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髑髏天使

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第十二話 大鎌その五


「だが。それでもだ」
「闘うというのだな」
「こちらから闘いは避ける」
 これは言うのだった。
「しかし。向こうから来た場合はだ」
「違うのか」
「振りかかる火の粉は払う」
 こうも言った。
「それが俺の主義だ」
「どうなっても知らんぞ」
 博士はそんな彼を強い目で忠告した。
「神を相手にしたならばな」
「安心しろ。死にはしない」
 彼は素っ気無く返した。
「少なくとも死ぬつもりはない」
「神を相手にしてはそうも言えんのだが」
「神だからといって無敵ではないな」
「世の中に無敵の存在なぞおらんよ」
 博士の真理を語る言葉は続く。
「しかしのう。力の差は覆せぬものじゃぞ」
「力だけで闘うつもりもない」
 腕を組んで述べた。
「その場合はな。もっとも俺から仕掛けるつもりはないがな」
「ならいいがのう」
「とりあえず死神の存在はわかった」
 それは受け入れた。
「それでだ。次は」
「魔物か」
「今度は何が出て来るかだが」
「ふむ。何が出て来るかのう」
 博士は己のその白く長い髭を右手でしごきつつ述べた。考えるようでそれでいて探るような。そうした顔で牧村に対して話すのだった。
「今度はな」
「魔物といっても多いな」
「今までは一体ずつじゃったがそれもわからんな」
「わからない?」
「じゃから死神もおる」
 また死神の存在が話に出された。
「向こうもそれはわかっておるからな」
「二体か」
「今までは一対一じゃからどうにかなったが」
「死神に向けた戦力が作戦が変わってこちらに向かう場合もある」
「そういうことじゃ。その場合は辛くなるぞ」
「二体を同時に相手にする」
 現実を考えるのだった。
「その場合もだな」
「その場合のことは考えておくようにな」
「そうだな。そうさせてもらう」
 今度は牧村が己の顎に手を当てた。
「俺も。むざむざとやられるつもりはない」
「そうじゃ。その意気じゃよ」
 博士は牧村のその意気は認めた。しかし言葉はさらに出すのだった。
「じゃが」
「何だ?」
「一つ気をつけておいた方がいいのかも知れんぞ」
 不意にこんなことを言ってきたのだった。
「若しかしたらのう」
「何かあるのか?」
「今読んでいる文献に一つ妙なことが書かれておった」
「文献か」
「タイから取り寄せたものじゃが」
 見れば今度は机の上に巻物がある。やはりかなり古ぼけて触っただけで崩れてしまいそうな。そうした紙の巻物があるのだった。
「タイか」
「タイといっても。これは」
「また随分古い時代のものなのはわかるがな」
「千年は前のものだな」
「アユタヤとかそういった時代の前だったか」
「カンボジアの方と一緒になっておった頃じゃったかのう」
 博士は今度は左手を顎に当てて考える顔になって述べた。 
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