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髑髏天使

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第十一話 死神その七


「それはな」
「では今回はどうしてだ?」
「特別な事情だ」
「特別な、か」
「今の魔物達の動きは異常なまでに活発だ」
「それによりまだ冥界に行ってはならない命がそちらに来るというのだな」
「それも多量にな」
 語るその声に感情は見られないが不快に思っているのはわかる。そうした言葉であった。
「だからだ。それを防ぐ為にだ」
「話の元になっている魔物を刈るのか」
「いささか矛盾しているがな。その通りだ」
 牧村に対して述べた。
「魔物にも運命があるのだがな」
「より多くの運命の為か」
「魔物達の魂を冥界に送り届ける」
 死神の言葉が強くなった。
「それが私のこの世界での仕事だ」
「では貴様も魔物を倒すのか」
「そういうことになる。貴様とは違う理由だが行動は同じだ」
「行動は、か」
「邪魔をすることは許さない
 牧村の目を見ての言葉だった。
「例え貴様が髑髏天使であろうとな」
「俺は魔物と闘う」
 牧村は静かに死神に言葉を返した。
「それだけだがな」
「貴様と闘うつもりはないがな」
「私もだ」
 死神も彼に言葉を返す。
「基本的にはな」
「基本的にはか」
「だが。さっきも言ったが」
 死神の言葉は続く。
「邪魔をすることは許しはしない」
「それは俺も同じことだ」
 ここで両者の視線が衝突した。互いの意志もまた。
「誰にも邪魔はさせない」
「貴様が魔物を倒すことをか」
「その通りだ。これは覚えていてもらおう」
「わかった。では覚えておこう」
 死神はここでは牧村の髑髏天使としての言葉に頷いた。
「そのことはな」
「そうか。では話はこれで終わりだな」
「そうだ。言いたいことはこれだけだ」
 こう言って踵を返しハーレーに向かうのだった。
 そして乗り。ヘルメットを被る。そのうえでエンジンを入れる。
「また会うことになるだろう」
「おそらくはな。その時を楽しみにしている」
「楽しみにか」
「死神の力。どういったものか」 
 彼もまた己のサイドカーに乗りながら言う。
「見てもみたいしな」
「そういうことか」
「ああ。またな」
「会おう」
 こう言葉を交えさせてそのうえで別れた。死神がその場から姿を消した。後に残った牧村もやがてサイドカーでその場を去った。家に帰った彼は普段と変わらない日常に戻った。
 家のリビングで一人でテレビを観る彼に対して。妹の未久が声をかけてきたのだった。
「ところでお兄ちゃん」
「何だ?」
「この前タルト作っていたよね」
「さくらんぼのか」
「そう、あのタルトだけれどね
「あれがどうした?」
「また作らないの?」
 こう兄に対して問うのであった。問いながらその横に座る。白いミニスカートから出ている脚が立っている時よりもさらに露出されていた。
「あのタルト」
「食べたいのか」
「まあね」
 このことを隠さない未久だった。
「かなり美味しそうだったから」
「御前タルトが好きなのか」
「甘いものは何でも好きじゃない」
 今度はこう言うのだった。 
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