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髑髏天使

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第十一話 死神その十二


「猿の魔物がいることもな」
「調べたのか?」
「髑髏天使としは調べていない」
「ではどうして調べたのだ?」
「おとぎ話だ」
 これが彼の返事だった。
「四国に猿の妖怪がいて暴れ回っている話はな」
「そういうことか。それでは話が早い」
「早いか」
「来い」
 しばてんは右手で手招きをしつつ牧村に対して声をかけた。
「楽しむか」
「貴様もまた楽しむのだな」
「魔物とは何かはもう知っていると思うが?」
 楽しむという言葉を肯定したうえでのしばてんの今の言葉だった。
「それはどうなのだ?」
「そうだな」
 牧村もそれは否定はしなかった。
「先程の話通りだな。それではだ」
「さあ変身するのだ」
 しばてんはまた彼に言ってきた。
「早くな。人間である貴様には興味はない」
「人間の俺にはか」
「俺が興味があるのは髑髏天使」
 彼の口からもこの存在のことが出された。
「それだけか」
「そうか。ならば」
 しばてんの言葉を受ける形になったがそれでもだった。彼は変身に入ろうとした。しかしその時だった。
「少し待ってもらおうか」
「むっ!?」
「貴様は!?」
 牧村は変身に入ろうと拳を作ったところで動きを止めた。そのうえで声がした自身の左斜め後ろを見た。しばてんもそちらに顔を向けていた。 
 そこにいたのは彼だった。そう、その彼が今夜の砂浜に姿を現わしたのだった。
「面白いことをしているようだな」
「何故ここに来た」
 死神だった。あのライダースーツで悠然と出て来た彼に対して問うたのは牧村だった。
「どういう風の吹き回しだ?」
「順番を譲ってもらいたくて来た」
 死神は悠然と出て来たうえで牧村の隣に来て言うのだった。
「私にな」
「順番だと?」
「そうだ。私にな」
 表情は変わっていないが声は笑っていた。
「譲ってもらおう」
「闘うというのか」
「私にも闘わなくてはならない理由がある」
 悠然とした調子のままで牧村の横に来て述べた。
「そう。増え過ぎた魔物達の命を駆る為にな」
「それは俺のことか」
「貴様だけではない」
 死神は今度はしばてんに対して顔を向けて言葉を出した。
「貴様等。増え過ぎた魔物達の命を減らす」
 両手をスーツのズボンのポケットに入れた姿勢で宣言してみせた。
「死神である私の手でな」
「面白い。髑髏天使の次は死神か」
 しばてんは死神の自信に満ちた言葉を受けても平然としたままであった。
「ならばだ」
「闘うというのだな。私と」
「無論髑髏天使の力は欲しい」
 その本来の目的は忘れてはいなかった。決して。
「だが。死神の力にも興味がある」
「私を倒せば私の力が得られる」
 この辺りはそのまま髑髏天使を倒した時と同じであるらしい。魔物の力故であろうか。
「無論。倒せればだな」
「では。倒してみせよう」
 しばてんは言いながら身構えてきた。その両手を拳にして前に出してきた。
「最初に貴様をな」
「一つ言っておく」
 死神は両手をズボンのポケットから出したうえで宣言するように言ってきた。
「私は強い」
 こう言うのだった。
「死神だからだ」
「死神だからか」
「私もまた神」
 自信は氷の如く絶対のものになっていた。 
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