスナは中三だったので、対応。或いは適応し、この街から出て行った子供も一応は居たのだが、本来まだまあ親の助けなしでは生きて行けない世代の子供たちだ。むしろキリトのような例の方が少ないだろう。
どうしてよいか分からず、目的を見失い、希望を失った子供たちの中には、そのまま回線切断……即ち「死亡」した子供もいたらしい。

 このサーシャという女性は、初めの内はリョウ達と同じくゲームクリアを目指し、レベル上げなどをしていたのだと言う。
しかし、ある日、はじまりの街の一角でそう言った子供の内の一人を見つけ、放っておけなくなり、その手の子供達を集めて暮らすようになり……今に至るのだそうだ。

 ちなみに現在でも、彼女等はほぼ毎日、はじまりの街を一エリアずつ見て回り、子供がいないかどうかを調べているのだそうだ。

「成程……っつー事はユイ坊みたいな子供がいたら……」
「えぇ。絶対に気が付いたはずです。残念ですけど、この街で暮らしていた子じゃあ無いと思います……」
「そうですか……」
 アスナが俯き、腕の中のユイを抱きしめるのを横眼で見つつ、リョウは疑問になっていた事をサーシャに問う。

「あのー、俺らがこんな事聞くのもあれなんすけど、こんだけ子供いたら生活費とかキツキツじゃないっすか?」
「あ、それは、私以外にも此処を守ろうとしてくれてる年長の子が何人かいて……彼らは町周辺のフィールドなら絶対大丈夫なレベルになっていますので、食事代くらいは何とか。ぜいたくはできませんけどね」
「へぇ……」
 キリトが驚いたような声を出す。此処までの道のりを教えてくれた街路樹の近くに居たプレイヤーは、その木から落ちて来る一つ五コル(モンスターを狩ると町周辺の雑魚でも二十コルは堅い)の実を集めると言う途方も無い様な作業で生活費を稼いでいたのだ。
更にサーシャの言葉は続く。

「それに、以前まで此処に定期的に沢山お金を入れてくれていた前線プレイヤーの方が一人いて、その人のおかげで貯金もまだあるんです」
「っ……あの、そいつって──」
 リョウが更に質問をしようと、口を開いた……その時だった。

「先生!サーシャ先生!大変だ!」
 数人の子供が部屋にバタバタと駆けこんできたため、話が中断されてしまった。

「こら!あんた達お客様に──」
「それどころじゃないよ!」
 サーシャは反射的に子供達を叱責しようとするが、目に涙を浮かべて必死の形相で叫ぶ赤毛でツンツンとした髪型の少年のようすをみて、口を紡ぐ。

「ギン兄ィ達が、軍の連中に捕まっちゃったよ」
「──場所は!?」
『うぉ』
 瞬間、サーシャの纏う空気が一変する。先程までの穏やかな雰囲気が嘘のように毅然とした強い物へと。

 子供達は東五区の道具屋裏の空き地 (リョウ達には何処の事だか見当がつかなかったが)で、軍の人間からブロックを受けているのだと言う。
話し合いに入る前、子供達の望みでいじらせた武器を貸してほしいと赤毛の少年はキリトに頼んだが、キリトはそれを右手一本で制止し、言った。

「あの武器は、君たちだと必要パラメータが高すぎて装備出来ない。俺達が助けに行くよ。この姉ちゃんも兄ちゃんも、こう見えても滅茶苦茶に強いんだぞ?(ボソッ)特に兄ちゃんが」
「あ?何か言ったか?キリト」
「いえ何も」
 何やら妙な発言が聴こえたが、キリトはリョウとアスナに視線を送り、二人が頷き返す。
その後、アスナはサーシャに援護を提案し、サーシャはこれを受諾した。

『そうすっと……』
 リョウは心配そうな表情で状況をみ守っていたサチの肩を叩き声をかける。

「お前は、此処に残る子供の相手頼む。わりいな。置いてくことになっちまって」
 そう言うと、サチはゆっくりと首を振る。微笑んで言う。

「私が役に立たないのは自分で分かってるもん。気を付けてね?」
「おう」
 サチは教会の中でも特に歳下の子供達の相手をサーシャから受け、リョウ、キリト、アスナはサーシャの後ろに付く。

「それじゃ、すみませんけど走ります!」
「げ、マジすか?」
 振り切られないようにしなければ……
 
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