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髑髏天使

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第六話 大天その六


「こんなのなのに」
「どうして魔物だけが違うって言えるのさ」
「こういうことか」
「普通に人間とは全然違う姿の魔物もいるから」
「そうそう」
 今度は塗り壁と猫又が言う。
「化けるのもいるしさ」
「日本以外の国からも来ているじゃない」
「そうだったな。日本以外の国からもな」
「今日本は魔物に関してとんでもないことになっておるぞ」
 博士はこのことも牧村に話した。
「君も最初に出会ったのは虎人だったじゃろ」
「そうだ。あれは中国からだったな」
「虎人の分布は広いのじゃよ」
「そうなのか」
「アジア全域におる」
 なお虎の分布自体がそうなっている。東南アジアや中国だけでなくインドにもいるしシベリアにもいる。韓半島においても虎は象徴的な存在として知られている。
「中国だけにおるわけではないのじゃよ」
「それが日本に来た」
「後の連中ものう。半漁人はブラジルじゃな」
「アマゾンか」
「左様。あそこにいる魔物じゃ」
 魔物についても実に詳しい博士であった。
「アマゾン川において生活しておる。普段は魚を獲って暮らしておる至って呑気な連中だというが」
「あいつは例外だったか」
「妖怪と魔物の境界は曖昧じゃよ」
 こうも言う博士だった。
「人を襲うか襲わないか。それだけじゃ」
「妖怪の世界にいる半漁人もいるのか」
「そういうことじゃ。この連中は人を襲わぬから妖怪なのじゃよ」
「前にもそういう話出たけれどね」
「そうだよ」
 今度はわいらと土蜘蛛が牧村に言ってきた。
「たったそれだけ」
「それだけなんだよ」
「そういえばこの連中は」
 牧村はここでそのわいらと土蜘蛛を見て述べた。
「人を襲っても不思議ではない姿だな」
「はい、その通りです」
 いきなり彼の目の前に美しい女の顔がやって来た。
「そうですよ。私にしろそうですし」
「ろくろ首もか」
「御存知ありませんか?ろくろ首も人を襲う者がいますよ」
「初耳だが」
「しかし事実じゃよ」
 博士は牧村にまた話す。
「それはな。ろくろ首の中にも魔物がおる」
「どうやってだ。こんなのが」
「あら、こんなのなんて」
 ろくろ首のろく子は牧村の失礼とも思える言葉にその知的な美貌の顔をむくれさせてみせる。その間に首をゆらゆらと宙に動かしている。
「心外ですわ。私だってれっきとした妖怪ですのに」
「少なくとも緊張感は感じられない」
 ろく子にこう返す牧村だった。
「到底な」
「あらあら」
「日本の妖怪には多いみたいだがな」
「ろくろ首には二種類あるのじゃよ」
 博士がろくろ首について話してきた。
「まずはこうして首が伸びるもの」
「これだけではないのか」
「あとは首が抜け出て飛ぶものじゃ」
「首が抜ける!?」
「そうじゃ」
 牧村にとっては信じられない話であった。
「首が抜けるのじゃよ」
「ろくろ首の首が抜けるのか」
「そのうえで空を飛ぶ」
 さらにまた言う博士であった。
「空をな」
「そんな者もいるのか」
「中国に似たようなのがおってな」
「中国か」
「左様。飛頭蛮と言う」
「飛頭蛮か」
 やはりこれも牧村の知らない妖怪であった。ただ名前を聞く限りは頭が飛ぶ種類のものではないかと漢字についても考えるのだった。
「色々といるな」
「何でもおるぞ」
 博士の言葉はやけに達観したものだった。
「妖怪というものはな」
「どうやらそうらしいな」
「そう。だからろくろ首もな」
「首が抜ける者もいるのか」
「そちらは首が空を飛ぶ」
「完全にその飛頭蛮と同じだな」
「しかし一つだけ違う」
 ここで言葉を付け加える博士であった。 
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