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髑髏天使

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第二話 天使その十


「鎧もまた同じか」
「その通りじゃ。その名も髑髏天使」
「髑髏天使!?」
 その聞き慣れない名前を聞いて牧村の眉が顰んだ。
「それがあの姿の名前か」
「どういった存在か聞きたいか」
「少なくとも俺には聞く権利がある」
 これが牧村の返答だった。
「どうしてこんな姿になれるようになったのか、そしてこの姿が何なのかな」
「成程な。やはりそう言ったのう」
「では聞かせてくれ」
 周りの妖怪達を目だけで見回しながら博士に答えた。
「その髑髏天使が何なのかな」
「うむ、わかった」
 博士は今の牧村の言葉を受けて説明をはじめた。それによるとその髑髏天使というものは五十年に一度姿を現わし同じく五十年に一度多量にこの世に出て害を与える異形の者達を倒す存在だという。人が変身しその力で異形の者達を倒すというのだ。
「そういうことじゃ」
「その髑髏天使に俺がなったのか」
「昨日二十歳の誕生日だったそうじゃな」
「そういえばそうだったか」
 実は意識していなかったのだ。
「家族も俺も忘れていた」
「忘れていたのか」
「ああ。大した話じゃないからな」
「誕生日が大した話ではないか」
「一歳老けるだけだ」
 やはり牧村の言葉は素っ気無い。
「それだけだ。俺にとってはな」
「本当に味気ないのう。わしなんぞは今でも誕生日は祝うというのに」
「お酒でね」
「僕達と楽しくね」
 妖怪達がここで笑いながら話す。
「そういうことじゃ。それがないとはのう」
「とにかくだ。二十歳になった時に髑髏天使になるのか」
「その通り。しかしなあ」
 博士はあらためて牧村を見て言うのであった。
「まさかな。君だったとはな」
「それは俺の台詞だ」
 牧村から言ってきた。
「全く。こんなことになるとはな」
「それでじゃ。君はこれから」
「その化け物共を倒さないといけないんだな」
「できるか?」
 真顔になって牧村に問う。
「それは。どうじゃ?」
「正直なところ願い下げの話だ」
 また実に正直に述べた。
「今まで化け物にしろ本やテレビの中だけだと思っていたしな」
「しかし現実にいるぞ」
「まだ信じられないんだが」
 牧村の偽らざる本音であった。
「この目で見てはいるがな」
「ふむ。見ても信じられんか」
「夢ではないのはわかる」
 それはわかると博士に述べた。
「しかし幾ら何でもな。これはな」
「まあこうした連中は信じるには色々と慣れるのも必要じゃからな」
「慣れるって博士」
「随分な言いようだね」
 また妖怪達が博士に突っ込みを入れる。悪意のある調子ではない。 
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