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髑髏天使

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第十二話 大鎌その二


「一人。面白いのを既に読んでいるわ」
「ほう、もうですか」
「ええ。まずはこれで一人ね」
「はい」
 老人は女に対して頷いてみせた。
「まずはですね」
「それで俺か」
 次に声を出したのは男だった。
「俺になるな」
「あんたは来てからまず二人出したわよね」
 女は男に目を向けて問うた。その妖しい光を放つ目を。
「それでまた出せるのかしら」
「案ずることはない」
 男はまずは落ち着いた、余裕のある態度を見せた。
「アメリカは大きな国だ」
「私の国もそうよ」
 女の国は中国である。
「大きさは同じ位じゃなくて?」
「それはそうだがな」
 男もそれは認める。
「だが。今はそれを張り合うつもりはない」
「そうなの」
「魔物を出せるということだ」
 彼が言うのはこのことであった。
「魔物をな。それは安心してくれ」
「それでは誰を?」
「出せるのかしら」
 老人と女はその彼を見つつ問うた。
「一人ですが」
「誰なの?」
「そちらに負けない面白いのがいる」
 男はここで女の先程の言葉を返す形で述べた。
「また一人な。それを出す」
「期待していいのね」
「俺は期待を裏切らない」
 言いつつ唐揚げを口に入れる。鶏の唐揚げでそれには既にレモンをかけている。それを生姜醤油で食べるという食べ方をしている。
「そういうことだ」
「そう。それもいつも通りね」
「そういうことだ。では話は決まりだな」
「ええ、そうね」
 まずは女が彼の言葉に頷いた。彼女は頷きながら揚げを食べた。厚揚げを焼いてカラッとさせたものである。それを醤油に漬けて食べていた。
「私はそれでいいわ」
「あんたはどうなんだ?」
「私もです」
 老人はいつもの微笑で彼の言葉に返した。
「ではそういうことで」
「よし。これで話は終わりだ」
「そうね」
「そうですね」
「それではだ」
 男は話を変えてきた。
「ここの食い物だが」
「いいものでしょう?」
 老人が男に言葉を返した。
「このお店は」
「この時代の食い物は味がかなりいいが」
「この店は特にです」
 こう男に告げた。
「特にいいのですよ」
「そうみたいだな」
「はい。ですから」
「今日はここで最後まで飲み食いして」
 彼等の中ではこれはもう決まっていた。
「そして」
「終わりですね」
「これで」
 彼等はそれぞれ言った。
「そういうことよ。今日はね」
「先は長いですからね」
 老人の笑みはいつもと変わらない穏やかなものであった。
「そういうことにしましょう」
「だが。それでもだ」
 男もまたいつもと変わらない言葉の調子である。 
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